ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第5章 ねじのつくり方

5-9 ねじの検査

ねじの作り方は切削加工だけでなく、圧造や転造などの塑性加工によって、大量生産が可能になりました。 規格品のねじに関しては、その寸法などが規定されているため、製造者はその通りに作らなければなりません。形状に関しては新たなねじを考案しない限り、創意工夫の余地はないのです。 大量生産を行うための製造工程の工夫で低コスト化が追及された結果、一般的な小ねじは一本数円で取り引きされるようになりました。 すなわち、ねじの製造技術は成熟していると言えます。 ただし、ねじの製造工程において、不良品が絶対に出ないという保証はありません。そのため、ねじ工場ではまざまな製造工程において、ねじの検査が行われています。

ねじを正しく機能されるために重要となるのは、ねじ山がきちんとした形状で成形できているかどうかです。 ねじのピッチを測定する代表的な測定器であるピッチゲージには、さまざまなピッチ形状をした部品が20枚程度収められています。 ピッチを測定したいねじ部に対して、必要な寸法のゲージを取り出して、隙間がないかなどをチェックします。

ねじ山の寸法は絶対的な一つ寸法でなく、ある範囲ならOKという寸法公差で規定されています。これを検査するために用いられる測定器が限界ねじゲージです。 めねじを検査するねじゲージは、その両端に寸法公差に応じた寸法のねじ山をもちます。通り側と止まり側が一組となっており、通り側を通過し、止まり側で二回転を超えてねじ込まなければ、そのねじは合格になります。 おねじを検査するねじゲージは、円盤状の内側に通り側と止まり側のめねじをもつ二枚が一組となっており、同じく通り側を通過し、止まり側で二回転を超えてねじ込まなければ、そのねじは合格になります。

図1 ピッチゲージ

  • 図2 限界ねじゲージ(めねじ用)
  • 図3 限界ねじゲージ(おねじ用)

より正確にねじ山の寸法を検査するために用いられているのが工具顕微鏡です。これはねじに限らず、工作物や工具の長さや角度、輪郭などを測定するものであり、投影装置を備えたものもあります。 ねじの測定ができるものは、デイスプレイにねじ部を拡大して写し出し、ねじの外径や内径、有効径、ねじのピッチやねじ山の角度などを光学的に測定します。 工場に設置された工具顕微鏡では、ランダムにねじを取り出して検査を行ったり、全数検査を行うことなどがあります。全数検査の場合には、工具顕微鏡に人手でねじを置くなどすると時間がかかるため、 パーツフィーダーと組み合わせて全自動で検査を行い、不良品を発見したときには自動的に取り除くようなものもあります。

執筆:宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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