照明のことが分かる講座
3-8 4つの配光別スタンド器具
スタンド器具(以下、スタンド)とは床や卓上に置いて使う器具のことで、前者をフロアスタンド(フロアランプと言う)、後者が卓上スタンド(テーブルランプとかデスクランプとも言う)になります。いずれも配線工事が不要で、近くにコンセントがあればどこにでも設置が可能なため使い勝手の良い照明器具です。
日本の住宅照明はシーリングライトのような天井照明で部屋全般を明るくすることに重点が置かれますが、欧米ではスタンドの使用が目立ちます。例えばアメリカのホームドラマをテレビや映画で見る機会があると思いますが、インテリアの照明にスタンドは欠かせないほどよく登場してきます。手元近くに置かれ、自分だけの光を提供してくれるスタンドは個人の生活を大切にする人たちにとって格好の照明器具なのかも知れません。
最近スタンドもLED化しており、様々な機能やデザインが開発されています。そこでスタンドを配光別に4つに分けてそれぞれの効果や使い方を次に考えてみます。
第一はグローブ型で、光は四方八方に放射して部屋を照らしてくれます。一般に乳白のカラス、もしくは光の透過性に優れたプラスチックでデザインされ、真球や楕円、円筒、角形が多いです。珍しいものでは星形や可愛らしい動物の形をした変形タイプもあります。また竹ひごをグローブ状に編み上げたものやそれに和紙を貼った和風スタンドもあります
グローブ形は部屋のコーナーに置かれることで、特に壁面が明るくなることで空間の明るさ感が得られます。また暗い部屋で使用すると眩しく感じることもあります。その場合は調光で少し暗くして使うか通常視点で直接目に入らない位置に置く、もしくは遮光して使うなどの工夫が求められます。(写真1)

(写真1) 観葉植物で遮光された真球形スタンド
第二にシェード型(笠付き)があります。ホテルの客室照明用としてよく使われています。住宅ではソファやベッドの横に置かれ、部屋の雰囲気を高めるほかに簡単な読書を楽しむ用途も期待できます。一般に円錐形や円筒形、四角錐の形状で、光は天井と机上または床面方向に放射します。シェードに使われる素材は外と内側が異なる場合、外が布製で白や黒、オレンジ、緑など様々な色が使われ、一方内側は光の透過性と反射に優れた乳白のプラスチック製が多いです。(写真2)

(写真2)シェード付き卓上スタンド

(写真3)見下ろしの視点で遮光されたスタンド
なお器具の置く位置が通常視点から見下ろせる場合は、シェード内のランプが直に見えないよう、上に遮光板の付いた器具を選びます。(写真3)
第三はリフレクター型です。おもに反射板やレンズが付いて作業面が明るくなる器具です。(写真4) 作業や勉強机に置かれる器具はデスクランプ、また明視スタンドと言われ机上面の明るいところで500ルクス以上の明るさが求められます。これらの器具の多くは光の広がりや明るさが視作業の内容に応じて変化できるようアーム式で、灯具の高さや照射角度が調整できる構造になっています。
今日ではLEDモジュール一体型器具が主力になっていますが、なかでも発光部がSMDチップ(低輝度のLEDチップを多数実装)のスタンドは手暗がりがマルチシャドゥになり目の疲労を高める原因になります。そこで長時間の視作業では発光部が一つのCOBタイプ、もしくはSDMに拡散レンズをつけ光を和らげた器具が奨められます。

(写真4) 反射板付きアームスタンド
明視(デスク)スタンドには図1のようなJISで定められたA形とAA形があり、用途に応じていずれかが選ばれます。(図1)
因みに写真2と写真4の一般型スタンド器具の照度を図2に示します。また写真5はLED16Wの調光可能なデスク器具で、フル点灯にすることでJIS照度AA形相当の明るさが得られます。

図1 JISのAとAA形の照度(スタンドの前方半径1/3円周上)

図2 LED電球用スタンドの概略照度(左が写真4で右が写真2の器具。いずれも光源高さが40cmである。)

(写真5) 調光機能付きAA形アームスタンド(100%点灯時)
最後にトーチ型ですが、この種の多くはフロアスタンドになります。日本ではあまり使われていませんが、おもに天井面を明るく照らして間接照明効果を高めるもので、明るい仕上げの天井面に優れた効果を発揮します。(写真6)

