ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第1章 ねじのキホン

1-3 ねじの規格

ねじ、歯車、ばね、軸受などの機械要素は、各部分の寸法などが規格で規定されることで、幅広く互換性をもつものとして広く用いられています。 たとえば、ねじの場合には、ねじの頭部形状にはどのようなものがあるのか、ねじ部分の直径はどのくらいの寸法なのか、ねじ山の角度は何度なのか、ねじ山とねじ山の間隔であるピッチはどのくらいの寸法なのかなどはすべて規格で規定されています。 もし規格がなくて、それぞれがこれらの寸法が適当なねじを作っていたら、おねじとめねじがかみ合わないことが多発して混乱することでしょう。そうならないように、ねじのみならず、工業製品の多くは規格があるのです。ただし、その規格がどのように制定されたのかについては、それぞれの工業製品ごとにさまざまな変遷を経て規定されています。

日本の工業製品の規格は1946年の6月1日に工業標準化法が公布されて、日本工業規格(JIS)が制定されたことにはじまりますが、戦後はアメリカの影響を受けていたこともあり、JISにはメートル、ウイット、ユニファイの3規格が混在していました。その後、いくつかの変遷を経て、現在のJISにはメートルとユニファイの2つの規格が存在します。 ここでユニファイとはメートルではなくインチで寸法を表したものです。

世界的な工業規格には国際標準化機構(ISO)があり、JISの内容もこれに一致される方向に向かっているものの、これまでに国内で多く用いられてきた規格がISOと一致しない場合などにはすぐに規格を共通化することが難しいなどもあります。 たとえば、ねじの直径となる呼び径(おねじの場合は外径)が1.7mm、2.6mmのねじは日本国内では古くから使用されてきた規格ですが、ISOにはこれらの寸法は存在せず、1.6mm、2.5mmが存在しています。また六角ボルトの対辺である二面幅において、JISとISOの寸法が微妙に異なることもたびたび取り上げられます。 わずかな寸法の違いなのですが、国際標準でない工業部品を海外に輸入しようとすると、思わぬ貿易摩擦を引き起こすことにもなります。JISでは、附属書という形で規格を残して、5年間延長するなどの措置をとっていますが、JISとISOが完全に一致するまでは、このような問題が起きてしまいます。

なお、JISが制定された6月1日は「ねじの日」として、業界におけるねじ製品の社会的責任と義務を深めるとともに、一般社会に対して広くねじをPRする取り組みが行われています。

執筆:宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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