工具の通販モノタロウ ねじの基礎講座 ねじ切り盤によるねじ切り

ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第5章 ねじのつくり方

5-5 ねじ切り盤によるねじ切り

旋盤によるねじ切りは、旋盤によってできるいくつかの加工のうちの一つでした。一方でねじ切りに特化した工作機械があり、これをねじ切り盤といいます。 ねじ切り盤の切削工具はチェーザといい、通常は四枚を一組として使用します。旋盤が一本のバイトで加工していたのに対して、四枚のチェーザが同時にねじ切りを行うため効率がよく、粗削りから仕上げまでの工程を連続的に進めることができます。 写真で紹介した太いねじは、土木・建築分野で用いられる耐震補強用アンカーボルトです。

図1 チェーザ

こちらの工場では、M24~M90の呼び径のアンカーボルトを製造されています。 大型のねじ切り盤に取り付けられたチェーザから切りくずがへびのようにニョロニョロと出てくる様子は迫力があります。 このおねじのねじ山はもちろん、同じピッチのねじ山をもつめねじであるナットと組み合わせて用いられます。 そのため、ナットも太い丸棒に下穴をあけた後に大型の旋盤にめねじ切りバイトを取り付けて切削加工を行い製造されます。 この原理による加工は水道管やガス管などに使用するパイプにねじ切りを行うパイプマシンにも用いられています。 太いねじの加工はなかなか見る機会がないかもしれませんが、パイプマシンの方は工事現場などで見かけることがあるかもしれません。ねじは配管の分野でも活躍しているのです

図2 中型ねじ切り盤

図3 大型ねじ切り盤

図5 M52のナット

もう一つ、こちらの工場では変わった形のアンカーボルトを製造しています。 これはねじ山を切削するのではなく、線状の鋼材を円筒状の鋼材にらせん状に巻きつけて、溶接で接合することでねじ山を作るスパイラルアンカーボルトです。 このボルトは相手がめねじではなくコンクリートになるため、このような形状をしています。 これは支承(ししょう)用アンカーボルトともよばれ、橋梁において上部構造と下部構造の間に設置される重要な部材です。 なお、この構造体はコンクリートに埋め込まれたアンカーボルトの引抜試験などにより、強度の保証が行われています。

図6 スパイラルアンカーボルト

これまでは比較的小さなねじを紹介してきましたが、土木・建築分野ではここで紹介したように、大きくて太いねじが用いられています。

(取材協力 西村鐵工所)

執筆:宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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