照明のことが分かる講座

照明とは人々の生活に役立つ光の仕事のことを言います。 照明の主光源がLEDに変わりつつあるなか、照明を知ることで生活はより豊かに変わります。 そこで本連載では照明の基礎知識から光源や照明器具の種類、照明方式、照明がもたらす心理・ 生理効果を分かりやすくご紹介していきます。
第1章 照明の基礎知識

1-1 光とは

可視光線と分光スペクトル

光には私たちの目に見える光と見えない光があります。

太古の昔から人が見てきた光は太陽や星の光、そして火の光です。例えば太陽光は、一日の時間で白色からオレンジ色に変化し、また火の光は熱の強さによって深い赤色から青白色に見えます。しかしこれらの光は目に見える色だけではなく、いろいろな色が内在されているのです。

太陽が夕立後に見せる虹こそ、太陽光が多彩な色に満ち溢れている証です。(写真1)これは大気中の水滴群がプリズムの役割をし、太陽光が屈折されて生じる現象です。日中の太陽光は大別すると紫から藍、青、緑、黄、橙、赤色光までの色を比較的バランスよく持っています。 これらの色光が混ざることによって、私たちの目には白色に見えるのです。火の光も同様です。例えば赤く輝く炎でも青や緑・黄色も含まれています。しかし、圧倒的に赤系の光を多く持っているため、目には赤っぽい色に見えるのです。

このように人の目に見える紫から赤色の光の範囲を可視光線と言い、これらの色を持った光を白色光と言います。

可視光線は電波と同じように電磁波の一種です。それは波を持っており波の長さによって色が決まります。 可視光線の中で波長の最も短い360nm(ナノメートル:1nm=0.000001mm)付近に深い紫色があり、最も波長の長い760nm付近には深い赤色が存在します。実際、このあたりの波長は人によって見える範囲が異なりますが、ほとんどが暗く見えないに等しい、と言えます。

日常生活に使われる白熱電球や蛍光ランプ、LEDランプの光も白色光です。自然界における虹の現象のように、これらの光をプリズムや分光器を通すと分光され、虹色が見られます。それは光源の種類によって波長ごとの強度が異なって現れます。 これを光のスペクトル、または分光分布と言います。写真2は日中の太陽光(青空光を含む)のスペクトル分布です。

写真1 虹

写真1 虹

写真2 太陽光(青空光を含む)スペクトル分布※1

写真2 太陽光(青空光を含む)スペクトル分布※1

可視光線以外の光

およそ360nmより短い波長は人の目には全く見えません。(昆虫の目では見えます)それは紫色から外れている光線なので紫外線と言います。紫外線は波長の長さでUVAからUVCに分類され、その性質が異なります。UVAは肌の老化や家具、書籍などの日焼けや変色・褪色に関係するので、あまりありがたくないエネルギーのように思われています。 しかし、ブラックライトの例のように有益な使われ方もあります。この光を蛍光物質に当てると、物質が怪しげに発光します。この性質から目に見えにくい傷の発見や紙幣の偽造防止などに役立たせています。また照明ではアミューズメントの空間で時折活用されています。

一方、780nm以上は赤色から外れている波長のため赤外線と言います。赤外線も紫外線同様、近赤外から中,遠赤外まであり、それぞれ性質が異なります。なかでも近赤外線は人体にほとんど影響はありませんが、赤外線カメラのように、この波長を利用することで暗闇でもモノを見ることができます。

ところで照明で扱う光は目に見える可視光線だけではなく、上述のように目に見えない紫外線(主にUVA)と赤外線も含まれています。特に美術館や博物館の照明は光源から放射される紫外線や赤外線による美術品のダメージを抑えるため、設計上で考慮しなければならないのです。(図1照明で扱う光の範囲)

光というエネルギーは私たちにいろいろなパワーを与えてくれます。わかりやすく言えば光はその特性を理解して上手く使いこなすことができれば、生活がより豊かな方向に変わるのです。

図1 照明で扱う光の範囲とその効果

図1 照明で扱う光の範囲とその効果

〔引用・参考文献〕※1 中島龍興(2007/3/1)『照明のことがわかる本』日本実業出版社、P.15
執筆: 中島龍興照明デザイン研究所 中島龍興

『照明のことが分かる講座』の目次

第1章 照明の基礎知識

第2章 光源の種類と特徴

第3章 LED照明器具の選び方

第4章 照明方式

第5章 照明の視覚心理・生理

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