塗料・塗装の何でも質問講座

建築物や自動車など、私たちの周りにある多くのものは「塗装」されています。本連載では、主に塗装・塗料の欠陥と対策についてご紹介していきます。
第3章 いろいろな塗り方

3-5 直接法 ローラー塗り

ローラー塗り

ローラー塗りは刷毛塗りと工具が違うだけで、塗り方の基本は刷毛塗りと同じです。仕上がり面の平滑性は、はけ塗りに劣りますが、住宅の壁などの広い面積を塗るのに適しており、作業スピードは刷毛塗りに比べて3倍程度大きいようです。ローラー塗りに必要な工具は図3-20に示すローラーブラシとローラートレイから成ります。ローラーブラシに塗料を含ませ、トレイの網でしごき、被塗物に運びます。

図3-20 ローラーブラシとローラートレイの例

 

ローラー塗りの方法

図3-21 ローラーブラシ塗りの基本動作

図3-21(a)に示すように、入隅やローラーで塗れない箇所をすじかい刷毛で最初に塗っておきます。塗料を含ませるときは、ブラシの1/3~1/2くらいの深さまで塗料につけては網板の上をころがすという操作を数回くり返し、ブラシ全体に塗料を均一になじませます。

塗付けは図(b)に示すように、右上からまっすぐに降ろして来て、塗付け幅だけ左上に移動し、その後、まっすぐに降ろしてきます。この繰り返しで塗付け幅のパターンが重なり、被塗物面全体に塗料を配ることができます。次に、塗付けた塗料をすばやくならします。遅乾性塗料の刷毛塗りと同様に、配り方向と直交するように運行させます。最後は、刷毛目通しと同様に、ローラーの運行方向を一定にして、もう一度初めからローラーブラシを軽く押し当てて運行し、ローラーマークが均一になるようにします(図(c)参照)。ローラー塗りのコツはローラーを均一な力で回転させることです。ローラーの継ぎ部が凸にならないようにすることと、ローラーマークを均一に整えることで、良い仕上がり面が得られます。

 

ローラーブラシの種類

図3-22 モノタロウスタッフがまとめたローラーブラシ選択の指標

モノタロウが作成した図3-22に示す商品知識にまとめてあるので参考にしてください。ここには、ローラーハンドルに着脱するローラーカバーの大きさ(管径)と毛丈がローラーブラシを選択する指標になることを示しています。最も多く使用されているのが、中毛(毛丈13mm)のスモールローラー(長さ4、6インチ)です。

塗料の種類、被塗装面の形状、仕上がり面の模様等を考えて適切なローラーを選びます。一般に平らな面では短毛又は中毛のローラーを、凹凸のある面では中毛または長毛のローラーを用います。

 

ローラーブラシの洗い方と保管(図3-23参照)

図3-23 ローラーブラシの洗い方

使い終わったローラーブラシを新聞紙の上で転がし、塗料が付着しなくなったことを確認します。ローラーカバーをハンドルから外し、洗い用シンナーに浸漬します。水性塗料を使用したローラーカバーについては水中に浸漬します。この浸漬状態で、木べらを加工した半円形のくぼみを持ったヘラでナップ(ローラーの毛)に含まれる塗料をしごき出します。洗い用シンナーや水を替えながら洗い、短期保管では、塗料用シンナーに浸漬しておきます。長期間保管するときには、最後にラッカーシンナーで洗って、ナップにくせがつかないように立てて乾かし、保管します。

 

執筆: 川上塗料株式會社 社外取締役 坪田実

〔引用・参考文献〕
1)坪田実:“ココからはじめる塗装”、日刊工業新聞社、p.8-25(2010)
2)坪田実:“工業塗装入門”、日刊工業新聞社、p.12-13,29,31,34-35(2019)
3)中道敏彦、坪田実:“トコトンやさしい塗料の本”,日刊工業新聞社,p.47,51,52,53,55-59,63,81,83(2008)
4)辻田隆広:“第60回塗料入門講座テキスト”,p.179(2019)
5)坪田実:“目で見てわかる塗装作業”,日刊工業新聞社,p.8-24,102-104(2011)
6)職業能力開発総合大学校編:“木工塗装法”,職業訓練教材研究会,p.92-100(2008)
7)坪田実:“塗料と塗装のトラブル対策”,日刊工業新聞社(2015)
8)坪田実:“塗料と塗装の基本と実際”,秀和システム(2016)
9)杉崎勝久:表面,Vol.53,No.5(2002)
10)石井均:表面技術,Vol.61,No.3(2010)
11)平澤秀公:色材協会関東支部平成28年度塗料講演会テキスト,p.33-39(2016)
12)職業能力開発総合大学校編:“塗料”,雇用問題研究会,p.115(2007)
13)坪田実:塗装技術,2007年9月号,p.111-119,理工出版社
14)日産自動車、静電塗装用塗料及び静電塗装方法、特開1997-235496
15)ランズバーグ社マイティロボットベル2カタログより
16)佐藤正之、佐賀井武:第4回液体の微粒化に関する講演会講演論文、p.49(1975)
17)塗料報知新聞社:“粉体塗装技術要覧第4版”,p.72(2013)
18)森田忠夫:色材,Vol.85,No.7,297(2012)
19)柳田建三:塗装工学、Vol.51.No.9,297-302(2016)
20)川上塗料(株)解説資料

『塗料・塗装の何でも質問講座』の目次

第1章 塗料・塗膜の白化現象

第2章 塗料と塗装のことはじめ

第3章 いろいろな塗り方

第4章 塗料のルーツと変遷

第5章 塗料をより深く理解するために

第6章 こんな疑問あれこれ-塗装作業に役立つ知識

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