工具の通販モノタロウ 塗料・塗装の何でも質問講座 自動車補修塗装工程について(2)

塗料・塗装の何でも質問講座

建築物や自動車など、私たちの周りにある多くのものは「塗装」されています。本連載では、主に塗装・塗料の欠陥と対策についてご紹介していきます。
第2章 塗料と塗装のことはじめ

2-6 自動車補修塗装工程について(2)

前回は、ポリパテ付け作業で終了しています。図2-11に示すStep 3とは、パテ面の研磨までを指し、車体面の成形作業の完成を意味します。今回は、工程Step 3の作業の進め方と、工程Step 4(プラサフ塗装・研磨)に至る操作を解説します。前回約束した上塗りのスポット塗りとブロック塗りの違いについては、次回に説明します。

車体成形と補修塗装のフローチャート
図2-11 車体成形と補修塗装のフローチャート

 

質問(34)

ポリパテの研磨作業を開始して良いかどうかをcheckするにはどうしたら良いですか。

答え(34)

ポリパテ面を爪で引っかいてみて、引っかかりがなく白い線傷が残るようであれば研磨できます。研磨もパテ付けと同様に基準面から基準面への研磨紙の運行が基本です。基準面から基準面への運行は線で面を作る要領です。この場合、図2-34に示すような当て木付き研磨布(紙)があれば便利です。

研磨用器工具の一例
図2-34 研磨用器工具の一例

パテ付けの場合、基準面から基準面への運行は図2-35に示すように一方向で良かったのですが、研磨はパテの場合より方向性に変化を付けます。

パテ付けと研磨の基本
図2-35 パテ付けと研磨の基本

その様子を図2-36に示します。上下方向の研磨は基準面間の移動が難しく、パテ面を余分に削り取る恐れがありますが、最終段階で数回、上下方向に軽く研磨し、ゆがみを消します。

研磨作業の進め方
図2-36 研磨作業の進め方

研磨の良否が仕上げ面に直接影響を及ぼすので、パテ成形が上手くできたかどうかを見極めることが重要です。それには作業者の触診評価が大切です。Key pointを図2-37に示します。

パテ成形良否の見極め
図2-37 パテ成形良否の見極め(1)

 

質問(35)

パテの研磨とその見極め方には繊細な神経が必要だと理解しました。むやみに研磨してはいけないのですね。ポリパテ面の仕上がり精度を上げるためにガイドコートをした方が良いよと聞いたことがあります。ガイドコートとは何か、どのように使うと良いのかについて教えてください。

答え(35)

まず、ガイドコートとは、ポリパテ面に残る小さな穴や傷を見つけだすために塗る塗料や粉体材料です。塗料としては、硝化綿ラッカー黒エナメルを通常の2倍以上に希釈したり、ラッカーエナメルの缶スプレー(シャーシブラックが良い)を使用します。一方、粉体材料としては、モノタロウの通販サイトにドライガイドコートがあり、これを図2-38に示します。

ポリパテ面の小穴発見法
図2-38 ポリパテ面の小穴発見法

ポリパテの研磨が終了しても、パテ面には小さな穴が残ることが良くあります。この穴をラッカーパテで埋めますが、目視観察では見落とすことが多いので、図2-36(1)粗落とし後のポリパテ面にガイドコートを吹付けたり、パッドで粉体を塗り付けます。

黒エナメルならば、5分程度で乾きますから、その後、図2-36(3)研磨終了まで研磨してください。図2-38には、ガイドコートを塗布した面と研磨した面を示しています。小さな黒点は凹部に溜まった塗料です。

図2-39に示すように、黒点部にラッカーパテを付け、ゴムべらでしごきます。乾いたら、P400か、P600で水研ぎします。

下地面のパテしごき作業-ラッカーパテによる穴埋め
図2-39 下地面のパテしごき作業-ラッカーパテによる穴埋め

 

質問(36)

研磨作業中にガイドコートを忘れることがよくあります。図2-36(3)研磨終了の後にガイドコートをしても良いですか。

答え(36)

