照明のことが分かる講座
2-7 LEDに関する用語の解説
LEDに関する専門用語は多々ありますが、特にLED照明を理解するために必要な用語を整理して次に紹介いたします。
リードフレーム(2本足の部分)にLED素子を実装し、それを樹脂で封止したもの。形状が砲弾型や臼型などがあるが総称して縦型LEDとも言われます。封止樹脂部は直径にするとおもに3mm~10mmの大きさがあります。
一個当たりのパワーが小さいので複数まとめて使用することで、サインディスプレーやイルミネーションに応用されています。 (写真1)

写真1 砲弾型LEDの例
表面実装とはプリント基板(セラミックと有機基板がある)にLED素子を載せ、導電パターンに直接はんだ付けして実装する形態。表面実装型LEDはチップLEDとも呼ばれ縦型LEDなどに比べて明るく、広い角度に照射できる。(写真2)(図1)そのほかにランプハウスという成形枠付きのリードフレームにLED素子を実装したタイプもある。
- 写真2 表面実装型LEDの例
- 図1 表面実装型LEDの断面概略図
LED素子を収容し照明器具に利用できる部材。表面実装とスル―ホール実装型がある。
複数のLED素子を基盤に直接結合して、一つのモジュールにしたものです。従来のようなパッケージを行わないため、実装の面積を小さくすることができ、チップオンボード(頭文字をとってCOB)ともいいます。COB LEDは点灯したときは複数のLED素子による粒々感がなく、一つの照明パネルのように見える。(写真3)

写真3 ワンコアのモジュール(右側)
赤・緑・青の三原色のチップを一つの発光体としたもの。これらの色の割合により白色光が得られる。発熱は抑えられますが演色性の高い白色を作るには不向きである。
複数の照明用LEDパッケージをおもに平面的に配置し、点灯回路を搭載して一つのユニットとしたもの。商用電源に直接接続することで点灯できるものでLED電球やライン型LEDモジュールなどがある。(写真4)

写真4 ライン型LEDモジュールの例
LEDパッケージの効率を発光効率という。LEDモジュールはそのままLEDモジュールの効率、LED器具は固有エネルギー消費効率、もしくは総合効率と言う。固有エネルギー消費効率は器具から放射される光束を光源の消費電力で割った値で、車の燃費のように数値が高いほど省エネに寄与する目安になる。 例えば器種にもよりますが、白熱灯器具の場合5~10lm/Wくらいであるが、LED器具は30~100lm/Wが多く、効率の高い器具では150lm/Wを超えるものも出現している。効率の単位はいずれもlm/W(ルーメンパーワット)で表される。(図2)

図2、LEDの効率 (LED lighting selection Vol2 ローム株式会社 2011)
一般照明用のLEDモジュールは光になる部分を除いたワット数分の熱が発生する。もし熱がこもりやすい照明器具にLEDモジュールを使用すると、温度が上昇して発光効率が低下する。その結果電源回路内の電子部品が破損して短寿命の原因となる。 LEDモジュールやLED器具は熱を伝導や対流で逃がす必要があり、例としては空冷エンジンとしてヒダを小さくしたような放熱機構を設けて温度上昇を抑えることもある。これをヒートシンクと言っているが最近は特殊な冷却技術によってヒダのないLEDモジュールや器具も開発されている。
光の3原色を均等に混ぜると白色光になるが、黄色にシアン(やや緑かかった明るい青色)の2色の混光でも白色光になる。この原理を使って青色LEDに黄色の蛍光体を使用することで白色光が出せる。このような白色光を疑似白色LEDと言う。 視感度の高い波長である黄色が使われていることからLEDモジュールの効率(lm/W)が高く、明るさを優先とした一般照明用に使われている。
一般照明用LED光源は従来光源に比べ寿命の長いことが大きな特徴である。普通、寿命は定格寿命(設計寿命)と言われ、それはJISや照社団法人・照明具工業会で定義されている。
例えばJISでは「LEDモジュールが点灯しなくなるまでの総点灯時間、又は全光束が点灯初期に測定した値の70%に下がるまでの総点灯時間のいずれか短い時間」と定義している。一般にLEDの定格寿命はモジュールにもよるが4万時間が多い。 しかしこれはLEDモジュールにとって良い使用条件下でのことで、実際の使用環境が考慮されているわけではない。例えば放熱の悪い状況では寿命が短くなる恐れがある。つまり寿命が4万時間と言っても、それは予想値で保証値ではないのである。
『照明のことが分かる講座』の目次
第1章 照明の基礎知識
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1-1光とは光には私たちの目に見える光と見えない光があります。太古の昔から人が見てきた光は太陽や星の光、そして火の光です。
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1-2照度のお話し照度とは光で照らされた場の明るさのことを言います。
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1-3光束と照度の関係一般照明用の白熱電球(普通電球とも呼ばれる)は40Wより60Wの方が明るいです。そのためW(ワット)数の高いほど「明るいランプ」と思われがちですが、例えば蛍光ランプの40Wは電球60WよりW数が低くとも数倍明るいです。 この例でもわかるようにW数は明るさを表す単位ではないのです。
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1-4照度の黄金比明るさ感は照度の高い低いだけではなく、照度対比によるところも大きいです。例えば写真1と写真2を見て下さい。
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1-5輝度とは街の明かりが届かない自然豊かな場所で、懐中電灯を夜空に向けて照らすと、まるでレーザービームのような一筋の光芒を見ることができます。
