工具の通販モノタロウ ねじの基礎講座 ボルトの締付け法

ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第3章 ねじの強さ

3-8 ボルトの締付け法

必要な大きさのねじを選んで適切な工具で締付けることは、少し慣れれば誰にでもできそうなことに思えますが、ねじを適切に締め付けることができたかどうかは、どのようにして判断するのでしょうか。

ねじの締結を科学的に考えるためには、何かしらを測定して、その数値を解釈する必要があります。3-5で説明したねじを締め付ける回転力であるモーメント(これを締付けトルクとも呼ぶ)は、軸方向への締め付け力としてはたらきます。 締付けトルクはトルクレンチとよばれる測定工具で測定でき、これは締付け力である軸力と線形関係にあることが知られています。この締め付け管理をトルク法といい、作業性に優れた簡便な方法です。 締付けトルクと軸力の関係をグラフ化すると、直線にはなるものの、ばらつきが生じてしまいます(図1)。 これは潤滑の状態などにより摩擦面にはたらく摩擦係数が変化するためで、締付けトルクをいくら精度よく把握しても、ねじの締付け管理を難しくしている一因です。なお、ねじの締付けトルクが軸力としてはたらく割合は10%程度であり、このほかは、座面での摩擦力として50%程度、ねじがある面での摩擦力として40%程度とされています(図2)。

図1 締付けトルクと軸力の関係

図1 締付けトルクと軸力の関係

図2 ねじの締付けトルクにはたらく力

図2 ねじの締付けトルクにはたらく力

回転角法は、ボルトの頭部とナットの相対的な締付け回転角度を指標として、初期締め付け力を管理する方法です。このとき加える力は、締付けによってボルトが降伏することのない弾性域内とされていましたが、締付け軸力が最大に達するまでの範囲の締付けである塑性域内の締付けにも用いられています。 回転角度と軸力の関係をグラフにすると、弾性域では線形関係が成り立ち、降伏点を超えて塑性域に入ると非線形になるとともに傾きが小さくなり、締付け軸力の最大点を超えた後に破断します(図3)。 塑性域締付け法は一度外したボルトの再利用ができないという欠点はあるものの、ボルトの強度を大きいところまで有効に使用できることや締付けトルクのばらつきが小さくなる長所もあります。そのため、再組立ての必要が少ない締結部で用いられるようになり、軽量化というメリットもあるため、自動車のエンジンまわりの締結などにも採用されています。

図1 締付けトルクと軸力の関係

図1 締付けトルクと軸力の関係

ねじ締結体のトラブルの原因の多くが締付け不良やこれに関連する緩みであることが知られています。 このほかには、静的荷重を受けているボルトが振動を繰り返し受けることで弾性範囲ないでも破断する疲労破壊、時間の経過に伴いボルトに水素が侵入し、これによる水素脆性により、一定の荷重内において突然破断する遅れ破壊などによるトラブルなどもあります。

執筆:宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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