マシニングセンタの基礎講座

モノタロウの本連載では、マシニングセンタの種類や仕組み、使い方について、実践的で役立つ知識をご紹介していきます。
第5章 マシニングセンタの特性と関連知識

5-6 地耐力

家を建てるとき、地面にコンクリートの基礎をつくります。基礎は家の重みを均一に分散さえることによって、地面が沈下し、家が傾かないようにするための働きをします。同じように、マシニングセンタ(工作機械)を生産現場に設置する場合にもコンクリートの基礎をつくることが大切です。基礎をつくらない場合や基礎をつくってもコンクリートが薄い場合はマシニングセンタの荷重が分散されないまま地面に伝わってしまうため、地面が沈下することがあります。

基礎をつくるときのポイントは「地耐力」です。地耐力は地盤がどの程度の荷重まで破壊しないか、または、どの程度の荷重まで地盤沈下しないかを示す指標で、1m2あたり何トン(t)という単位(t/m2)で表示します。

地耐力はマシニングセンタ(工作機械)の重量、想定される工作物の最大重量、コンクリートの基礎重量を足し合わせた総重量(トン:t)をコンクリートの基礎面積(m2)で割った値に「安全率」を掛けて計算します。安全率は通常2~3です。つまり、マシニングセンタ(工作機械)を設置する地盤にはマシニングセンタ本体、工作物、基礎の総重量を基礎面積で割った値の2~3倍の荷重が作用しても沈下しない強靭さが求められるということです。参考として、マシニングセンタの場合、小型では3~4(t/m2)、中型では6~7(t/m2)、大型では20(t/m2)以上の地耐力が必要といわれています。そもそも地盤が弱い場合には、割りぐり石(直径12~20cmくらいの砕石)を敷き詰めたり、杭を打ったりして地盤を強化します。

地耐力と計算方法

地耐力と計算方法

地耐力と計算方法

しっかりした基礎を打つことで、本体重量を均等に地面に伝える

地耐力と計算方法

基礎が薄いと本体重量によって地盤沈下する

 

基礎を施工する際、「防振溝」をつくることもあります。たとえば、工場の近くに幹線道路や高速道路がある、工場内に大型のコンプレッサがあるなど、マシニングセンタ(工作機械)の設置近傍に振動源がある場合、その振動が基礎に伝わらないように、基礎と周辺部分に溝をつくって振動が伝わらないようにします。これを防振溝といいます。防振溝には木の板やゴムなどを挿入すると落下物を防ぐことができます。

防振溝による振動の遮断

防振溝による振動の遮断

※切削油剤や潤滑油が土壌に染み込む恐れがある際には、コンクリートと地盤の間に浸透を防止する樹脂シートを敷くこともある

 

マシニングセンタが大型になるほど、また運動精度が高くなる(高い加工精度を要求する)ほど、本体を支える基礎が重要になります。

 

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 教授

『マシニングセンタの基礎講座』の目次

第1章 マシニングセンタの基礎知識

第2章 マシニングセンタの装備

第3章 マシニングセンタを動かすソフトウエア

第4章 マシニングセンタの要素技術

第5章 マシニングセンタの特性と関連知識

第6章 マシニングセンタを使用する際の基礎知識

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