ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第3章 ねじの強さ

3-5 ねじを回す力

ねじを回す力は物体を回転させる力のモーメントと見なすことができます。ねじを回す力のモーメントがねじの有効径d[mm]にはたらくとすると、この関係は3-4で 導いた式であるF0=Wtan(φ+θ)を用いて、次式で表すことができます。

M= F0L =F・d/2 =Wd/2tan(φ+θ)

長さ200mmのスパナでM10(ピッチ1.5mm)の一般用メートルねじに10kNの力を加えたいとき、スパナを回すのに必要な力を求めてみましょう。なお、このときの摩擦係数は0.1とします。M10の一般用メートルねじの谷径はJISの表よりd=8.376mmを読み取ります。d をねじの有効径とすればリード角θは次式で表されます。

tanθ=l/πd=1.5/3.14×8.376=0.057

ここからθを求めると、θ=3.26また、tanφ=0.1より、φ=5.71、よって、F0 =Wd/2Ltan(φ+θ)に数値を代入することで答えを求められます。

F0=10000×8.376 / 2 ×200tan(5.71+3.26)=33.1N

次に六角ボルトに力F0[N]を加えて長さL[mm]のスパナで締め付けることを考えると、ねじを回す力のモーメントはM= F0L[N・mm]で表されます。 また、この力が呼び径dのねじを回転させるとき、ねじにはたらく力F[N]はd/2・Fで表されます。

長さ300mmのスパナに100Nを加えたとき、呼び径が10mmの六角ボルトにはたらく力Fを求める。スパナに加える力のモーメントと六角ボルトにはたらく力のモーメントは等しいため、次式が成立します。

スパナに加える力のモーメント

M=F0L=100×300=30000 [N・mm]

六角ボルトにはたらく力のモーメント

M=d/2・F=10/2・F=5F[N・mm]5F=30000 より、F=6000[N]

ここでスパナに加えた力F0と六角ボルトに加えられた力Fを比較すると、

F0 =100N、F=6000[N]より、 F/ F0 =6000/100=60

このことから、スパナに加えた力は60倍になってねじに加えられたことがわかります。このことは、工具にそれほど大きな力を加えなくて締め付けたねじでも、素手で緩めることは難しいことからも実感できるでしょう。 ねじが重宝される理由の一つとして、このように工具からの小さな締め付け力をねじ部への大きな締め付け力に変換できることがあげられます。

執筆:神奈川工科大学 門田和雄 教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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