ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第4章 ねじの材料

4-2 合金鋼材料

炭素鋼の機械的性質をさらに向上させるために、クロム(Cr)やモリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)などの元素を添加したものを合金鋼といいます。 ここで機械的性質とは、引張強さや圧縮強さなどの強度、硬さ、粘り強さなど、機械材料として用いるときに必要となる性質のことです。 一般的に硬いものは脆いという性質があるため、加熱や冷却によって、硬くて粘り強い性質をもたせるための熱処理が施されます。この粘り強さのことを靭性ともよびます。

大きな強度と靭性を備えた代表的な合金がクロム(Cr)を添加したクロム鋼やこれにモリブデン(Mo)を加えたクロムモリブデン鋼です。 JISではクロム鋼はSCr、クロムモリブデン鋼 SCMの英字に型番を表す三桁の数値を加えてSCM430などと表記されます。 なお、クロムモリブデン鋼は一般にクロモリと略して呼ばれることもあります。たとえば六角穴付きボルトを商品検索でSCMという表記があった場合、これは強度があり粘り強いクロムモリブデン鋼だということがわかります。

金属の種類を意味するステンレスという言葉は良く見聞きすると思いますが、これも合金鋼の一種であり、正しくはステンレス鋼といいます。 ステンレス鋼は鉄(Fe)を主成分(50%以上)とし、クロム(Cr)を10.5%以上含むものであり、さらにニッケル(Ni)を含んだものもあります。 硬くて錆びにくい特徴をもつことから耐食鋼ともよばれます。 どうして錆びにくいのかというと、鉄が大気中の酸素と結合して錆びる前にクロムが酸素と結合することで、ステンレス鋼の表面に薄い酸化被膜ができるのです。 この被膜は傷がついて剥がれたときでも、再度クロムが反応して新しい被膜を再生する自己修復機能をもちます。JISではステンレス鋼はStainless Used Steelの頭文字をとったSUSの英字に型番を表す三桁の数値を加えて表記されます。

13%程度のクロムを含んだマルテンサイト系ステンレス鋼にはSUS410などの型番があり、耐食性よりも硬さが求められる場所に用いられます。 18%程度のクロムを含んだフェライト系ステンレス鋼にはSUS430などの型番があり、強度よりも耐食性が求められる場所に用いられます。 c18%程度のクロムに8%程度のニッケルを含んだオーステナイト系ステンレス鋼にはSUS304などの型番があり、強度及び耐食性の面でもっとも優れたステンレス鋼として、 自動車や鉄道車両、建築材料などに幅広く用いられています。ステンレス鋼の食器に18-8という刻印があるものはこれです。

多くのボルトにもステンレス鋼が用いられていますがSUS430では冷間加工の工程で割れが生じることがあるため、この成分に銅(Cu)を3%程度加えたSUSXM7という型番の材料が用いられています。

  • 図1 クロムモリブデン鋼のボルト
  • 図1 クロムモリブデン鋼のボルト
  • 図2 ステンレスの小ねじ
  • 図2 ステンレスの小ねじ

  • 図3 SUS304の六角穴付きボルト
  • 図3 SUS304の六角穴付きボルト
執筆:神奈川工科大学 門田和雄 教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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