パテ面を精度良く研磨仕上げをしたのに、ガイドコート後にまた研磨するのは不安だと思いますね。ガイドコート後に、P400、P600で研磨してもパテ面は殆ど研磨されません。ガイドコートだけが無くなりますから、図2-38に示すような黒点が出現します。

よって、パテ成形後にガイドコートを行っても大丈夫です。さらに、後述するプラサフ塗装、乾燥後にガイドコートをしてから研磨すると、小さな凹部も検出でき、図2-39に示すように、ラッカーパテで修正します。

 

質問(37)

パテ成形後には、図2-11に示すStep 4のプラサフ塗装・研磨工程になります。プラサフと言う材料とはどんなものかと言うことと、工程Step 4の目的を教えてください。

答え(37)

プラサフとは、プライマー(下塗り)とサーフェーサー(中塗り)の機能を兼備した塗料で、ヘラ付けするパテを吹付けで、できるようにした塗料だと思ってください。そして、プラサフ工程の目的はパテ面の凹凸を充てんして、平滑化と図2-40に示す膜厚の不足分をパテ面に加えることです。

プラサフの目的
図2-40 プラサフの目的

工程Step 4(プラサフ塗装・研磨)作業のKey pointをまとめておきます。

(1) 図2-41に示すように、3回に分けて吹付け、膜厚を付けること
(2) 平滑面を得ることが目的ですから、研磨はP600以上で水研ぎすること
(3) 研磨終点の見極めをすること。その見極め方法を図2-42に示します。

プラサフの吹付け手順
図2-41 プラサフの吹付け手順

プラサフ塗膜研磨の終点の見極め
図2-42 プラサフ塗膜研磨の終点の見極め

 

質問(38)

図2-39を見ると、プラサフ面にラッカーパテを入れていますが、これはどのような意味がありますか。

答え(38)

良く気がつきましたね。パテ成形後にガイドコートを入れないで、一気にプラサフ塗装まで工程を進めました。乾燥後にドライガイドコート(図2-38)を塗り、プラサフ塗膜を研磨したところ、巣穴や研ぎ足が見つかりました。そこで、図2-39に示すように、プラサフ塗膜にラッカーパテを入れてから、P600で水研ぎをしました。小穴ゆえ、研磨したラッカーパテは斑点のように残りますが、この上に上塗りしても大丈夫です。

上塗り後に小穴が見つかれば、納品できないことになりますから、プラサフ段階での小穴修正は必要・不可欠です。プラサフ塗膜の精密研磨作業の一例を図2-43に示します。

プラサフ面の精密研磨作業
図2-43 プラサフ面の精密研磨作業

1回目のガイドコートで見つけた微細な凹部にラッカーパテをヘラでしごきました(図(1))。ラッカーパテ面に図①に示すように2回目のガイドコートを塗ります。図(2)に示すように研磨パッドを使用し、P600で水研ぎし、異常がないかを調べます。このような操作を繰り返して、図(2)に示すように異常が無ければ、上塗りに進みます。

 

執筆: 川上塗料株式會社 社外取締役 坪田実
〔引用・参考文献〕
(1)坪田実:”ココからはじめる塗装“, 日刊工業新聞社, p.79, 94, 95, 96 (2010)
(2)中道敏彦、坪田実:“トコトンやさしい塗料の本”, 日刊工業新聞社, p.75, (2008)
(3)坪田実:“目で見てわかる塗装作業”,日刊工業新聞社、p.72-91, 122 (2011)
(4)職業能力開発総合大学校編:“木工塗装法”、職業訓練教材研究会、p.77 (2008)

『塗料・塗装の何でも質問講座』の目次

第1章 塗料・塗膜の白化現象

第2章 塗料と塗装のことはじめ

第3章 いろいろな塗り方

第4章 塗料のルーツと変遷

第5章 塗料をより深く理解するために

第6章 こんな疑問あれこれ-塗装作業に役立つ知識

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