照明のことが分かる講座
1-8 演色性とは
お店で見た肉や魚の赤身がおいしそうに見えたのに家で見たら少し違って見えた、という経験をされた方は少なくないと思います。これは肉や魚と言った食品だけではなく、衣服や家具などに関しても同様なことが言えます。何故このようなことが起こるのでしょう。 それは家の照明とお店の照明の違いで、おもに使用されている光源スペクトルの違いに起因します。
図1はLED電球のスペクトル分布を表したものですが、A,Bの2種類の光源を見てもらっていますが、AとBでは分光スペクトルがやや異なっています。この違いが照らされたものの色の見え方を変えてしまうのです。
図2は色が見える原理を表しています。少々乱暴な説明になりますが、赤色のものは照らしている光源スペクトルのうち赤色を反射して、他の色を吸収、透過してしまう性質があります。そのため反射した赤色が目に入って、人はそれを赤と認識するわけです。 一方、白色のものは全ての色を反射する性質から、青から赤まで連続した色を持つ光源で照らすと白に見えるのです。
もし赤色のものにカラーライトの青色光を当てたら、青色光はすべて吸収、透過され、目に入る光がなくなり、赤色のものは黒く見えます。しかし一見青色光に見えても、少しでも赤色や他の色を含んだスペクトル光で照らせば、赤色のものは黒ずんだ赤色に見えるはずです。 もちろん赤色と一言でいっても、例えば肉の赤身と魚の赤身では赤色系の反射とその他の色の吸収、透過が微妙に異なるため、スペクトル分布の同じ光源で照らしても違う赤味を見ることになります。
以上のように光源によるものの色の見え方を演色性と言います。演色性が注目され始めたのは蛍光灯の出現からと言われています。50~60年前の、比較的初期の蛍光ランプは白熱電球に比べ明るいのですが色の見え方が良くなかったのを覚えています。 特に肌色が問題で血色の悪い感じに見えました。しかし年々改善が進み、今では顔色はよく見え、美術館の絵画照明にも使われる高演色ランプも少なくありません。
演色性は平均演色評価数と特殊演色評価数で評価されます。
初めに平均演色評価数ですが、目安としてRa(アールエー)が用いられます。Raは(Color) rendering averageの頭文字をとったもので、最高が100です。100に近いほど色の見え方の忠実性に優れていることを意味します。忠実性とは自然に見えているということで、必ずしも好ましい色に見えているというわけではありません。
人間の目で知覚できる色の数は人によって異なりますが、数万を超える相当数の色を見分ける能力があるようです。 したがってそれらの色の全てを評価するのは困難なため、国際照明委員会(CIE)では平均演色評価数の場合、中間的な彩度を持ち明度の同じ赤から紫までの8色を試験色(色票)と決め、対象光源が自然光に近似した基準光源で見たときと比較して、色の見え方にずれが生じるかによって評価されます。
そこで対象光源と基準光源で8色の試験色を見比べたとき、全くずれがなく同じ色に見えたら対象光源はRa100になります。ずれが大きくなるにしたがってRa値は低下していきます。因みに図1のAはRa85、BはRa79です。
JIS照明総則によると、例えば住宅はRa80以上の光源で照明されることが推奨されていますが、現在市販されているLED電球はそのことを考慮してRa80以上が多くなっています。 一方、特殊演色評価数(Ri)は15色の試験色のうち平均演色評価数の8色を除いた7色に対して評価されるものです。試験色に彩度の高い赤(R9)、同様に黄(R10)、緑(R11)、青(R12)と、その他に西洋人の女性の肌色(R13)、木の葉の色(R14)、日本人の女性の肌色(R15)が使われ、Ra同様それぞれに対して最高値は100になります。(図3 演色評価数用試験色)
なお、演色評価数が同じであっても光源の色温度が異なると、基準光源が変わるため違った色に見えてしまうので注意が必要です。
- 図1 LED電球のスペクトル例 A
- 図1 LED電球のスペクトル例 B
図2 物の色が見える原理
図3 演色評価数用試験色
『照明のことが分かる講座』の目次
第1章 照明の基礎知識
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1-1光とは光には私たちの目に見える光と見えない光があります。太古の昔から人が見てきた光は太陽や星の光、そして火の光です。
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1-2照度のお話し照度とは光で照らされた場の明るさのことを言います。
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1-3光束と照度の関係一般照明用の白熱電球(普通電球とも呼ばれる)は40Wより60Wの方が明るいです。そのためW(ワット)数の高いほど「明るいランプ」と思われがちですが、例えば蛍光ランプの40Wは電球60WよりW数が低くとも数倍明るいです。 この例でもわかるようにW数は明るさを表す単位ではないのです。
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1-4照度の黄金比明るさ感は照度の高い低いだけではなく、照度対比によるところも大きいです。例えば写真1と写真2を見て下さい。
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1-5輝度とは街の明かりが届かない自然豊かな場所で、懐中電灯を夜空に向けて照らすと、まるでレーザービームのような一筋の光芒を見ることができます。
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1-6白色光源の色温度照明ではよく「白色光」と言う名称が使われます。太陽の光や青空光は白色光です。またキャンドルや白熱電球・蛍光ランプなどの人工光源も白色光を放ちます。
