照明のことが分かる講座

照明とは人々の生活に役立つ光の仕事のことを言います。 照明の主光源がLEDに変わりつつあるなか、照明を知ることで生活はより豊かに変わります。 そこで本連載では照明の基礎知識から光源や照明器具の種類、照明方式、照明がもたらす心理・ 生理効果を分かりやすくご紹介していきます。
第1章 照明の基礎知識

1-3 光束と照度の関係

光束とは

一般照明用の白熱電球(普通電球とも呼ばれる)は40Wより60Wの方が明るいです。そのためW(ワット)数の高いほど「明るいランプ」と思われがちですが、例えば蛍光ランプの40Wは電球60WよりW数が低くとも数倍明るいです。 この例でもわかるようにW数は明るさを表す単位ではないのです。

ランプや照明器具自体の明るさはそれらの持っている単位時間当たりの光量で決まります。 これを光束といい、単位はlm(ルーメン:ラテン語で光の意味をもつlumenの略)が用いられます。光束を分かりやすく説明すると、例えば暗いところで裸電球の輝きを薄眼で見るとランプの中心から放射状に細い線が何本も出ているように見えます。 イメージとして光の線がたくさんあって、束の密度が高いほど光束量が多く、明るい光源と言うことになります。因みにろうそくやオイルランプの光束は、芯の太さなどで変わりますが一般的に10(lm)前後が多いです。

写真1 オイルランプによる食卓の照明

写真1 オイルランプによる食卓の照明

また、普通電球60Wは約850lmあります。今日のLED電球で同じような光束量のものを調べてみると、大体7~8Wくらいですむことが分かります。

光束から照度を算出

ランプの光束が分かると照度を求めることができます。その関係は以下のような簡単な計算式で表せます。

[光束(lm)÷面積(m2)=照度(lx)] 計算式(1)

仮に850lm(普通電球60W相当)の光束のすべてが1m2の面に均等に入射したとすれば、計算式(1)から850(lm)÷1(m2)=850(lx)になります。

例えば850lmの光束が四方八方に放射する裸電球を10m2の部屋の天井中央から吊り下げると床面の平均的な照度は幾らになるでしょうか。

この場合、裸電球の光束が全て直接床面に入射するわけではありません。光源の高さにもよりますが、光束の多くは天井や壁を照らします。仮に床面へ直接当たる光束が850lmの30%とすれば、計算式(1)から直射分の照度が以下のようになります。(図1)

850×0.3(lm)÷10(m2)=25.5(lx)

また残りの70%の光束である約600lmは天井や壁を照らします。壁や天井の反射率が高ければ、多くの光を反射しますが、それでも光の反射と吸収を繰り返しながら、ある光束量だけが床面を照らすことになります。もしそれが600lmの10%であれば、同様に計算式(1)より反射光の照度が以下のようになります。

600×0.1(lm)÷10(m2)=6(lx)

以上から直射光分と反射光分を足して31.5(lx)が床面の照度となります。図1の場合、ランプの直下付近の床面が一番明るく、壁際に近づくほど徐々に暗くなりますが、あえて平均化すると31.5(lx)ということです。

ここで床面の照度をもっと上げるにはどうしたらよいでしょうか?一番良いのはランプに反射笠をつけ、床面に当たる直射光の比率を高くすることです。しかしこの場合、天井や壁面が暗くなるといった問題が生じます。

このように照度計算の原理は簡単ですが、実際に精度の高い計算を行うには、照明器具から放射される光束、器具の配光(光の形)、取り付け位置、室内の反射率、部屋の規模などの要件を取り入れて、床面または作業面にあたる直射光と反射光分を算出しなければなりません。 これは結構面倒な作業になりますが、今日では照度計算のフリーソフトもあって、パソコンに条件を入力すれば比較的簡単に照度を求めることが可能になっています。

図1 裸電球の光束配分例

図1 裸電球の光束配分例

執筆: 中島龍興照明デザイン研究所 中島龍興

『照明のことが分かる講座』の目次

第1章 照明の基礎知識

第2章 光源の種類と特徴

第3章 LED照明器具の選び方

第4章 照明方式

第5章 照明の視覚心理・生理

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