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1-6白色光源の色温度照明ではよく「白色光」と言う名称が使われます。太陽の光や青空光は白色光です。またキャンドルや白熱電球・蛍光ランプなどの人工光源も白色光を放ちます。
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1-7色温度を測定してみるとCIExy色度図(以下xy色度図)はCIE(国際照明委員会)によって承認された光色の表し方です。照明関係者だけでなく色彩の勉強をされている方にもおなじみの図表です。
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1-8演色性とはお店で見た肉や魚の赤身がおいしそうに見えたのに家で見たら少し違って見えた、という経験をされた方は少なくないと思います。
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1-9配光と配光分類一般照明用白熱電球(以下、普通電球)を点灯するとフィラメントを中心に四方八方へ360度にわたって光の放射していく様子がイメージできます。
第2章 光源の種類と特徴
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2-1白熱電球、その進化白熱電球は1878年アメリカのトーマス・エジソンによって発明された、と言われています。
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2-2豊かな種類を誇る白熱電球白熱電球を用途別に分類すると前回紹介したように一般照明用、投光照明用、装飾照明用に大別されます。
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2-3蛍光ランプ、その進化とプロセスいままで家庭やオフィス照明などで欠かせない 蛍光ランプ(熱陰極蛍光ランプ)は1935年アメリカの大手電気メーカであるGE(ゼネラルエレクトロニクス社)のインマンによって発明されました。
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2-4蛍光ランプの種類蛍光ランプを形状別に分類すると、おもに直管形、環形(丸形)、小型変形があります。
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2-5HIDランプの種類と性能HIDランプは高輝度放電ランプのことで「High Intensity Discharge Lamp」の頭文字をとった略称です。
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2-6LEDランプ、その進化プロセス今、照明=LED(発光ダイオード)と言われるほど、LEDがあらゆる空間の照明に注目されています。
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2-7LEDに関する用語の解説LEDに関する専門用語は多々ありますが、特にLED照明を理解するために必要な用語を整理して次に紹介いたします。
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2-8LED電球の種類LED電球(電球形LEDとも言われる)は白熱電球の代替になるLED光源で、口金の形状がE形(エジソンベース),B,GX53形のいずれかを備えたものを言います。
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2-9LED電球の選び方今日、一般照明用LED電球は多くの白熱電球用器具(以下、白熱灯)に使われています。そのなかで最近注目されているのが密閉対応型です。
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2-10直管形蛍光ランプ代替のLEDランプ直管LEDランプ(LED蛍光灯、直管形LEDなどともいわれる)とは直管形蛍光ランプの代替用途になるものです。
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2-11特殊照明用LEDランプ一般照明用のLEDランプ以外に特殊な用途を持ったLEDランプがあります。ここではその幾つかを紹介いたします。
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2-12有機ELと無機ELLED照明が普及しつつあるなかで、いまELが注目されています。ELはLEDの技術では難しいとされる、薄くてぎらつきのない面発光を特徴とする光源です。
第3章 LED照明器具の選び方
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3-1照明器具とその種類照明器具とは様々な素材を用いて光源とその点灯に必要な部品を安全に固定し保護したもので、電気的部分と光学的部分、および機械的部分からなります。
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3-2照明器具に使われる素材照明器具には様々な素材が使われていますが、その中でガラス、プラスチック、金属が3大素材と言われます。
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3-3日本の住宅照明に欠かせないシーリングライト1970年代、蛍光灯の普及によって日本の住宅照明には欠かせなくなった照明器具に大型のシーリングライト(以下、シーリングライト)があります。
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3-4ダウンライト器具の種類ダウンライトは天井に穴をあけて、そこに埋め込まれる器具です。したがって器具そのものの存在をあまり感じさせないで空間の明るさを得ることができます。
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3-5ダウンライトの選び方ダウンライトにはおもに全般照明用と局部照明用、壁面照明用の3種類があります。
