照明のことが分かる講座

照明とは人々の生活に役立つ光の仕事のことを言います。 照明の主光源がLEDに変わりつつあるなか、照明を知ることで生活はより豊かに変わります。 そこで本連載では照明の基礎知識から光源や照明器具の種類、照明方式、照明がもたらす心理・ 生理効果を分かりやすくご紹介していきます。
第1章 照明の基礎知識

1-5 輝度とは

輝度を知る前に光度を知る

街の明かりが届かない自然豊かな場所で、懐中電灯を夜空に向けて照らすと、まるでレーザービームのような一筋の光芒を見ることができます。 このように懐中電灯は反射鏡の力で一方向にのみ光束がたくさん集まって強い明るさになっています。一方で裸電球は四方八方に光束が分散されているため、一方向の明るさは弱く、したがってレーザービームのような光芒を見ることはできません。

このように各方向における光の強さを光度といい、cd(カンデラ)の単位で数量化されています。カンデラは「獣脂ろうそく」のラテン語に由来します。 ろうそく一本の最大光度が1cdと言われていますが、実際「獣脂ろうそく」は燃焼効率が悪く、あまり明るくなかったようで、後に発見されたマッコウクジラの良質な油で作られたキャンドルの光度1cdに近かったようです。

1cdとは1m離れて1ルクスの明るさが得られる光の強さで、その関係式は以下のようになります。

計算式(1) [光度(cd)÷距離(m)の二乗=照度(lx)]

例えば直下方向に1000cdの光度を持つ光源は2m直下での垂直面の照度はいくらでしょうか。

それは計算式(1)より1000(cd)÷2(m)×2=250lxになります。

このように各方向へ放射される光度は、特にランプや照明器具の光学的性能を知るうえで重要なデータになります。

見た目の明るさは照度より輝度

光源や光源を透過した面などの明るさは一般に輝度で表されます。単位はcd/㎡(カンデラ毎平方メートル)を用い、単位面積当たりの光の強さを意味します。 輝度は輝度計で測定することができますが、照度計と違って高価なため個人で持っている人は少ないと思います。ただ必要に迫られた場合はレンタルすることも可能です。

一般的に輝度は高いほど明るく見えます。しかし度を超えると目にまぶしさを与えます。図1は主な光源や照明器具の輝度を表したものです。 例えば日中の太陽光は最大で16億cd/m2超えますが、この輝きは数秒たりとも直視できないほどで、目を傷める原因になるほど強烈なまぶしさです。 一方、満月の輝度は明るく輝いている状態で2500 cd/m2前後です。日本ではお月見の習慣があるように、この輝きはある程度の時間なら直視してもまぶしさを感じません。 

日本の住宅で和紙を使用した照明器具をしばしば見かけることがあります。このような器具は内蔵されるランプの種類やW数によっても輝度は異なりますが、およそ500~1000 cd/m2あります。 この輝きは夜、目の前で点灯した瞬間ややまぶしく感じますが、部屋が明るくなると目が慣れてほとんどまぶしさ感はありません。(写真1 和紙を使用した照明器具)私たちが日常的に使っているPCやスマートフォンの画面も発光しています。 画面は長時間見続けることを考慮して、目に過度な負担にならないような輝度になっています。例えば環境/人間工学安全性の国際規格である「TCO‘03」では、PCのような画面の最大輝度は150 cd/m2以下に設定することが奨められています。 それでも明るい事務室で見る場合、明るい画面のほうが見やすいということで、最近では最大で300 cd/m2を超える画面もあります。 逆に300 cd/m2の画面を暗い部屋で長時間見続けるとまぶしく感じることもあるので、器機側で明るさを落として使用することが奨められます。

私たちは明るさといえばすぐ照度を思い浮かべます。しかし人の目に与える明るさは照度より輝度で評価したほうが適切の場合もあるので、輝度は照明を考えるうえで重要な単位になります。

写真1 和紙を使用したグローブ器具

写真1 和紙を使用したグローブ器具

図1 おもな光源と発光面の輝度

図1 おもな光源と発光面の輝度(cd/m2

執筆: 中島龍興照明デザイン研究所 中島龍興

『照明のことが分かる講座』の目次

第1章 照明の基礎知識

第2章 光源の種類と特徴

第3章 LED照明器具の選び方

第4章 照明方式

第5章 照明の視覚心理・生理

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