テスターの基礎講座
4-1 ケーブルの断線チェック
■ケーブルには、電源ケーブル、ステレオミニプラグケーブル、USBケーブルなど多くの種類があります。そのケーブルは、銅の単線や細い銅線を束ねた撚り線からできています。針金と同じように、繰り返し折り曲げていると折れてしまいます。すなわち断線です。しかし、ケーブルには被覆があり、直接見ることができません。そのため、テスターを使って断線をチェックします。
■最初に、断線しやすい箇所がありますので、その部分を重点的に目で診て確認します。ケーブルの途中から断線することはあまり無く、ケーブルとの接合部分が断線の多い箇所です。被覆のひび割れ、変色、部分的に柔らい状態、銅線露出など拡大鏡を使用して確認します。次に、疑わしい箇所を見つけたら、テスターを抵抗測定モードにしてチェックします。ケーブルの疑わしい箇所を、前後左右に折り曲げ抵抗値が変化するかをチェックします。断線していれば、テスターの表示は「0.L」や「0.F」、∞(無限大)となります。ケーブルを前後左右に折ることにより、一時的に接触し抵抗値が変化します。その部分が、断線している箇所です。ただし、ケーブルにも抵抗があり、0Ωになることはありません。

■ケーブルが抜き差しできるものや両端にプラグがあるものでは、ミノムシクリップ付きケーブルでプラグ間を短絡させチェックします。たとえば、ステレオミニプラグケーブルの場合には、ミノムシクリップ付きケーブルで、GNDと左(L)、GNDと右(R)、左(L)と右(R)の組み合わせで、短絡させチェックします。もちろん、各ピンアサインを、両端のプラグ間で直接測定してもかまいません。壁などの内側に配線されているケーブルにも、利用することができます。
■また、事前測定や同一長ケーブルが必要になりますが、各種ケーブルの抵抗値を、ミノムシクリップ付ケーブルで接続しテスターで測定しておきます。その標準ケーブルと抵抗値を比較することにより、断線をチェックすることができます。標準となるケーブルと比べて抵抗値が極端に大きければ、ケーブルが途中で断線している可能性があります。さらに、静電容量で断線をチェックすることもできます。ケーブルには長さに比例した静電容量があります。ケーブルの静電容量を標準となる同一長のケーブルと比較し静電容量が著しく小さければ、ケーブルが途中で断線している可能性があります。しかし、ケーブル長が短い(1.5m以下)と静電容量が微量のため判断が困難ですので、長めの同軸ケーブルなどには最適な測定方法です。「3-7 コンデンサーの測定」で解説したように、テスターを静電容量測定モードに設定してチェックします。このとき、アナログテスターでは最低レンジに設定しておきます。たとえば、CX506aではC1レンジになります。いずれも、使用するテスターの特性により、値が異なることもありますので、同一のテスターでチェックすることをお勧めします。
■断線を確認したときには、ケーブルを交換します。ACケーブル、ステレオミニプラグケーブルやUSBケーブルなどは、予備を複数本持っているといいと思います。また、電気製品の電源ケーブルは、メーカー修理、自己責任で修理、新しい製品を購入の選択をすることになります。
【参考文献】
内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)
三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)
三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)
『テスターの基礎講座』の目次
第1章 テスターの概要
第2章 テスターの使い方
第3章 テスターの測定方法
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3-10バイポーラトランジスターの測定最近の電子機器には、トランジスター等を内部に形成したICなどのモジュールが多く搭載され、3本足のトランジスターは見かけなくなりました。
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3-11電界効果トランジスターの測定「3-10 バイポーラトランジスターの測定」では、動作に関わるキャリアが2種類あるバイポーラトランジスターをご紹介しました。
第4章 テスターの活用法
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4-1ケーブルの断線チェックケーブルには、電源ケーブル、ステレオミニプラグケーブル、USBケーブルなど多くの種類があります。
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4-2電池ボックスのチェック電子機器には電源が必要不可欠ですので、色々な電池が使われています。
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4-3ACアダプターのチェックACアダプターのチェックをする場合には、短絡することもあるため、ケーブルを前後左右に折り曲げることをお勧めしません。