建築設備配管工事の基礎講座

空調設備や換気設備、給排水衛生設備の血管となる「配管」。本連載では、配管方式の分類から配管工事・配管材料の種類まで、現場や商品選定時に役立つ知識を紹介していきます。
第2章 建築設備用配管材料の種類

2-10 鉛管と無機材料管

(1)鉛管(lead pipe・the plumbing)

鉛管は、最も古くから使用されている配管材料で、広く「工業用配管」や「給排水配管」などに使用されてきたが、最近では「給水水道管」には、全く使用されなくなってきている。それどころか、かつて「水道管」として布設されてしまった「水道用鉛管」は極力掘り返され撤去され、現在他の水道配管材料に取り替えられる方向にある。

その理由は、「鉛」が「幼小児の知能発達」に有害であるとされ、日本でも厚生労働省の「水道水の水質基準」に、「7.鉛及びその化合物:0.01mg/L」(平成26年4月1日施行)と規定されているからである。

図-1 鉛管とIQ値

 

最初に「鉛管」の一般的性質を列挙すると次のようになる。

  • 1.柔軟であるため、施工が容易であり、他の配管との接続が簡単にできる。
  • 2.「耐食性」に優れているため、寿命が永久的である。
  • 3.「衝撃」や「振動」にも強い。
  • 4.寒冷時の「氷結膨張」による破裂に対し、優れている。
  • 5.錆や水あかなどが付着せず、また「ジョイント部」が少ないため「流水性」がよい。
  • 6.災害時における修理が簡単にできる。

1)一般工業用鉛および鉛合金管(JIS H 4311):この管は、工業用鉛管1種(PbT-1)および工業用鉛管2種(PbT-2)などがあり、1種は鉛:99.9%以上で肉厚なので「工業用」に適し、2種は鉛:99.6%以上で薄肉なので「一般排水用」に適している。

2)水道用ポリエチレンライニング鉛管(JIS H 4312):この鉛管は、「地球環境」の悪化と共に「飲料水」に対する諸規制がますます強くなり、水道水中への「鉛の溶入量」規制され、従来の「はだか鉛管」を「ポリエチレン」によって鉛管内部を被覆(ライニング)することとし、従来の「水道用鉛管」から「水道用ポリエチレンライニング鉛管」に変更されたものである。

なお、この管には、ポリエチレン複合鉛管特種(PEPb-S)、ポリエチレン複合鉛管1種(PEPb-1)およびポリエチレン複合鉛管第2種(PEPb-2)の3種類があり、使用圧力:0.75MPa(7.6kgf/cm2)以下の水道水に使用される。

3)排水・通気用鉛管(SHASE S203):この鉛管は、鉛純度:99.6%以上で、水圧試験値は0.35MPa(3.6kgf/cm2)である。内径:30~65mmの管の厚さは、内径:75mmおよび 100mmの管の厚さはであり、定尺長は原則として2mである。

注:SHAE S=空気調和・衛生工学会規格

(2)無機材料管

以下で紹介する無機材料管は、主として「水路用」や「排水管(下水道管など)」として利用される配管材料である。

1)遠心力鉄筋コンクリート管(JIS A 5372:HP):このコンクリート管は、「ヒューム管」とも呼ばれ、鉄製の型枠内に円筒形に組み立てた「鉄筋かご」を挿入し、回転させながら「コンクリート」を挿入すると、「遠心力」によって成形され製造される管である。

JIS規格としては、JIS A 5303が廃止され、JIS A 5372(プレキャスト鉄筋コンクリート製品)に包括された。この管は「外圧管」と「内圧管」と大別される。

「外圧管」は、排水管・下水管などの内圧より、むしろ埋設した場合の「外圧」に堪えることを目的としている。外圧強さによって、1種管・2種管・3種管(NC形のみ)に分けられ、2種管の方が1種管より外圧強さは大きい。

一方、「内圧管」は、「送水管」や「導水管」のように、内圧のかかる配管に使用され、2K管・4K管・6K管に分けられる。

2)陶管(JIS R 1201):陶管は粘土を主原料として「製管機」で成形したものを「自然乾燥」した後、焼成した製品である。陶管は「I類(旧規格の厚管)」と「II 類(旧規格の並管)」に分類され、主に一般排水には「II類」が、都市下水管としては「I類」が使用されている。

執筆:NAコンサルタント 安藤紀雄
挿絵:瀬谷昌男
  

『建築設備配管工事の基礎講座』の目次

    

第1章 建築設備と建築設備配管

第2章 建築設備用配管材料の種類

第3章 配管の接合方法の種類

第4章 配管工事を支える補助部材

第5章 配管のテストと試運転

第6章 配管に関するトラブル対応

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