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照明のことが分かる講座

照明とは人々の生活に役立つ光の仕事のことを言います。 照明の主光源がLEDに変わりつつあるなか、照明を知ることで生活はより豊かに変わります。 そこで本連載では照明の基礎知識から光源や照明器具の種類、照明方式、照明がもたらす心理・ 生理効果を分かりやすくご紹介していきます。
第5章 照明のことが分かる講座

5-5 色温度と照度の心理

クルイトフ曲線とは

心理は効果の度合によって体調に影響することから、人の状態や行動に関わるために建築やインテリアなどの設計業務で活用されています。照明においても心理を考慮した設計が行われており効果を発揮しています。

なかでも光源の色温度は温熱効果で知られています。例えばJIS(日本工業規格)でも5,300K以上の色温度のもとでは涼しい感じ、3,300K以下では暖かい感じに、そして5,300K~3,300Kはそれらの中間の感じが得られるとされています。

また色温度の高い光は明るく快活なイメージがあり、実際に自律神経の交感神経に働きかけ心身を興奮させることに寄与します。一方で色温度の低い光には落ち着いた雰囲気を感じ、照明の演出次第で心身をリラックス状態に導きます。

しかし、いずれの効果も光源の色温度だけではなく、照度との関連に大きく影響することが実験で明らかにされています。その実験を行ったのがオランダの物理学者Arie Andries Kruithof(以下、クルイトフ)で、1941年にKruithof Curve(以下、クルイトフ曲線)のデータ(図1)を発表しています。

図1 クルイトフ曲線

図1 クルイトフ曲線



クルイトフの実験では光源として自然光と白熱灯及び蛍光灯を使用しています。75年以上も前のことなので、もちろんLEDランプはありません。それに天井からの全般照明だけで得られる様々な平均的照度に対してのアンケート評価であることが伝えられています。したがって局部照明とか装飾照明などが加わると、この評価は大きく変わることが推測されます。

図1の見方は、例えば3000Kの光源による照明は平均照度が120~550lx(およそ100~500lx)あれば快適で、100lx以下で照度が低くなるほど空間に陰鬱感が高まります。逆に500lx以上に照度が高まると暑苦しい雰囲気になりやすいことが導き出されます。

なお、クルイトフ曲線はデータが古く、また西洋人が被験者のため日本人の感覚とは違うことが指摘されています。そのため日本でも日本人を被験者にして似たような実験が行われていますが、何故か長い間多くの照明設計者はクルイトフ曲線を一つの目安として使用してきました。

ところでコンビニは白い光で明るいことを誰もが体験されていることでしょう。コンビニは短時間で買い物をするため、日中のように快活な雰囲気が店に求められます。そのため多くの店が5000Kほどの白い光を採用し、1000lx前後の全般照度になっています。この色温度と照度の関係はクルイトフ曲線に当てはまります。

一方、高級レストランのような長時間在室するような空間は落ち着いた雰囲気が必要です。店内は少し暗めの照明が良く、陰鬱な雰囲気にならないよう暖かい光にすることが求められます。これもクルイトフ曲線に当てはまることです。

陰気な雰囲気は色を暗く見せる?

美術館・博物館の展示で自然光の下で製作された作品は自然光の光色に近い5000K前後の高演色光源による照明がしばしば採用されています。蛍光灯や白熱灯を使用していた時代は光源から放射される紫外線や赤外線で絵画や博物の変退色を防ぐため、褪色防止や赤外線カット形の光源が使われ、さら展示物への低照度照明が一般的になっていました。

特に浮世絵やパステルで描かれた絵はその影響が大きいことから50lx前後の明るさで照明されていました。このような空間は、仮に5000Kの光源による照明ではクルイトフ曲線によると陰気な雰囲気に包まれることになり、いくら高演色の光と言え、色は冷たく暗い感じに見えてしまいます。

以前、パリの美術館でドガやルノアールの印象絵画を見たとき、絵画にパステルを使用していたことから褪色を防ぐため、およそ10lxの低照度で照明されていました。しかし白熱灯照明だったため陰鬱感はあまりなく、しかも時間をかけてゆっくり見ることができたため、目が暗さに順応して色もまあまあ良く見えていました。

このようにクルイトフ曲線は照明方式だけではなく、内装色の影響や目の順応状態によっても印象が変わることもあるため、データの扱いには注意が必要です。

執筆: 執筆: 中島龍興照明デザイン研究所 中島龍興

『照明のことが分かる講座』の目次

第1章 照明の基礎知識

第2章 光源の種類と特徴

第3章 LED照明器具の選び方

第4章 照明方式

第5章 照明の視覚心理・生理

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