建築設備配管工事の基礎講座

空調設備や換気設備、給排水衛生設備の血管となる「配管」。本連載では、配管方式の分類から配管工事・配管材料の種類まで、現場や商品選定時に役立つ知識を紹介していきます。
第4章 配管の接合方法の種類

4-1 配管継手類(pipe fittings)

配管工事を施工する上で、「直管」とともに「配管継手(管継手)」は、不可欠な材料である。多種多様な配管網を構築する上で、配管の接続・方向転換・分岐・集合・回転・屈曲・伸縮の吸収・末端の閉鎖・各種機器との接続などの目的で、使用される材料が「管継手」である。「管継手」は配管材料別にも各種の継手が開発され、市場投入されているが、このでは紙面の都合上、最も広範に使用されている「配管用炭素鋼鋼管(SGP)」の継手類だけに特定して、紹介しておきたい。

(1)ねじ配管継手

この継手は、正式には「ねじ込み管継手」と呼ばれ、主として「鋼管(SGP)」をねじ接続する場合に使用される継手である。

したがって、小口径(50A)以下のねじ継手が多い。材質からは、「可鍛鋳鉄製継手(JIS B 2301)」・「鋼管製継手(JIS B 2302)」があり、排水配管用には、「ドレネージ継手(drainage fittings)」とも呼ばれる、専用の「排水管継手(JIS B 2303)」がある。

いずれにしても、その形状・用途から、エルボ・チーズ・ソケット・ユニオン・レジューサー等々、数多くの品揃えがある。

図-1 ドレネ―ジ継手

 

図-2 各種ねじ配管継手の形状と名称

 

(2)溶接配管継手

鋼管(SGP)を溶接接続配管する場合に使用される管継手で、管の材質・肉厚・口径(65A以上のものが多い)などにより、多種多様な形状(エルボ継手・チーズ継手・ソケット継手等々)の溶接継手がある。溶接時に必要な「開先加工」を配慮して、溶接継手の簡単には、「ベベル加工」が施されている。

図-3 各種溶接配管継手の形状と名称

 

(3)機械式配管継手

この管継手は、「メカニカル式配管継手」とも呼ばれるように、主として「直管」同士の接合に使用される。接続する管端を加工し、特殊形状の「軟質ゴム製ガスケット」を装着し、その上から「ハウジング」をかぶせて、ボルトおよびナットで締め付ける管継ぎ手である。

この継手は、継手1か所でも、多少の管変位を吸収できるという利点を有する。機械的に接合できるので、「ねじ接合法」や「溶接接合法」に比べ、それほど熟練度がなくても使用できる継手である。最近では、メ―カ―により様々な機械式継手が開発され市場に投入されている。

締付け型継手

 

【ちょっと一息!】ネパールでの「ねじ配管継手の歩留まり」

今から10数年前に、JSPE(給排水設備研究会)の一行と「ネパール」を訪れた時のことである。ネパールの「カトマンズ」から「ポカラ」に移動し、某ホテルの新築工事現場を見学させてもらった。現場内で「15A~25A」程度の「スプリンクラー消火配管(黒ガス管採用)」が取りつけられているのが目についた。この配管接続法には、「ねじ接合法」ではなく、なんと「酸素アセチレン溶接法」が採用されていた。

日本の工事現場監督者にその採用理由を率直に尋ねると、「ねじ継手」はインドからの輸入に頼っており、その「歩留まり(yield rate)」は、約20%程度である由。

「水圧試験」をすると、大半のねじ継手からジャジャ漏れなので、「溶接継手」を再購入し、「酸素アセチレン溶接」に切り替えざるを得なかったとか・・・。

図-5 ねじ配管継手の歩留まり

 

執筆:NAコンサルタント 安藤紀雄
挿絵:瀬谷昌男
  

『建築設備配管工事の基礎講座』の目次

    

第1章 建築設備と建築設備配管

第2章 建築設備用配管材料の種類

第3章 配管の接合方法の種類

第4章 配管工事を支える補助部材

第5章 配管のテストと試運転

第6章 配管に関するトラブル対応

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