工具の通販モノタロウ 塗料 塗料・塗装の何でも質問講座 塗料をより深く理解するために 5-5塗料用樹脂のはなし(2)

塗料・塗装の何でも質問講座

建築物や自動車など、私たちの周りにある多くのものは「塗装」されています。本連載では、主に塗装・塗料の欠陥と対策についてご紹介していきます。
第5章 塗料をより深く理解するために

5-5 塗料用樹脂のはなし(2)

公開日:2024年5月13日 | 最終更新日:2024年7月16日

3.エポキシ樹脂

3.3 主剤と硬化剤の配合計算について

3.3.1 エポキシ当量と活性水素当量

  主剤であるエポキシ樹脂(前回の図5-24)の両末端にはエポキシ基があり、硬化剤の有する活性水素Hと化学結合をして、クッキー塗膜を形成する。今回は主剤と硬化剤の配合量(重量)、あるいは配合割合の求め方を解説する。図5-29に示す主剤の役目をするパイプと、硬化剤の役目をする金具を用い、ジャングルジムを形成させたい。パイプの化学結合できる手(結合手)を白で、金具の結合手を赤で表す。まず、ジム形成に有効な結合は赤白の組合せのみとすると、赤と白は同数必要である。次のQ&Aから、主剤と硬化剤配合のヒントを得てほしい。

図5-29 当量配合の考え方
図5-29 当量配合の考え方

Q1.ジャングルジムを作るために必要なパイプと金具の個数を知りたい。しかし、樹脂では個数を読んで配合できない。どうするか?

A1.モルの概念から結合手の個数を数えることができる。全ての分子は1モルで、アボガドロ数N0の個数を有する。なお、N0 = 6.02×1023ヶである。赤と白は同数必要であるから、赤白を同モル、配合すればよい。

Q2.モル数と来ると、分子数のことだと連想できるが、赤白をそれぞれ同モル配合すると言う実践技術にたどり着けない。

A2.新用語として当量を紹介する。
当量とは、結合手1モルヶ当たりの分子量で、前回の表5-3に示すエポキシ当量は(1)式に示すように、エポキシ樹脂の分子量を2で除して求める。

エポキシ当量 = エポキシ樹脂の分子量/2 (1)

  エポキシ当量は化学分析でエポキシ基を定量して求める。エポキシ当量を2倍すると計算分子量Mcalが得られる。一方、GPC(ゲル透過クロマト)で求めた数平均分子量Mnと比較すると、分子量が1000程度以内であれば両者はよく一致するが、1000以上になると、Mcal>Mnとなる。
図5-29のイラストと説明文を見て、当量配合の概念を理解してもらいたい。

図5-30 塗料用変性ポリアミド樹脂の想像図
図5-30 塗料用変性ポリアミド樹脂の想像図

Q3.当量配合なる用語の意味から、主剤と硬化剤を配合する実践技術がおぼろげに見えてきた。事例を挙げて、具体的に説明してもらいたい。

A3.図5-29に示すジャングルジムのパイプ成分Aを前回の表5-3に示すn=0のエポキシ樹脂、金具成分Bをエチレンジアミン(EDA)として、ジャングルジムを作るためにA、Bをどれだけ配合するかを考える。金具BであるEDA(H2N-CH2-CH2-NH2)の分子量は60で、この中に活性水素Hが4モルヶ含まれているから、H1モルヶ当たりの分子量、すなわち活性水素当量は15になる。AとBの結合手(反応基)を同モル配合することを当量配合と称する。要は、A、Bをそれぞれ190g、15g採取して混合すれば、結合手を1モルヶずつ配合したことになる。配合割合で表す場合には、主剤100gに硬化剤を7.9gとなる。なお、活性水素当量のことをアミン当量とも呼ぶ。この様な用語をまとめて脚注に示す。

