テスターの基礎講座

テスターとは、電気・電子回路の状態や状況を知るために電気量を目に見える形に変換し間接的に測り、必要な電気量を判断をするために活用する機器です。本連載では、テスターの仕組み・構造から、測定方法まで、テスターを活用する上で知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第1章 テスターの概要

1-2 テスターで何がわかるの?

■テスターで測れる基本的な値は、抵抗(導通)、電圧と電流です。いったい、それらを測定して、電気・電子回路の何がわかるのでしょうか。それでは、小学校の理科で実験する、電池で豆電球を点灯させる回路を製作してみます。電池(単3×1本)と電池ホルダー(単3×1本用)、豆電球(1.5V)と豆球用ソケットを用意します。電池ホルダーと豆球用ソケットを接続する簡単な回路です。そして、電池をホルダーに、豆電球をソケットに取り付ければ、点灯するはずです。しかし、残念ながら正常に点灯しないときにはどうしますか。

■ビニール線のどこかが断線していると、豆電球は点灯しません。隠れて見えない場所をどうしたら確認できるのでしょうか。そのために、電池と豆電球を外し、テスターを抵抗測定モードに切り替えます。テスト棒をソケットの内側とホルダーの端子に当て、導通を確認します。また、ソケットの底部とホルダーの端子に当て、同じように導通を確認します。断線していなければ、どちらか一方の端子と導通(約0Ω)があるはずです。テスターは、回路が断線していないかを試験することができるのです。

テスターで何がわかるの?

■また、電池が消耗していると、豆電球は明るく点灯しません。電池の消耗具合は、どうしたら確認できるのでしょうか。まず、テスターを直流電圧測定モードに切り替えます。赤のテスト棒を電池のプラスに、黒のテスト棒をマイナスに当て電圧を測定します。電圧が1.2Vから1.8Vの範囲内なら十分に使用できる消耗していない電池です。しかし、この測定方法では、かなり古い電池でない限りほぼ1.5Vとなり、知りたい消耗具合(寿命)が分からないのです。消耗具合は、豆電球を点灯した状態で電圧を測定する必要があります。実際に測定すると、電池を直接測定した電圧と、豆電球を点灯したときの電圧は異なります。詳細は「3-3 電池の電圧測定」で解説します。いずれにしても、テスターは電圧を測定し、必要な電圧か判断することができるのです。

■ところで、豆電球の抵抗値はどのくらいなのでしょうか。電圧、抵抗と電流の関係を表すのがオームの法則(電圧[V] = 電流[A]×抵抗[Ω])です。すなわち、電圧と電流が分かれば抵抗値は計算できるのです。それでは、テスターを直流電流測定モードに切り替えます。赤のテスト棒をホルダーのプラスに、黒のテスト棒をソケットに当て電流を測定します。実測では、点灯したときの電圧が1.328V、電流は238.2mAです。抵抗[Ω] = 電圧[V] / 電流[A] = 1.328[V] / 238.2[mA] = 5.575[Ω]となります。このように、テスターは回路の状態を診断することができるのです。

執筆: 横浜みどりクラブ(JH1YMC)広報 内田 裕之(JG1CCL/W3CCL)

『テスターの基礎講座』の目次

第1章 テスターの概要

第2章 テスターの使い方

第3章 テスターの測定方法

第4章 テスターの活用法

第5章 使用上の注意点、トラブル対応

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