照明のことが分かる講座
2-9 LED電球の選び方
今日、一般照明用LED電球は多くの白熱電球用器具(以下、白熱灯)に使われています。そのなかで最近注目されているのが密閉対応型です。 LED電球は熱と湿気に弱いため、熱の籠りやすい器具、例えばガラスグローブ器具には密閉対応型LED電球を選ぶ必要があります。ただし密閉型と言っても屋内用器具に限ってのことで、器具内で結露など湿気の生じやすい屋外用器具には基本的に使えないので注意が必要です。
また調光用白熱灯に使う場合も、特別に調光対応型LED電球を選ばなければなりません。
LED電球には幾つかの配光(光の出方)パターンがあります。それは普通電球と同じように口金部分を除いた全方向に光がほぼ均等に拡散する全般配光とやや下方向(口金が上にある時)が明るい準全般配光です。(図1)
図1 一般照明用の白熱電球とLED電球の配光パターン例
一般に全般配光は乳白グローブ器具に使用するとグローブ全般がムラなく綺麗に輝きます。しかし準全般配光のLED電球を選ぶとグローブの一部が明るくなり、全体に光ムラの生じる恐れも考えられます。
準全般配光は下面開放形ダウンライト器具に使うと、全般配光LED電球より空間に明るさが得られやすいです。しかしダウンライト器具でも器種によっては逆効果も考えられ、また単純に下方向に多くの光を求めるのであればレフ形LED電球のほうがより効果を発揮します。 いづれにしても既存の白熱灯器具に代替する場合の難しさがあるので、よく研究したうえでの購入が求められます。
装飾用LED電球の代表格はシャンデリア電球形です。この種のランプはバルブが蝋燭の炎のような形状をしており、バルブ内の発光部が煌めいて見えるクリアタイプと発光部が直接見えない乳白タイプがあります。
またクリアタイプにも2種類あり、一つは素子の前面に拡散レンズを施すことで、レンズ自体が煌めきのある光となって全方向に放射するもの(写真1)、そしてもう一つは白熱電球のフィラメントに似せた輝きを見せるため、LED素子でフィラメントのようなものを形成しているものです。 いずれのタイプもクリスタルガラスでデザインされた装飾的な照明器具に使われることで煌めき効果が表現されます。
シャンデリア電球形LED電球(クリアタイプ)
比較的高天井に取り付くシャンデリア器具に、シャンデリア電球形はベストな選択です。今までは白熱電球のランプ切れによるメンテナンスが大変でしたが、超長寿命のLED電球に代替されることで、その心配がなくなるからです。
シャンデリア電球形LED電球はおもに電球色と白色の色温度から選べます。電球色といっても2200K~3000Kがあり、例えば2200Kを選ぶと、まるでキャンドルのように温かな雰囲気の輝きが楽しめます。
投光照明用LED電球にはレフ形やビーム電球形(PAR型)、それにミラー付きハロゲン(MR16など)形があります。
従来の投光照明用白熱電球は局部的に明るくすると、対象が高照度になるにしたがって多くの輻射熱を伴うため、特に熱に弱い対象の照明には難しい問題がありました。 またダイクロハロゲンは熱以外に若干の紫外線も放射するため、紫外線に反応する対象で高額なものの照明には紫外線カットフィルターをランプの前面に装着するなどして対処してきました。
しかし投光照明用LED電球はLED特有の紫外線や輻射熱の心配もほとんどないため、あまり制約を受けることなくスポット照明できます。
現在、この種のLED電球は同様の白熱電球に比べ、商品によっては1/10以下のワット数で同等の直下照度が得られ、省エネ照明に貢献しています。(図2)
図2 主な投光照明用LED電球の特性比較例(レフ電球のみ白熱電球)
投光照明用LED電球はワット数、光色、直下光度、光の広がりなどを含めると一般照明用同様、種類が豊富にあります。そのためランプは照明対象の大きさ(広さ)と対象をどの程度明るく目立たせたいかによって、勘ではなく照度とスポットライトの大きさを計算したうえで適切に選ぶことが大切になります。
『照明のことが分かる講座』の目次
第1章 照明の基礎知識
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1-1光とは光には私たちの目に見える光と見えない光があります。太古の昔から人が見てきた光は太陽や星の光、そして火の光です。
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1-2照度のお話し照度とは光で照らされた場の明るさのことを言います。
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1-3光束と照度の関係一般照明用の白熱電球(普通電球とも呼ばれる)は40Wより60Wの方が明るいです。そのためW(ワット)数の高いほど「明るいランプ」と思われがちですが、例えば蛍光ランプの40Wは電球60WよりW数が低くとも数倍明るいです。 この例でもわかるようにW数は明るさを表す単位ではないのです。
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1-4照度の黄金比明るさ感は照度の高い低いだけではなく、照度対比によるところも大きいです。例えば写真1と写真2を見て下さい。
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1-5輝度とは街の明かりが届かない自然豊かな場所で、懐中電灯を夜空に向けて照らすと、まるでレーザービームのような一筋の光芒を見ることができます。
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1-6白色光源の色温度照明ではよく「白色光」と言う名称が使われます。太陽の光や青空光は白色光です。またキャンドルや白熱電球・蛍光ランプなどの人工光源も白色光を放ちます。
