空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第4章 熱搬送設備

4-10 配管材

空調設備では用途や内部の流体の性質などに応じてさまざまな配管材が使われます。ここでは空調設備でよく使われる配管材をいくつか紹介します。

配管用炭素鋼鋼管

「配管用炭素鋼鋼管」は一般にはガス管といわれるものです。亜鉛メッキの有無で「白ガス管」と「黒ガス管」とに分けられ、亜鉛メッキ処理されているものを白ガス管、亜鉛メッキ処理されていないものを黒ガス管といいます。

配管用炭素鋼鋼管は上水道を除く水、蒸気、油、ガス配管など、広範囲の用途で使われる配管材で、溶接が容易で強度が高く、耐熱性に優れますが、腐食への注意は必要です。

空調設備では冷温水や冷却水の配管に白ガス管がよく使われますし、比較的低い圧力(最高使用圧力1.0MPa)の蒸気配管には黒ガス管も使われます。もっと高い圧力の蒸気配管などには配管用炭素鋼鋼管より厚みのある「圧力配管用炭素鋼鋼管」が使われます。10、20、30、40、60、80といったスケジュール番号がつけられた管で、数値が大きいほど肉厚で使用できる圧力(最高使用圧力10MPa)も高くなります。

配管用炭素鋼鋼管(白ガス管)

硬質塩化ビニル管・硬質塩化ビニルライニング鋼管

「硬質塩化ビニル管」は耐食性に優れ、軽くて施工も楽なので、水の輸送には定番の管です。「塩ビ管」と略していわれることが多いです。肉厚なのがVP管、薄いのがVU管です。空調設備では冷却水管などによく使われます。

硬質塩化ビニル管

ライニングとは、あるものに別のものを貼り付けることを意味しますので、「硬質塩化ビニルライニング鋼管」とは、鋼管の内側に硬質塩化ビニルを貼り付けた管のことを意味します。鋼管の強度や耐熱性に塩化ビニルの耐久性、耐食性を加えた配管材で、空調設備では冷温水管などによく使われます。

銅管・ステンレス管

「銅管」は耐食性や加工性などに優れていて、空調設備では冷媒用配管によく使われます。

「一般配管用ステンレス鋼鋼管」は錆びにくく、耐食性、耐摩耗性などに優れていて、肉薄で軽量なのが特徴です。SUS304、SUS315J1、SUS315J2、SUS316の4つの規格に分けられています。一般的な給水、給湯、冷温水などの用途はSUS304を使い、より耐食性などが求められる場合はSUS315、SUS316が使われます。

架橋ポリエチレン管

住宅などの給湯の配管方式に「さや管ヘッダー工法」がありますが、この工法で使われる定番の配管材が「架橋ポリエチレン管」です。耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などに優れ、軽くて柔軟性があって扱いやすいので、最近では空調設備の冷温水管などに架橋ポリエチレン管が使われることも増えてきました。架橋ポリエチレン管はさや管で保温を兼ねて保護して使うのが一般的です。

架橋ポリエチレン管

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

目次をもっと見る

『空調・電設資材/電気材料』に関連するカテゴリ