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1-7色温度を測定してみるとCIExy色度図(以下xy色度図)はCIE(国際照明委員会)によって承認された光色の表し方です。照明関係者だけでなく色彩の勉強をされている方にもおなじみの図表です。
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1-8演色性とはお店で見た肉や魚の赤身がおいしそうに見えたのに家で見たら少し違って見えた、という経験をされた方は少なくないと思います。
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1-9配光と配光分類一般照明用白熱電球(以下、普通電球)を点灯するとフィラメントを中心に四方八方へ360度にわたって光の放射していく様子がイメージできます。
第2章 光源の種類と特徴
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2-1白熱電球、その進化白熱電球は1878年アメリカのトーマス・エジソンによって発明された、と言われています。
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2-2豊かな種類を誇る白熱電球白熱電球を用途別に分類すると前回紹介したように一般照明用、投光照明用、装飾照明用に大別されます。
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2-3蛍光ランプ、その進化とプロセスいままで家庭やオフィス照明などで欠かせない 蛍光ランプ(熱陰極蛍光ランプ)は1935年アメリカの大手電気メーカであるGE(ゼネラルエレクトロニクス社)のインマンによって発明されました。
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2-4蛍光ランプの種類蛍光ランプを形状別に分類すると、おもに直管形、環形(丸形)、小型変形があります。
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2-5HIDランプの種類と性能HIDランプは高輝度放電ランプのことで「High Intensity Discharge Lamp」の頭文字をとった略称です。
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2-6LEDランプ、その進化プロセス今、照明=LED(発光ダイオード)と言われるほど、LEDがあらゆる空間の照明に注目されています。
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2-7LEDに関する用語の解説LEDに関する専門用語は多々ありますが、特にLED照明を理解するために必要な用語を整理して次に紹介いたします。
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2-8LED電球の種類LED電球(電球形LEDとも言われる)は白熱電球の代替になるLED光源で、口金の形状がE形(エジソンベース),B,GX53形のいずれかを備えたものを言います。
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2-9LED電球の選び方今日、一般照明用LED電球は多くの白熱電球用器具(以下、白熱灯)に使われています。そのなかで最近注目されているのが密閉対応型です。
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2-10直管形蛍光ランプ代替のLEDランプ直管LEDランプ(LED蛍光灯、直管形LEDなどともいわれる)とは直管形蛍光ランプの代替用途になるものです。
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2-11特殊照明用LEDランプ一般照明用のLEDランプ以外に特殊な用途を持ったLEDランプがあります。ここではその幾つかを紹介いたします。
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2-12有機ELと無機ELLED照明が普及しつつあるなかで、いまELが注目されています。ELはLEDの技術では難しいとされる、薄くてぎらつきのない面発光を特徴とする光源です。
第3章 LED照明器具の選び方
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3-1照明器具とその種類照明器具とは様々な素材を用いて光源とその点灯に必要な部品を安全に固定し保護したもので、電気的部分と光学的部分、および機械的部分からなります。
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3-2照明器具に使われる素材照明器具には様々な素材が使われていますが、その中でガラス、プラスチック、金属が3大素材と言われます。
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3-3日本の住宅照明に欠かせないシーリングライト1970年代、蛍光灯の普及によって日本の住宅照明には欠かせなくなった照明器具に大型のシーリングライト(以下、シーリングライト)があります。
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3-4ダウンライト器具の種類ダウンライトは天井に穴をあけて、そこに埋め込まれる器具です。したがって器具そのものの存在をあまり感じさせないで空間の明るさを得ることができます。
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3-5ダウンライトの選び方ダウンライトにはおもに全般照明用と局部照明用、壁面照明用の3種類があります。