(写真6)トーチ形フロアスタンド
『照明のことが分かる講座』の目次
第1章 照明の基礎知識
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1-1光とは光には私たちの目に見える光と見えない光があります。太古の昔から人が見てきた光は太陽や星の光、そして火の光です。
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1-2照度のお話し照度とは光で照らされた場の明るさのことを言います。
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1-3光束と照度の関係一般照明用の白熱電球(普通電球とも呼ばれる)は40Wより60Wの方が明るいです。そのためW(ワット)数の高いほど「明るいランプ」と思われがちですが、例えば蛍光ランプの40Wは電球60WよりW数が低くとも数倍明るいです。 この例でもわかるようにW数は明るさを表す単位ではないのです。
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1-4照度の黄金比明るさ感は照度の高い低いだけではなく、照度対比によるところも大きいです。例えば写真1と写真2を見て下さい。
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1-5輝度とは街の明かりが届かない自然豊かな場所で、懐中電灯を夜空に向けて照らすと、まるでレーザービームのような一筋の光芒を見ることができます。
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1-6白色光源の色温度照明ではよく「白色光」と言う名称が使われます。太陽の光や青空光は白色光です。またキャンドルや白熱電球・蛍光ランプなどの人工光源も白色光を放ちます。
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1-7色温度を測定してみるとCIExy色度図(以下xy色度図)はCIE(国際照明委員会)によって承認された光色の表し方です。照明関係者だけでなく色彩の勉強をされている方にもおなじみの図表です。
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1-8演色性とはお店で見た肉や魚の赤身がおいしそうに見えたのに家で見たら少し違って見えた、という経験をされた方は少なくないと思います。
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1-9配光と配光分類一般照明用白熱電球(以下、普通電球)を点灯するとフィラメントを中心に四方八方へ360度にわたって光の放射していく様子がイメージできます。
第2章 光源の種類と特徴
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2-1白熱電球、その進化白熱電球は1878年アメリカのトーマス・エジソンによって発明された、と言われています。
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2-2豊かな種類を誇る白熱電球白熱電球を用途別に分類すると前回紹介したように一般照明用、投光照明用、装飾照明用に大別されます。
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2-3蛍光ランプ、その進化とプロセスいままで家庭やオフィス照明などで欠かせない 蛍光ランプ(熱陰極蛍光ランプ)は1935年アメリカの大手電気メーカであるGE(ゼネラルエレクトロニクス社)のインマンによって発明されました。
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2-4蛍光ランプの種類蛍光ランプを形状別に分類すると、おもに直管形、環形(丸形)、小型変形があります。
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2-5HIDランプの種類と性能HIDランプは高輝度放電ランプのことで「High Intensity Discharge Lamp」の頭文字をとった略称です。
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2-6LEDランプ、その進化プロセス今、照明=LED(発光ダイオード)と言われるほど、LEDがあらゆる空間の照明に注目されています。
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2-7LEDに関する用語の解説LEDに関する専門用語は多々ありますが、特にLED照明を理解するために必要な用語を整理して次に紹介いたします。
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2-8LED電球の種類LED電球(電球形LEDとも言われる)は白熱電球の代替になるLED光源で、口金の形状がE形(エジソンベース),B,GX53形のいずれかを備えたものを言います。
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2-9LED電球の選び方今日、一般照明用LED電球は多くの白熱電球用器具(以下、白熱灯)に使われています。そのなかで最近注目されているのが密閉対応型です。
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2-10直管形蛍光ランプ代替のLEDランプ直管LEDランプ(LED蛍光灯、直管形LEDなどともいわれる)とは直管形蛍光ランプの代替用途になるものです。
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2-11特殊照明用LEDランプ一般照明用のLEDランプ以外に特殊な用途を持ったLEDランプがあります。ここではその幾つかを紹介いたします。
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2-12有機ELと無機ELLED照明が普及しつつあるなかで、いまELが注目されています。ELはLEDの技術では難しいとされる、薄くてぎらつきのない面発光を特徴とする光源です。
第3章 LED照明器具の選び方
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3-1照明器具とその種類照明器具とは様々な素材を用いて光源とその点灯に必要な部品を安全に固定し保護したもので、電気的部分と光学的部分、および機械的部分からなります。
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3-2照明器具に使われる素材照明器具には様々な素材が使われていますが、その中でガラス、プラスチック、金属が3大素材と言われます。