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3-6ペンダントライト器具とは消費税が導入される前、個別消費税の一種で物品税がありました。これは主に贅沢品に課せられる税で、照明器具では一基に5灯以上のランプをもつ天井吊り下げ器具のシャンデリアが対象になっていました。
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3-7スポットライト器具の種類と選び方スポットライトを浴びるという言葉があります。これは大勢の人の視線を集める、注目されるという意味になります。
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3-84つの配光別スタンド器具スタンド器具(以下、スタンド)とは床や卓上に置いて使う器具のことで、前者をフロアスタンド(フロアランプと言う)、後者が卓上スタンド(テーブルランプとかデスクランプとも言う)になります。いずれも配線工事が不要で、近くにコンセントがあればどこにでも設置が可能なため使い勝手の良い照明器具です。
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3-9ブラケットと呼ばれる壁付け器具壁に直付けされる器具を一般にブラケットと言います。別にウォールライトとかウォールスコンスなどと呼ばれることもあります。
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3-10屋外用器具の種類屋外照明は道路、街路、広場などを安全な明るさにする目的で普及してきました。しかし今日ではそれに加えて夜の景観や雰囲気を高める照明が注目されています。
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3-11景観照明(ライトアップ)用器具夜、歴史的な建造物や土木的価値のある橋梁などが暗闇から明るく浮かび上がる様はとてもドラマチックで新たな空間の魅力を引き出す照明として、近年クローズアップされています。このような照明は一般にライトアップと呼ばれ、夜の風景に彩りを添える効果として期待されています。
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3-12間接照明とライン形LEDモジュール器具建築化照明とは建築の躯体に照明器具を内蔵して空間の明るさを得る手法です。様々な手法がありますがダウンライト照明が最も代表的な手法です。
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3-13調光・調色の制御方法照明の明るさを変えることはものの見え方と空間の雰囲気を変えることにつながり、人々の行動心理に与える影響は大きいです。
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3-14エネルギー消費効率の高いLEDランプLED照明が省エネになり電気代の節約になることは、今では周知のことと思います。
第4章 照明方式
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4-1全般照明と局部照明全般照明と局部照明は照明方式の一部で、どちらの方式をとるかで空間の雰囲気は大きく変わります。
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4-2タスク・アンビエント照明とはタスク・アンビエント照明は全般照明や局部照明と同じ照明方式の一部です。
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4-3直接照明と間接照明直接照明は天井に設置されたダウンライトやスポットライト器具などによって作業面や見せたい対象(視対象)を直接照らすため、照明効率が高く省エネ照明に寄与します。しかし一方で影が生じやすく、照射角度や配光によって生じる陰翳は人の顔や立体物の見え方を変えて見せます。
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4-4建築化照明と主な手法建築化照明については様々な手法があります。以前に「間接照明とライン形LEDモジュール」の項で一部触れましたが、今回は前回に説明していないものを含め10の手法を以下に紹介します。
第5章 照明の視覚心理・生理
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5-1視覚のメカニズム目は光によってモノを見ることができます。モノが何故見えるのか?その原理を「目から光が出ていて、目を開けたときだけモノが見える」と説いた古代の哲学者がいました。
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5-2目に優しい照明目を刺すようなギラつく光はその強さによって暴力的にもなり、眼を痛めます。日中の太陽光を直視すると危険です。
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5-3照度と視力の関係私たち日本人は北欧や北米諸国の人に比べると明るさの好きな人種のようです。
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5-4輝度と知覚効果輝度の高い光源や照明器具、窓明かりなどを直接目にすると、つい目を細めたり、まぶしすぎると手で光源を隠したりするような仕草をします。
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5-5色温度と照度の心理効果心理は効果の度合によって体調に影響することから、人の状態や行動に関わるために建築やインテリアなどの設計業務で活用されています。
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5-6光に関する脳の働き最近、照明の脳に与える影響が注目されています。