照明のことが分かる講座

照明とは人々の生活に役立つ光の仕事のことを言います。 照明の主光源がLEDに変わりつつあるなか、照明を知ることで生活はより豊かに変わります。 そこで本連載では照明の基礎知識から光源や照明器具の種類、照明方式、照明がもたらす心理・ 生理効果を分かりやすくご紹介していきます。
第1章 照明の基礎知識

1-8 演色性とは

光源によって色が異なって見えるのは何故?

お店で見た肉や魚の赤身がおいしそうに見えたのに家で見たら少し違って見えた、という経験をされた方は少なくないと思います。これは肉や魚と言った食品だけではなく、衣服や家具などに関しても同様なことが言えます。何故このようなことが起こるのでしょう。 それは家の照明とお店の照明の違いで、おもに使用されている光源スペクトルの違いに起因します。

図1はLED電球のスペクトル分布を表したものですが、A,Bの2種類の光源を見てもらっていますが、AとBでは分光スペクトルがやや異なっています。この違いが照らされたものの色の見え方を変えてしまうのです。

図2は色が見える原理を表しています。少々乱暴な説明になりますが、赤色のものは照らしている光源スペクトルのうち赤色を反射して、他の色を吸収、透過してしまう性質があります。そのため反射した赤色が目に入って、人はそれを赤と認識するわけです。 一方、白色のものは全ての色を反射する性質から、青から赤まで連続した色を持つ光源で照らすと白に見えるのです。

もし赤色のものにカラーライトの青色光を当てたら、青色光はすべて吸収、透過され、目に入る光がなくなり、赤色のものは黒く見えます。しかし一見青色光に見えても、少しでも赤色や他の色を含んだスペクトル光で照らせば、赤色のものは黒ずんだ赤色に見えるはずです。 もちろん赤色と一言でいっても、例えば肉の赤身と魚の赤身では赤色系の反射とその他の色の吸収、透過が微妙に異なるため、スペクトル分布の同じ光源で照らしても違う赤味を見ることになります。

平均演色評価数と特殊演色評価数

以上のように光源によるものの色の見え方を演色性と言います。演色性が注目され始めたのは蛍光灯の出現からと言われています。50~60年前の、比較的初期の蛍光ランプは白熱電球に比べ明るいのですが色の見え方が良くなかったのを覚えています。 特に肌色が問題で血色の悪い感じに見えました。しかし年々改善が進み、今では顔色はよく見え、美術館の絵画照明にも使われる高演色ランプも少なくありません。

演色性は平均演色評価数と特殊演色評価数で評価されます。

初めに平均演色評価数ですが、目安としてRa(アールエー)が用いられます。Raは(Color) rendering averageの頭文字をとったもので、最高が100です。100に近いほど色の見え方の忠実性に優れていることを意味します。忠実性とは自然に見えているということで、必ずしも好ましい色に見えているというわけではありません。

人間の目で知覚できる色の数は人によって異なりますが、数万を超える相当数の色を見分ける能力があるようです。 したがってそれらの色の全てを評価するのは困難なため、国際照明委員会(CIE)では平均演色評価数の場合、中間的な彩度を持ち明度の同じ赤から紫までの8色を試験色(色票)と決め、対象光源が自然光に近似した基準光源で見たときと比較して、色の見え方にずれが生じるかによって評価されます。

そこで対象光源と基準光源で8色の試験色を見比べたとき、全くずれがなく同じ色に見えたら対象光源はRa100になります。ずれが大きくなるにしたがってRa値は低下していきます。因みに図1のAはRa85、BはRa79です。

JIS照明総則によると、例えば住宅はRa80以上の光源で照明されることが推奨されていますが、現在市販されているLED電球はそのことを考慮してRa80以上が多くなっています。 一方、特殊演色評価数(Ri)は15色の試験色のうち平均演色評価数の8色を除いた7色に対して評価されるものです。試験色に彩度の高い赤(R9)、同様に黄(R10)、緑(R11)、青(R12)と、その他に西洋人の女性の肌色(R13)、木の葉の色(R14)、日本人の女性の肌色(R15)が使われ、Ra同様それぞれに対して最高値は100になります。(図3 演色評価数用試験色)

なお、演色評価数が同じであっても光源の色温度が異なると、基準光源が変わるため違った色に見えてしまうので注意が必要です。

  • 図1 LED電球のスペクトル例 A
  • 図1 LED電球のスペクトル例 A
  • 図1 LED電球のスペクトル例 B
  • 図1 LED電球のスペクトル例 B

図2 物の色が見える原理

図2 物の色が見える原理

図3 演色評価数用試験色

図3 演色評価数用試験色

執筆: 中島龍興照明デザイン研究所 中島龍興

『照明のことが分かる講座』の目次

第1章 照明の基礎知識

第2章 光源の種類と特徴

第3章 LED照明器具の選び方

第4章 照明方式

第5章 照明の視覚心理・生理

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