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3-3日本の住宅照明に欠かせないシーリングライト1970年代、蛍光灯の普及によって日本の住宅照明には欠かせなくなった照明器具に大型のシーリングライト(以下、シーリングライト)があります。
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3-4ダウンライト器具の種類ダウンライトは天井に穴をあけて、そこに埋め込まれる器具です。したがって器具そのものの存在をあまり感じさせないで空間の明るさを得ることができます。
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3-5ダウンライトの選び方ダウンライトにはおもに全般照明用と局部照明用、壁面照明用の3種類があります。
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3-6ペンダントライト器具とは消費税が導入される前、個別消費税の一種で物品税がありました。これは主に贅沢品に課せられる税で、照明器具では一基に5灯以上のランプをもつ天井吊り下げ器具のシャンデリアが対象になっていました。
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3-7スポットライト器具の種類と選び方スポットライトを浴びるという言葉があります。これは大勢の人の視線を集める、注目されるという意味になります。
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3-84つの配光別スタンド器具スタンド器具(以下、スタンド)とは床や卓上に置いて使う器具のことで、前者をフロアスタンド(フロアランプと言う)、後者が卓上スタンド(テーブルランプとかデスクランプとも言う)になります。いずれも配線工事が不要で、近くにコンセントがあればどこにでも設置が可能なため使い勝手の良い照明器具です。
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3-9ブラケットと呼ばれる壁付け器具壁に直付けされる器具を一般にブラケットと言います。別にウォールライトとかウォールスコンスなどと呼ばれることもあります。
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3-10屋外用器具の種類屋外照明は道路、街路、広場などを安全な明るさにする目的で普及してきました。しかし今日ではそれに加えて夜の景観や雰囲気を高める照明が注目されています。
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3-11景観照明(ライトアップ)用器具夜、歴史的な建造物や土木的価値のある橋梁などが暗闇から明るく浮かび上がる様はとてもドラマチックで新たな空間の魅力を引き出す照明として、近年クローズアップされています。このような照明は一般にライトアップと呼ばれ、夜の風景に彩りを添える効果として期待されています。
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3-12間接照明とライン形LEDモジュール器具建築化照明とは建築の躯体に照明器具を内蔵して空間の明るさを得る手法です。様々な手法がありますがダウンライト照明が最も代表的な手法です。
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3-13調光・調色の制御方法照明の明るさを変えることはものの見え方と空間の雰囲気を変えることにつながり、人々の行動心理に与える影響は大きいです。
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3-14エネルギー消費効率の高いLEDランプLED照明が省エネになり電気代の節約になることは、今では周知のことと思います。
第4章 照明方式
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4-1全般照明と局部照明全般照明と局部照明は照明方式の一部で、どちらの方式をとるかで空間の雰囲気は大きく変わります。
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4-2タスク・アンビエント照明とはタスク・アンビエント照明は全般照明や局部照明と同じ照明方式の一部です。
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4-3直接照明と間接照明直接照明は天井に設置されたダウンライトやスポットライト器具などによって作業面や見せたい対象(視対象)を直接照らすため、照明効率が高く省エネ照明に寄与します。しかし一方で影が生じやすく、照射角度や配光によって生じる陰翳は人の顔や立体物の見え方を変えて見せます。
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4-4建築化照明と主な手法建築化照明については様々な手法があります。以前に「間接照明とライン形LEDモジュール」の項で一部触れましたが、今回は前回に説明していないものを含め10の手法を以下に紹介します。
第5章 照明の視覚心理・生理
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5-1視覚のメカニズム目は光によってモノを見ることができます。モノが何故見えるのか?その原理を「目から光が出ていて、目を開けたときだけモノが見える」と説いた古代の哲学者がいました。
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5-2目に優しい照明目を刺すようなギラつく光はその強さによって暴力的にもなり、眼を痛めます。日中の太陽光を直視すると危険です。
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5-3照度と視力の関係私たち日本人は北欧や北米諸国の人に比べると明るさの好きな人種のようです。
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5-4輝度と知覚効果輝度の高い光源や照明器具、窓明かりなどを直接目にすると、つい目を細めたり、まぶしすぎると手で光源を隠したりするような仕草をします。
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5-5色温度と照度の心理効果心理は効果の度合によって体調に影響することから、人の状態や行動に関わるために建築やインテリアなどの設計業務で活用されています。
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5-6光に関する脳の働き最近、照明の脳に与える影響が注目されています。