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1-7色温度を測定してみるとCIExy色度図(以下xy色度図)はCIE(国際照明委員会)によって承認された光色の表し方です。照明関係者だけでなく色彩の勉強をされている方にもおなじみの図表です。
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1-8演色性とはお店で見た肉や魚の赤身がおいしそうに見えたのに家で見たら少し違って見えた、という経験をされた方は少なくないと思います。
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1-9配光と配光分類一般照明用白熱電球(以下、普通電球)を点灯するとフィラメントを中心に四方八方へ360度にわたって光の放射していく様子がイメージできます。
第2章 光源の種類と特徴
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2-1白熱電球、その進化白熱電球は1878年アメリカのトーマス・エジソンによって発明された、と言われています。
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2-2豊かな種類を誇る白熱電球白熱電球を用途別に分類すると前回紹介したように一般照明用、投光照明用、装飾照明用に大別されます。
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2-3蛍光ランプ、その進化とプロセスいままで家庭やオフィス照明などで欠かせない 蛍光ランプ(熱陰極蛍光ランプ)は1935年アメリカの大手電気メーカであるGE(ゼネラルエレクトロニクス社)のインマンによって発明されました。
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2-4蛍光ランプの種類蛍光ランプを形状別に分類すると、おもに直管形、環形(丸形)、小型変形があります。
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2-5HIDランプの種類と性能HIDランプは高輝度放電ランプのことで「High Intensity Discharge Lamp」の頭文字をとった略称です。
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2-6LEDランプ、その進化プロセス今、照明=LED(発光ダイオード)と言われるほど、LEDがあらゆる空間の照明に注目されています。
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2-7LEDに関する用語の解説LEDに関する専門用語は多々ありますが、特にLED照明を理解するために必要な用語を整理して次に紹介いたします。
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2-8LED電球の種類LED電球(電球形LEDとも言われる)は白熱電球の代替になるLED光源で、口金の形状がE形(エジソンベース),B,GX53形のいずれかを備えたものを言います。
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2-9LED電球の選び方今日、一般照明用LED電球は多くの白熱電球用器具(以下、白熱灯)に使われています。そのなかで最近注目されているのが密閉対応型です。
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2-10直管形蛍光ランプ代替のLEDランプ直管LEDランプ(LED蛍光灯、直管形LEDなどともいわれる)とは直管形蛍光ランプの代替用途になるものです。
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2-11特殊照明用LEDランプ一般照明用のLEDランプ以外に特殊な用途を持ったLEDランプがあります。ここではその幾つかを紹介いたします。
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2-12有機ELと無機ELLED照明が普及しつつあるなかで、いまELが注目されています。ELはLEDの技術では難しいとされる、薄くてぎらつきのない面発光を特徴とする光源です。
第3章 LED照明器具の選び方
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3-1照明器具とその種類照明器具とは様々な素材を用いて光源とその点灯に必要な部品を安全に固定し保護したもので、電気的部分と光学的部分、および機械的部分からなります。
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3-2照明器具に使われる素材照明器具には様々な素材が使われていますが、その中でガラス、プラスチック、金属が3大素材と言われます。
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3-3日本の住宅照明に欠かせないシーリングライト1970年代、蛍光灯の普及によって日本の住宅照明には欠かせなくなった照明器具に大型のシーリングライト(以下、シーリングライト)があります。
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3-4ダウンライト器具の種類ダウンライトは天井に穴をあけて、そこに埋め込まれる器具です。したがって器具そのものの存在をあまり感じさせないで空間の明るさを得ることができます。
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3-5ダウンライトの選び方ダウンライトにはおもに全般照明用と局部照明用、壁面照明用の3種類があります。
