工具の通販モノタロウ ねじの基礎講座 ボルトの締め付け

ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第3章 ねじの強さ

3-6 ボルトの締め付け

ボルトを選ぶ場合には、六角形や六角穴などの頭部形状だけでなく、小ねじを選ぶ場合と同じく、必要なねじの呼び径やピッチなどの数値にも着目します。また、小ねじは頭部から下の軸全体にねじ山がある全ねじがほとんどでしたが、ボルトの場合には頭部から下の一部にねじ山がある半ねじがあります。 注意する必要があるのは、軸のちょうど半分までねじ山があるのではないという点です。どのくらいねじ山があるのかは、軸径や長さによって異なりますが、一般的に長いねじほどねじ山の割合は小さくなります。 一般的にはねじによる締め付けは2つの部材に対して行われます。六角ボルトを締め付ける代表的な方法として、二つの部材に穴をあけて、そこに六角ボルトを通してナットで締め付ける通しボルト(図1)と、貫通穴があけられない部材にめねじを切り、そこに六角ボルトをねじ込んで締め付ける押さえボルト(図2)があります。 通しボルトではめねじを切る必要がないので加工や組み立てが容易になり、このような場面で半ねじが多く用いられます。

  • 図1 通しボルト
  • 図1 通しボルト
  • 図2 押さえボルト
  • 図2 押さえボルト

植え込みボルトはスタットボルトとも呼ばれる両端にねじが切られたボルトです(図3)。これは二つの部材を重ねた部分に片側をねじ込んでおき、もう片側をナットで締結して使用するものであり、取り付けや取り外しを繰り返すような場所に用いられます。 なお、図3に示すように、二枚のナットを用いて締結することをダブルナットといい、代表的な緩み止めとして知られています。ダブルナットの締結順序は、まず下部にあるナットを規定のトルクで締め付けた後、上部にあるナットを規定のトルクで締め付けます。最後に上部のナットを固定して、下部のナットを逆回転して締め付けることで、緩みを防止できます。 この最後の作業をしないとダブルナットの効果が現れません。なお、ダブルナットに用いるナットは同じ厚みのものを用いることもありますが、締結力を受けるのは上部にあるナットであるため、上部に厚いナット(2種)を用い、下部には薄いナット(3種)が用いられることが多いです。 ただし、薄いナットを用いる場合には、薄口スパナなどが必要となります。ダブルナットは私たちのまわりの構造物の締結などにも多く用いられているため、見かけることもあると思います。また、これはちょっとした工作でも役に立つテクニックです。

図3 植え込みボルト

図3 植え込みボルト

執筆:宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

目次をもっと見る