工具の通販モノタロウ ねじの基礎講座 ねじの緩みと緩み止め

ねじの基礎講座

私たちの身近にあって欠かせない存在、「ねじ」。
ねじにはどのようなはたらきや歴史があり、どんな種類があるのか。
本連載では、ねじに関するさまざまな事項をご紹介していきます。
第3章 ねじの強さ

3-7 ねじの緩みと緩み止め

どんなに強度をもつボルトやナットがあっても、それらを適切に締め付けることができなければ適切な締結力は得られません。 また、後からねじが緩むことにもつながります。ねじの緩みは人命に関わる大事故につながることもあるため、締結力の管理はとても重要です。 ねじの緩みにはさまざまな要因があり、大事故の多くはそれらが複合的に重なり合って発生しますが、ここではねじが緩む要因を分類して説明します。

ねじの緩みは「ねじの軸部にはたらく締付け力である軸力が締付け時よりも減少すること」と定義されます。ここで、ねじの緩みにはおねじとめねじが緩み方向に対して相対的に回転する回転緩みと回転しない非回転緩みがあります(図1)。

図1 ねじの緩み

図1 ねじの緩み

回転緩みは、ねじ締結部に外力として振動や衝撃などがはたらき、ねじが回転しながら緩むものです(図2)。 外力がかかる向きには、軸回り、軸直角、軸方向などがあり、部分的に圧力の変化が生じることで緩みが発生します。 非回転緩みは、ねじ締結体の弾性変形により、緩み方向に回転しなくても緩むものです(図3)。 その種類には、ねじ締結時の軸力による微小な弾性変形が外力による初期緩みや締付け時の面圧が大きすぎて締結部の表面が塑性変形をする陥没ゆるみ、さらにはねじと締結部材の材質が異なる場合に熱膨張率の違いによって変形する緩みなどがあります。

図2 回転緩み

図2 回転緩み

図3 非回転緩み

図3 非回転緩み

回転緩みを防止するためには、ボルトとナットの接合面の滑りを減らすことを考えます。ねじの選定方法で解決できる方法には、より太いねじを使用することや使用するねじの本数を増やすことなどがあります。また、各種の座金を用いることで、接合面の摩擦を大きくすることも効果的です。 割りピンは半丸線の2本の足をもつ部品であり、ボルトの先にあけた穴に通して先を左右に割ることで、ナットの緩み止めだけでなく、脱落防止のはたらきをもたせたものです(図4)。 複数のねじにワイヤを巻き付けるロックワイヤは専用の針金をボルトやナットにあけた穴に通して結ぶものであり、脱落防止のはたらきもあるため、航空機関係などで多く用いられています(図5)。

図4 割りピン

図4 割りピン

図5 ロックワイヤ

図5 ロックワイヤ

ナットのめねじ部分にナイロンの座金が組み込まれているナイロンナットは、この部分で大きな摩擦力を生み出し、振動に対する強い緩み防止のはたらきがあります(図6)。 また、ハードロックナットは、一本のボルトに対して凹凸形状の二個のナットを用いたものです(図7)。くさびのはたらきにより強い締結力をもつこのねじは、緩まないねじとして注目されており、 鉄道や明石海峡大橋、東京スカイツリーなどに広く採用されています。

  • 図6 ナイロンナット
  • 図6 ナイロンナット
  • 図7 ハードロックナット
  • 図7 ハードロックナット
執筆:宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授

『ねじの基礎講座』の目次

第1章 ねじのキホン

第2章 ねじの種類

第3章 ねじの強さ

第4章 ねじの材料

第5章 ねじの作り方

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