照明のことが分かる講座

照明とは人々の生活に役立つ光の仕事のことを言います。 照明の主光源がLEDに変わりつつあるなか、照明を知ることで生活はより豊かに変わります。 そこで本連載では照明の基礎知識から光源や照明器具の種類、照明方式、照明がもたらす心理・ 生理効果を分かりやすくご紹介していきます。
第1章 照明の基礎知識

1-9 配光と配光分類

配光とは

一般照明用白熱電球(以下、普通電球)を点灯するとフィラメントを中心に四方八方へ360度にわたって光の放射していく様子がイメージできます。光の形は直接目で見ることはできませんが、各方向に出る光の強さ(光度)を測定して、図化すると普通電球は形の整った柿やミカンのような立体形状になります。

例えば柿を真ん中から縦に割ると芯を中心としたハート状に近い断面が表れます。

普通電球の図化された立体形状の光も真ん中から縦に切るとフィラメントを中心とした断面を描くことができます。このような断面図を鉛直面配光曲線図と呼んでいます。

多くのランプや照明器具は左右対称の鉛直面配光になっていますが、この曲線が分かればランプや器具の光の性能を読み取ることのできる極めて重要なデータになります。(図1 普通電球の鉛直面配光曲線図)

鉛直面配光曲線図の形状は照明器具のデザインによって様々です。そこで照明器具の光の特長を分かりやすくするため、ランプの中心を境に上下方向に放射される光束量の比率によって一般に5つに集約して分類しています。 (図1配光分類による照明方式)柿やミカンを真ん中から水平に切ると上部と下部の量が大体同じくらいの大きさになります。普通電球の配光も同様に上部と下部ではほぼ同じような光の量(光束)になるため、これを全般拡散照明形と呼んでいます。このように照明器具の分類を配光別照明方式と言います。

5つの照明方式

フィラメント(もしくはランプ)を中心に、90%以上の光がランプから下方向に出る照明を直接照明形と言っています。天井に埋め込まれる器具(ダウンライト)や金属反射笠を持った器具のほとんど直接照明形になります。 直接照明形器具を天井に配灯した場合、床面や作業面方向に多くの光が出るので、事務室など機能的な明るさを得たいところで勧められます。

また提灯のような器具や乳白グローブ器具の大半は全般拡散照明形に分類されます。(写真1 全般拡散照明形器具)これらの器具を天井から吊り下げると天井、壁、床を万遍なく照らすため部屋全般が明るく見えるようになります。しかし、照明器具自体が明るく輝きすぎると、まぶしさでかえって空間が見えにくくなる恐れもあります。 この場合、器具のランプ部分だけ遮光したり、調光で明るさを下げたりするなどして、輝き具合を調整することでまぶしさの改善を可能にします。

天井面や壁面に多くの光が当たり、器具内の光源が見えない照明器具は間接照明形になります。このような照明は床面や机上面などを明るくするには不得意ですが、直接ランプが見えない分、目にやさしい空間を作ります。 また天井面や壁面を照明することから、それらの面が明るい仕上げであるほど空間が明るく見え、間接照明形器具の本領が発揮されます。間接照明といっても、天井面の一部を照らす場合と天井面全体をより均一に照らす場合では視覚効果も変わります。前者は空間に変化が出ますが、歪んだ感じにもなります。後者は天井の高さを強調します。

照明器具によっては、例えば照射角度が調整できるスポットライト器具のように灯具を下に向ければ直接照明になり、灯具を天井方向に向ければ間接照明へと変化する器具もあり、使い方で2通りの照明効果が楽しめます。

また全般拡散照明形であるランプ露出器具も建築や家具の一部に隠して天井面を照らせば、間接照明に早代わりします。

なお、全般拡散照明形と直接照明形との間に半直接照明形が、同様に間接照明形との間に半間接照明形が存在します。

図1 普通電球の鉛直面配光曲線図

図1 普通電球の鉛直面配光曲線図

図2 配光別照明方式

図2 配光別照明方式

写真1 全般拡散照明形(壁付けと床置きいずれの器具も)

写真1 全般拡散照明形(壁付けと床置きいずれの器具も)

執筆: 中島龍興照明デザイン研究所 中島龍興

『照明のことが分かる講座』の目次

第1章 照明の基礎知識

第2章 光源の種類と特徴

第3章 LED照明器具の選び方

第4章 照明方式

第5章 照明の視覚心理・生理

目次をもっと見る

『オフィス家具/照明/清掃用品』に関連するカテゴリ