図5-31 エポキシ樹脂SとLが作るジャングルジムの違い
図5-31 エポキシ樹脂SとLが作るジャングルジムの違い

3.3.2 変性ポリアミド樹脂について

  エポキシ樹脂は剛直な分子構造で前述した活性水素当量15のEDA(低分子量アミン)で硬化させると、脆い塗膜になってしまう。塗膜には適度なたわみ性が必要なため、実用的には硬化剤として、活性水素当量500程度のポリアミド樹脂を使用したい。DIC発行の樹脂カタログに活性水素当量472のポリアミド樹脂(ラッカマイド N-153-1M-65)があったので、これをサンプルとして入手し、実験に使用した。塗料用のポリアミド樹脂ベースは不飽和脂肪酸の重合体からなり、末端に-COOHを有する。-COOHにEDAを反応させ、さらにアミド結合で連結させると、末端にはフリーのアミン(-NH2)を2モル付加できる。この様に著者が想像した変性ポリアミド樹脂モデルを図5-30に示す。樹脂モデルは活性水素を6モルヶ有するから、樹脂の分子量を(活性水素当量472)×6 = 2832と計算した。
  エポキシ樹脂には表5-3に示すS、M、Lを使用して、図5-30に示すポリアミド樹脂(活性水素当量472)と当量配合した。当量配合におけるエポキシ樹脂濃度の計算結果を表5-4に示す。エポキシ当量の増大はエポキシ樹脂の分子量の増大を意味しており、当量配合におけるエポキシ樹脂濃度がS、M、Lの順に増大する。パイプと金具で作るジャングルジムの形態がS、M、Lでどのようになるかを考えてみる。金具の役目をするポリアミド樹脂の分子量は一定で、エポキシ樹脂の分子量だけが変わるので、エポキシS、Lが形成するジャングルジムを描くと、図5-31のようになる。すなわち、パイプの長さがMではSの約2倍、Lでは約4倍、大きくなる。網目の緻密さはエポキシSで作る網目が一番緻密になる。網目の緻密さを比較する時に、架橋間分子量とか、橋かけ密度なる用語が活躍する。当量配合におけるエポキシとポリアミドの重量分率をそれぞれCE、CAとすると、架橋間分子量(橋かけ点間の平均分子量)Mcは次式で計算できる。

Mc = CE・(エポキシの分子量) +CA・(ポリアミドの分子量) (2)

計算結果は表5-4に示され、想像できるように、Mcはパイプの長さ(S、M、Lの順に大)と共に大きくなる。なお、Mcはモル質量と同じく、(g/モル)で表す。さらに、橋かけ密度はMcの逆数1/ Mcで比較することができる。(2)式で計算したMcは主剤と硬化剤の結合手が全て架橋反応したと仮定して求めている。次回には、Mcの実測方法を紹介し、実測値が(2)式の計算値とどの程度、相関するかを評価したい。Mcの実測値は表5-4に示されているから、比較されたい。

表5-4 エポキシ樹脂S, M, Lの違いによるジャングルジムの網目解析 6)

表5-4 エポキシ樹脂S, M, Lの違いによるジャングルジムの網目解析 6)

〔脚注〕実際の塗料用樹脂では、分子量や反応基の数が分からないことが多いから、化学分析をして樹脂1g当たりの反応基のモル数を求める。この値をKOHのmgに換算し、エポキシ価、アミン価、水酸基価(OH価)、酸価として表示する。樹脂を配合する場合には、エポキシ当量、アミン当量、OH当量の方が分かり易い。OH価からOH当量への換算については後述するアクリル樹脂のパーツで説明する。

〔謝辞〕ポリアミド樹脂_ラッカマイドを提供されたDIC株式会社様にお礼申し上げます。なお、樹脂の化学構造については著者の推定で記述しています。

執筆: 元川上塗料株式会社 社外取締役 坪田 実

〔参考文献〕
1)J. Glazer :J. Polymer Sci., 13, 355 (1954)
2)中道敏彦、坪田実:“トコトンやさしい塗料の本”, 日刊工業新聞社, p.117 (2008)
3)中道敏彦:“塗料の流動と塗膜形成”, 技報堂出版, p.241, p.267 (1995)
4)平山令明:“暗記しないで化学入門”, 講談社, p.29, 76 (2004)
5)北岡協三:“塗料用合成樹脂入門”, 高分子刊行会, p.140 (1979)
6)坪田実:“図解入門 よくわかる最新 塗料と塗装の基本と実際”, p.93-109, p.57, p.76-77, p.111, p.298-299, 秀和システム (2016)

『塗料・塗装の何でも質問講座』の目次

第1章 塗料・塗膜の白化現象

第2章 塗料と塗装のことはじめ

第3章 いろいろな塗り方

第4章 塗料のルーツと変遷

第5章 塗料をより深く理解するために

第6章 こんな疑問あれこれ-塗装作業に役立つ知識

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