工具の通販モノタロウ 塗料・塗装の何でも質問講座 こんな疑問あれこれ-塗装作業に役立つ知識 6-4 溶接部がさびやすいのは、どうして?〔解答編〕

塗料・塗装の何でも質問講座

建築物や自動車など、私たちの周りにある多くのものは「塗装」されています。本連載では、主に塗装・塗料の欠陥と対策についてご紹介していきます。
第6章 クイズに挑戦

6-4 溶接部がさびやすいのは、どうして?〔解答編〕

公開日:2026年7月30日 | 最終更新日:2026年7月30日

1.解説ークイズ (1)

  (1) 溶接部がさびやすいことは、図6-7に示すように経験的に周知である。佐藤1)は溶接部の塗装を向上させるために、溶接部周辺のpHを克明に計測した。その時に使用した試験体とpHの結果を図6-8に示す。著者はこの研究成果を尊重しており、できるだけ多くの方に知ってもらいたいと考えている。(2) 溶接時に発生した "すす” の成分は炭素であり、溶接部周辺の鉄鋼表面に付着する。この炭素が空気中の酸素や水分を取り込んで、二酸化炭素、一酸化炭素、炭酸になり、pHは5.5付近で酸性を示す。このために溶接部がさびやすくなる。一方、溶接棒はフラックスと呼ばれるアルカリ性物質で被覆されており、溶接ビード部はアルカリ性を示す。

  よって、クイズ (1) の答えは図6-1に示すBである。

(3) 溶接棒の被覆剤は通称フラックスといわれ、主に石灰のようなものが採用されている。この石灰がアルカリ性を示す。「著者は以前、建築塗装の職人さんから、溶接部はアルカリ性になっているからシュウ酸で中和し、よく水洗してからプライマーを塗るようにと言われた。」 これは油性系さび止めペイント時代の話である。現在はエポキシ樹脂が主流だから、中和することに神経を使う必要はないが、一般にポリマーはアルカリに対して分解され易いので、酸洗い-水洗は大切である。ただし、酸や水が残っているとさびが発生しやすいので、溶接周辺部にエタノールやIPA(イソプロピルアルコール)を刷毛塗りし、水を揮発させることに気を付ける。

図6-7 溶接部周辺に発生したさびの事例
図6-7 溶接部周辺に発生したさびの事例
図6-8 溶接部周辺のpHを調べた試験体 1)
図6-8 溶接部周辺のpHを調べた試験体 1)

2.解説ークイズ (2)

  スパッターを残すと、凹凸が残り、外観が悪くなるが、これだけならば塗装効果は維持できる。一方、塗装面のスパッターに力が加わると、はがれる。はがれ面は素地鉄ゆえ、さびてしまう。これが一番の致命傷であるから、塗装前にスパッターを除去しなければならない。

  よって、クイズ (2) の答えはDである。

溶接棒はフラックスと呼ばれるアルカリ性物質で被覆されており、溶接ビード部はアルカリ性を示し、塗膜を劣化させるが、塗膜を溶かしたりはしない。

3.溶接部のスパッター除去とその効果

  スパッターの除去は次工程の作業に大きな影響をもたらす。例えば、次工程が電着塗装の場合、スパッター部分が残存すると、図6-9に示すように表面処理工程のリン酸亜鉛が乗らず、電着塗膜が析出しない。その結果、この塗装欠陥部が起点となって、さびが進行する。

図6-9 溶接後のスパッターの除去とその効果
図6-9 溶接後のスパッターの除去とその効果

4.溶接周辺部の防さび対策

  溶接部周辺のさび対策はスパッター除去と増し塗りをして、膜厚を増やすことで対応していることが多い。一例として、スカイツリーの溶接部の塗装仕様を図6-10に示す。一般部は4工程で合計膜厚は250μmを基準にしているが、溶接部は下塗りのエポキシプライマー塗りを1工程増やして、合計膜厚を330μmとしている。

図6-10 スカイツリーにおける溶接部の塗装仕様例
図6-10 スカイツリーにおける溶接部の塗装仕様例

執筆: 坪田 実

〔参考・引用文献〕
1) 佐藤 靖:塗装工学, Vol.20, No.7, 299-305 (1985)

『塗料・塗装の何でも質問講座』の目次

第1章 塗料・塗膜の白化現象

第2章 塗料と塗装のことはじめ

第3章 いろいろな塗り方

第4章 塗料のルーツと変遷

第5章 塗料をより深く理解するために

第6章 こんな疑問あれこれ-塗装作業に役立つ知識

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