工具の通販モノタロウ 塗料・塗装の何でも質問講座 自動車補修塗装に必要な材料と器工具について(2)

塗料・塗装の何でも質問講座

建築物や自動車など、私たちの周りにある多くのものは「塗装」されています。本連載では、主に塗装・塗料の欠陥と対策についてご紹介していきます。
第2章 塗料と塗装のことはじめ

2-4 自動車補修塗装に必要な器工具について(2)

質問(20)

フェンダー部打痕部の板金修正が終わったら、次はどうするのですか。

答え(20)

打痕部面積の5倍程度大きく塗膜をはがし、鋼板素地を露出させます。図2-22に示すように、初めは小さく、順にはがす面積を広げて行きます。正常部の塗膜との境界部には後述するダブルアクションサンダーでフェザーエッジを作ります。

塗膜はく離の手順
図2-22 塗膜はく離の手順(3)

 

質問(21)

打痕部の塗膜をはがす必要は理解できますが、なぜ損傷部より約5倍も大きくはがす必要がありますか。

答え(21)

フェザーエッジを作るためです。図2-23を見てください。

板金成形作業のStep 1
図2-23 板金成形作業のStep 1(3)

大きくはがして、なだらかな傾斜のフェザーエッジを作ると、図2-24に示すパテ付けから始まる板金の成形作業がやりやすくなります。

車補修塗装の工程
図2-24 車補修塗装の工程

 

質問(22)

塗膜をはがすのにどんな器工具が必要ですか。

答え(22)

粗い番手の研磨紙(手研磨)やグラインダーで塗膜をはく離することはできますが、板金面は曲面やプレスラインがあるので、形状に追随できる回転パッドを有するディスクサンダー(図2-22)が便利です。ディスクサンダーには電動式とエア式の2種類がありますが、自補修用には図2-25に示すエアサンダー類圧倒的に多く使用されています。

エアサンダーの例
図2-25 エアサンダーの例

塗装現場にはエアコンプレッサーが常備されていることと、漏電の心配をしなくても良いからです。MonotaRO H.P. のカタログには、各種エアサンダーと研磨ディスク、パッド類が数多く掲載されていますから、参考にしてください。

 

質問(23)

図2-25を見ると、エアサンダーには回転方式が異なるシングルアックションとダブルアクションありますが、回転数はダブルアクションの方が高いですね。回転数も含め両者の使い分けをどのようにしたら良いですか。

答え(23)

基本的にシングルアクションは塗膜はく離用に、ダブルアクションはフェザーエッジ形成用に使用します。

塗膜はく離用には粗い番手の研磨紙を使い、大きな力が作用するシングルアクションを使うので高速回転は危険です。ターゲットよりも広くはがしたり、プラスチック部品に傷を付けたりする危険があります。

一方、ダブルアクションサンダーの作用力は小さく、高速回転でも研磨紙の砥粒と塗膜との接触時間が短くなるので、研磨傷は浅くなります。フェザーエッジ面は滑らかに仕上げたいので、研磨紙番手をはく離用よりも1ランク細かいものにして、高速回転させます。

 

質問(24)

サンダーの使い分けを厳しくしなければいけないのか、それとも、ダブルアクションで塗膜はく離をやっても良いのでしょうか。

答え(24)

まず、塗膜はく離面積が小さいときには、ダブルアクションサンダーで塗膜はく離をし、そのままフェザーエッジを作る方が効果的です。はく離面積が大きいときにはシングルアクションを使うと考えてください。ただし、シングルアクションサンダーでフェザーエッジを作ろうと思わないでください。サンダーの使い分けと、使用法のポイントを図2-26にまとめます。

ディスクサンダーの使い方
図2-26 ディスクサンダーの使い方

 

質問(25)

図2-22~図2-24に示すように、損傷部の塗膜をはがして、フェザーエッジを作ることが補修塗装の基本であることは理解できます。そうなると、サンダーの使い方が大切になりますから、基本的な取扱い方をもっと詳しく教えてください。

答え(25)

まず、塗面から離した状態でスイッチを入れ、回転数を調整します。次に、スイッチを切り、回転パッドを軽く押し当ててから、再びスイッチを入れてください。作業中は研磨面を確認しながら作業してください。エアサンダーではエア量が回転数に比例します。

 

質問(26)

フェザーエッジを形成後の工程作業は図2-24に示す通りだと思いますが、実際に作業をしていない者にとっても分かるように分かり易く解説をしてください。

答え(26)

了解です。次回では、図2-22に示すように、塗膜をはく離した板金面にパテ付けする作業からスタートします。板金修正作業により、鋼板素地には凹凸が残るので、これをパテで成形するためです。図2-24に示す補修塗装工程と、下側に描いた断面のイラストを理解するように努力をしてください。

 

執筆: 川上塗料株式會社 社外取締役 坪田実
〔引用・参考文献〕
(1)坪田実:”ココからはじめる塗装“, 日刊工業新聞社, p.79, 94, 95, 96 (2010)
(2)中道敏彦、坪田実:“トコトンやさしい塗料の本”, 日刊工業新聞社, p.75, (2008)
(3)坪田実:“目で見てわかる塗装作業”,日刊工業新聞社、p.72-91, 122 (2011)
(4)職業能力開発総合大学校編:“木工塗装法”、職業訓練教材研究会、p.77 (2008)

『塗料・塗装の何でも質問講座』の目次

第1章 塗料・塗膜の白化現象

第2章 塗料と塗装のことはじめ

第3章 いろいろな塗り方

第4章 塗料のルーツと変遷

第5章 塗料をより深く理解するために

第6章 こんな疑問あれこれ-塗装作業に役立つ知識

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