ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第1章 ねじのキホン

1-4 ねじの生産

ねじが私たちの身の回りに数多く存在していることは、あたりを見回すだけでわかるでしょう。それではそのねじはいったいどのくらい生産されているのでしょうか。 日本ねじ工業協会の資料から、2005年から2013年までの9年間における、日本のねじ生産量[千トン]と生産金額[百万円]をまとめてみました(図表1)。実際にはボルト、ナット、小ねじ、木ねじなど種類別にまとめられていますが、ここではこれらをまとめた数値を紹介します。

図表1 日本のねじ生産量と生産金額

図表1 日本のねじ生産量と生産金額

2013年、日本におけるねじの生産量は287万7490トン、生産金額は8263億5800万円でした。この間の推移をみると、2009年に未曾有の経済危機の影響などもあり、大きく落ち込みましたが、その後は以前の300万トン超えに向けて着実に復調しています。生産金額を見ても同様に2009年に大きく落ち込んだものの、その後、復調していることがわかります。 あらゆる製品の製造を根本で支えるねじは、景気の変動にも大きな影響を受けることが少ないという特徴があります。今後も工業製品の生産が続く限り、ねじ業界が大きく衰退することはないでしょう。 半導体を現代社会に必要不可欠なもの「産業の米」ということがありますが、同じく半導体よりも小さくて必要不可欠なねじのことを「産業の塩」ということもあります。これだけ多く生産されているねじは、日々数多くの工場で製造され、日々数多くの商社を通して売買され、そしてねじを使う方のもとに届いているのです。

また、何らかの形でねじに関係する人々もたくさんおり、ねじ業界は地味でありながら大きく重要な役割を果たしています。自動車業界も家電業界もロボット業界も、ねじを購入しなければ成り立たないのです。

ところで、ここで紹介したねじの生産量と生産金額は、ねじとして売買されているものの統計です。ある機械部品の一部にねじ山があるものは含まれていませんし、もちろん工具を用いてねじ山を自作したものも含まれていません。この意味では、ねじと呼ばれるものは私たちの身の回りにはさらに存在しているのです。

なお、ねじは輸出や輸入も活発であり、財務省の貿易統計によると、2014年の金額ベースで日本のねじ輸出は、米国が23.8%、中国が22.8%、タイが12.5%です。また同じ年の金額ベースのねじ輸入は、中国が36.6%、台湾が26.4%、米国が16.5%となっています。

執筆:宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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