ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第4章 ねじの材料

4-3 銅材料

銅は電気や熱を伝えやすいことや錆びにくいこと、また加工しやすいなどの性質をもち、歴史的には鉄より古くから用いられてきました。 引張強さなどの機械的性質は鉄鋼材料にはかないませんが、他の特徴を生かして現在でも幅広く用いられている金属です。 JISでは銅の英語表記であるCopperの頭文字であるCの後に4桁の数字で型番を表記します。

純銅は合金成分をほとんど含まないものであり、無酸素銅(C1020)やタフピッチ銅(C1100)などの名称で、強度よりも電気や熱を伝えやすいこと、錆びにくいことなどを重視した場所に用いられる赤褐色の材料です。また、銅にはさまざまな元素を添加した銅合金があります。 黄銅は銅に亜鉛を20%以上加えた合金であり、金以外で唯一金色の光沢を出すことができるため、装飾品として古くから用いられてきました。 黄銅には銅と亜鉛の割合が6:4である六四黄銅(C2801)、7:3である七三黄銅(C2600)などの種類があり、純銅よりも引張強さや硬さなどの機械的性質が向上します。 英語ではbrassと表記されますが、吹奏楽団のことをブラスバンドというのは多くの楽器が金属の中でも柔らかく加工がしやすい黄銅で製造されているためです。 なお、日本語では黄銅を真鍮(しんちゅう)と呼ぶこともあります。 青銅は銅にすずを加えた合金であり、少量のりんを加えたりん青銅は電気や熱を伝えやすいとともに機械的性質にも優れているため、熱交換器や給水・給湯用、ガス管ガスケットなどに幅広く用いられています。 この他、銅にニッケルを加えた白銅、白銅に亜鉛を加えた洋白などの種類もあります。 英語ではbronzeと表記され、年月を経た青銅器は青緑色に変色しますが、 すずの添加量が少なければ十円玉(銅95%、亜鉛3~4%、すず1~2%の青銅)のような純銅に近い色、ニッケルを加えると百円玉(銅75%、ニッケル25%の白銅)のような銀白色となります。 なお、青銅は古くから大砲の砲筒に用いられていたため、今でも砲金と呼ばれることもあります。

銅材料のねじにはこれら純銅や黄銅、青銅などの種類があり、小ねじや六角ボルトなどの規格品だけでなく、管を接続する継手など、ねじ部をもつ部品などにも用いられています。

  • 図1 無酸素銅の板
  • 図1 無酸素銅の板
  • 図2 黄銅の板
  • 図2 黄銅の板

  • 図3 りん青銅の丸棒
  • 図3 りん青銅の丸棒
  • 図4 黄銅の六角ボルト
  • 図4 黄銅の六角ボルト

  • 図5 黄銅の六角ナット
  • 図5 黄銅の六角ナット
  • 図6 青銅のばね座金
  • 図6 青銅のばね座金

  • 図7 黄銅の管継手
  • 図7 黄銅の管継手
執筆:神奈川工科大学 門田和雄 教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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