照明のことが分かる講座

照明とは人々の生活に役立つ光の仕事のことを言います。 照明の主光源がLEDに変わりつつあるなか、照明を知ることで生活はより豊かに変わります。 そこで本連載では照明の基礎知識から光源や照明器具の種類、照明方式、照明がもたらす心理・ 生理効果を分かりやすくご紹介していきます。
第2章 光源の種類と特徴

2-12 無機ELと有機EL

ELとは

LED照明が普及しつつあるなかで、いまELが注目されています。ELはLEDの技術では難しいとされる、薄くてぎらつきのない面発光を特徴とする光源です。もちろんLEDでも「導光板」により、面で輝く商品が市販されていますが、ELほど薄くはなく、また光も均質性に欠けるものが少なくありません。

ELはelectro‐luminescence(エレクトロル・ルミネセンス)の頭文字をとった略称で、簡単に言えば電子発光を意味し、これには無機ELと有機ELがあります。

無機ELの用途

無機EL(以下無機分散型EL)は蛍光体に無機物(硫化亜鉛などの鉱物)が使われ、そこに電圧を加えて発光させます。有色または白色光が得られますが、電気を通す特殊なフィルムに蛍光体を含んだ層を印刷することで製作されるため、コストが安く大きな発光面を可能にします。(写真1、様々な発光色の無機分散型EL)

今のところ白色光タイプは演色性もまだ十分ではないため、一般照明用と言うより、サインや光るポスター、演出照明などの用途に限られています。

写真1 無機分散型EL

一般照明用としての有機EL

有機ELはすでにテレビやスマフォのディスプレーに使われていますが、それがELと気づかずに見ている人は少なくないと思います。

有機ELはプラスとマイナスの電極に発光する有機化合物を挟んだ構造になりますが、発光原理はLEDと似ているため別にOLED(Organic Light Emitting Diodeの略称)、またはオーレッドと呼ばれています。無機分散型EL同様、赤や緑、青色光などの有色光と白色光が出せます。

有機ELの発光パネルはガラスとプラスチック基板があり、紙のように薄い面発光であることから、プラスチック製は曲げたりすることで、今までにない照明器具のデザインが期待されています。

また透明板もあり将来的には窓ガラスへの応用も考えられ、昼間は自然光を取り入れ、夜は窓自体が発光する、などと言った新しい照明の実現も期待されています。(写真2)

写真2 ブラインド越しに発光する窓のイメージ

現在、有機ELの発光パネルは8~30cm角ほどの大きさが主で、それを複数枚配列して使用することで、ある程度の明るさが得られるようになっています。まだ高価なので一般向けと言うより業務用商品として徐々に浸透しつつあります。 有機EL製品もLED同様、年々発光効率を高めており、明るいものでは75~90lm/Wに達しており、近々100lm/Wを超える製品が市販される勢いです。

また有機ELは演色性も優れています。多くの製品が平均演色評価数でいえばRa90以上あります。そのため一般照明用光源として、その普及を高めるための商品開発が急がれています。

今のところ照射物が近距離にある場合や、また左程明るさを必要としない空間で、明るさより光の質を優先とする照明に最適視されていますが、いずれ住宅照明の主役になる可能性も秘めています。 現に2012年の「lighting and building」展(フランクフルトで隔年に開催される世界的規模の照明展)では、参考出品として住宅のリビングルームに見立てた空間を有機ELだけで照明されていたのを見ました。

有機ELメーカは2017~18年にかけて本格的な普及を目指しており、量産体制が整えば価格革命がおこり、様々なシチュエーションに次世代照明として期待されます。

図1は2009年度の資料ですが、2020年~2030年にかけて世界的にかなりの普及を予測しています。(図1)

図1 光源別世界照明器具予測

執筆: 中島龍興照明デザイン研究所 中島龍興

『照明のことが分かる講座』の目次

第1章 照明の基礎知識

第2章 光源の種類と特徴

第3章 LED照明器具の選び方

第4章 照明方式

第5章 照明の視覚心理・生理

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