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3-6ペンダントライト器具とは消費税が導入される前、個別消費税の一種で物品税がありました。これは主に贅沢品に課せられる税で、照明器具では一基に5灯以上のランプをもつ天井吊り下げ器具のシャンデリアが対象になっていました。
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3-7スポットライト器具の種類と選び方スポットライトを浴びるという言葉があります。これは大勢の人の視線を集める、注目されるという意味になります。
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3-84つの配光別スタンド器具スタンド器具(以下、スタンド)とは床や卓上に置いて使う器具のことで、前者をフロアスタンド(フロアランプと言う)、後者が卓上スタンド(テーブルランプとかデスクランプとも言う)になります。いずれも配線工事が不要で、近くにコンセントがあればどこにでも設置が可能なため使い勝手の良い照明器具です。
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3-9ブラケットと呼ばれる壁付け器具壁に直付けされる器具を一般にブラケットと言います。別にウォールライトとかウォールスコンスなどと呼ばれることもあります。
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3-10屋外用器具の種類屋外照明は道路、街路、広場などを安全な明るさにする目的で普及してきました。しかし今日ではそれに加えて夜の景観や雰囲気を高める照明が注目されています。
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3-11景観照明(ライトアップ)用器具夜、歴史的な建造物や土木的価値のある橋梁などが暗闇から明るく浮かび上がる様はとてもドラマチックで新たな空間の魅力を引き出す照明として、近年クローズアップされています。このような照明は一般にライトアップと呼ばれ、夜の風景に彩りを添える効果として期待されています。
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3-12間接照明とライン形LEDモジュール器具建築化照明とは建築の躯体に照明器具を内蔵して空間の明るさを得る手法です。様々な手法がありますがダウンライト照明が最も代表的な手法です。
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3-13調光・調色の制御方法照明の明るさを変えることはものの見え方と空間の雰囲気を変えることにつながり、人々の行動心理に与える影響は大きいです。
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3-14エネルギー消費効率の高いLEDランプLED照明が省エネになり電気代の節約になることは、今では周知のことと思います。
第4章 照明方式
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4-1全般照明と局部照明全般照明と局部照明は照明方式の一部で、どちらの方式をとるかで空間の雰囲気は大きく変わります。
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4-2タスク・アンビエント照明とはタスク・アンビエント照明は全般照明や局部照明と同じ照明方式の一部です。
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4-3直接照明と間接照明直接照明は天井に設置されたダウンライトやスポットライト器具などによって作業面や見せたい対象(視対象)を直接照らすため、照明効率が高く省エネ照明に寄与します。しかし一方で影が生じやすく、照射角度や配光によって生じる陰翳は人の顔や立体物の見え方を変えて見せます。
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4-4建築化照明と主な手法建築化照明については様々な手法があります。以前に「間接照明とライン形LEDモジュール」の項で一部触れましたが、今回は前回に説明していないものを含め10の手法を以下に紹介します。
第5章 照明の視覚心理・生理
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5-1視覚のメカニズム目は光によってモノを見ることができます。モノが何故見えるのか?その原理を「目から光が出ていて、目を開けたときだけモノが見える」と説いた古代の哲学者がいました。
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5-2目に優しい照明目を刺すようなギラつく光はその強さによって暴力的にもなり、眼を痛めます。日中の太陽光を直視すると危険です。
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5-3照度と視力の関係私たち日本人は北欧や北米諸国の人に比べると明るさの好きな人種のようです。
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5-4輝度と知覚効果輝度の高い光源や照明器具、窓明かりなどを直接目にすると、つい目を細めたり、まぶしすぎると手で光源を隠したりするような仕草をします。
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5-5色温度と照度の心理効果心理は効果の度合によって体調に影響することから、人の状態や行動に関わるために建築やインテリアなどの設計業務で活用されています。
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5-6光に関する脳の働き最近、照明の脳に与える影響が注目されています。