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3-6ペンダントライト器具とは消費税が導入される前、個別消費税の一種で物品税がありました。これは主に贅沢品に課せられる税で、照明器具では一基に5灯以上のランプをもつ天井吊り下げ器具のシャンデリアが対象になっていました。
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3-7スポットライト器具の種類と選び方スポットライトを浴びるという言葉があります。これは大勢の人の視線を集める、注目されるという意味になります。
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3-84つの配光別スタンド器具スタンド器具(以下、スタンド)とは床や卓上に置いて使う器具のことで、前者をフロアスタンド(フロアランプと言う)、後者が卓上スタンド(テーブルランプとかデスクランプとも言う)になります。いずれも配線工事が不要で、近くにコンセントがあればどこにでも設置が可能なため使い勝手の良い照明器具です。
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3-9ブラケットと呼ばれる壁付け器具壁に直付けされる器具を一般にブラケットと言います。別にウォールライトとかウォールスコンスなどと呼ばれることもあります。
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3-10屋外用器具の種類屋外照明は道路、街路、広場などを安全な明るさにする目的で普及してきました。しかし今日ではそれに加えて夜の景観や雰囲気を高める照明が注目されています。
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3-11景観照明(ライトアップ)用器具夜、歴史的な建造物や土木的価値のある橋梁などが暗闇から明るく浮かび上がる様はとてもドラマチックで新たな空間の魅力を引き出す照明として、近年クローズアップされています。このような照明は一般にライトアップと呼ばれ、夜の風景に彩りを添える効果として期待されています。
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3-12間接照明とライン形LEDモジュール器具建築化照明とは建築の躯体に照明器具を内蔵して空間の明るさを得る手法です。様々な手法がありますがダウンライト照明が最も代表的な手法です。
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3-13調光・調色の制御方法照明の明るさを変えることはものの見え方と空間の雰囲気を変えることにつながり、人々の行動心理に与える影響は大きいです。
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3-14エネルギー消費効率の高いLEDランプLED照明が省エネになり電気代の節約になることは、今では周知のことと思います。
第4章 照明方式
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4-1全般照明と局部照明全般照明と局部照明は照明方式の一部で、どちらの方式をとるかで空間の雰囲気は大きく変わります。
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4-2タスク・アンビエント照明とはタスク・アンビエント照明は全般照明や局部照明と同じ照明方式の一部です。
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4-3直接照明と間接照明直接照明は天井に設置されたダウンライトやスポットライト器具などによって作業面や見せたい対象(視対象)を直接照らすため、照明効率が高く省エネ照明に寄与します。しかし一方で影が生じやすく、照射角度や配光によって生じる陰翳は人の顔や立体物の見え方を変えて見せます。
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4-4建築化照明と主な手法建築化照明については様々な手法があります。以前に「間接照明とライン形LEDモジュール」の項で一部触れましたが、今回は前回に説明していないものを含め10の手法を以下に紹介します。
第5章 照明の視覚心理・生理
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5-1視覚のメカニズム目は光によってモノを見ることができます。モノが何故見えるのか?その原理を「目から光が出ていて、目を開けたときだけモノが見える」と説いた古代の哲学者がいました。
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5-2目に優しい照明目を刺すようなギラつく光はその強さによって暴力的にもなり、眼を痛めます。日中の太陽光を直視すると危険です。
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5-3照度と視力の関係私たち日本人は北欧や北米諸国の人に比べると明るさの好きな人種のようです。
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5-4輝度と知覚効果輝度の高い光源や照明器具、窓明かりなどを直接目にすると、つい目を細めたり、まぶしすぎると手で光源を隠したりするような仕草をします。
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5-5色温度と照度の心理効果心理は効果の度合によって体調に影響することから、人の状態や行動に関わるために建築やインテリアなどの設計業務で活用されています。
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5-6光に関する脳の働き最近、照明の脳に与える影響が注目されています。