塗料・塗装の何でも質問講座

建築物や自動車など、私たちの周りにある多くのものは「塗装」されています。本連載では、主に塗装・塗料の欠陥と対策についてご紹介していきます。
第1章 塗料・塗膜の白化現象

1-3 隠ぺい力に関する話題

質問(7)

実際の塗装作業においては、図1-10(b)に示すように、下地が透けるため何回も上塗りをしたことがあります。プラモデルを組立後、色つけ(塗装)の段階で、色むらが目立ち、どうも思った色に仕上がらないことも多々ありました。 原因は弱い隠ぺい力のせいだと気がつきました。隠ぺい力の弱い塗料を使いこなすテクニックがあれば教えてください。

図1-10 隠ぺい力の小さい上塗りによる補修塗装例

図1-10 隠ぺい力の小さい上塗りによる補修塗装例

答え(7)

前回の答え(6)にそのノウハウが含まれています。可視光線の散乱と吸収能力を併せ持つグレーゾーンの塗料を使いこなすことです。 なーんだ、グレーならばいつでも使っているよと言われるかも知れませんが、目から鱗です。 私の勤務していた学校では、実習を主体に授業をしていましたので、塗装と言えば車の補修塗装、木工家具や調度品の塗装、それとコンクリートの防水施工などを中心に展開していました。 今回、お見せするのは20年以上前に製作した教材車の塗装作品です。 JA損害調査(株)の石川順一氏はじめ皆様に協力頂いた賜です。  図1-10に示す車のBody全面を使用して、補修塗装の手順を紹介したり、新しい仕上げ方(当時はパールを初め、光輝性材料が盛んであった)の見本板にしたいとか、塗りのテクニックを見せたいとか、Body全面に夢を託しました。 その中で隠ぺい力の小さい塗料の対処方を取り上げようと言うことになり、図1-10(a)に示す1と3のパーツで表現する事にしました。順を追って説明します。

図1-10(b)で表現したいことは、プラサフの汎用色で下地づくりを終わらせると、黄エナメルを3回以上塗らないと補修前の色と同じにならないことです。 図1-11での下塗りはグレーでは無く、白と黒の塗装面で、隠ぺい力試験紙に相当します。 図1-10(b)と同じ黄エナメルと赤エナメルを塗るとどうなるかを見てください。 同様に3回塗っていますが、2色とも色味は下塗りによって左右されています。隠ぺい力の評価は明度を表すY値で評価します。 肝心のY値を計測していませんが、図1-11の目視状況は、白下地では明度が高く、黒下地では明度が低くなっています。とくに、黒下地では3回塗りでも黒が透けて見えます。恐らくグレーならば、完全隠ぺいになると思います。

赤エナメルについては上塗りと同系色の赤さび色(赤、白、黄、黒エナメルで調色)を下塗りに採用しました。この上に塗った赤エナメルの色味が完全隠ぺいした時の色を表しています。 要は、下塗りの明度を上塗りのそれに近づけることにより上塗りの隠ぺい力が補強されます。 下塗りの明度を上塗りに近づけることが、上塗りの隠ぺい力を補強するテクニックです。

図1-11 上塗りの隠ぺい力をカバーするテクニック

図1-11 上塗りの隠ぺい力をカバーするテクニック

質問(8)

理屈はよくわかりませんが、結果を見るとなるほどと納得できます。実際に下塗りと言うかプラサフを購入する場合、どのようにしたら良いかを教えてください。

答え(8)

やっと有用な質問が来ましたね。検索、情報収集までの手順を図1-12、13で説明します。

図1-12 プラサフ(下塗り、中塗り兼用塗料)検索の一方法

図1-12 プラサフ(下塗り、中塗り兼用塗料)検索の一方法

図1-13 プラサフ情報収集の例

図1-13 プラサフ情報収集の例

図中に示すように、(1)から(5)までをモノタロウサイトから調べることができます。図1-13に示す(5)3種類の商品表示 だけではよくわからないので、今度は、「ロックペイントのカタログを見る」をクリックして、塗料メーカのカタログを確認してください。 その結果、モノタロウサイトの3種類の商品の意味が理解できます。 図1-13に示すカタログ表示のアンダーカラーシステム配合表を見れば、白、黒2色のプラサフからでも明度の異なるプラサフが自由に調製できます。 塗料分野の配合表はすべて重量表示ゆえ、電子天秤は必需品になります。塗料容器を含めた重さを考慮すると、最大秤量値として3kg、感度は0.01gが欲しいところです。これまた、モノタロウサイトから調べることができます。

必要量が少量の場合、“プラサフ 1kg”と入力すれば、少量サイズのプラサフがある程度選択されて表示されます。同様に、 補足説明です。 図1-10(b)に示すプラサフのグレー色ですが、写真のものよりもっと明るいグレーを選ぶと、黄エナメルの隠ぺい力は補強されるはずです。グレーゾーンと隠ぺい力というテーマで皆様方が塗装業務に挑戦されることを期待しています。

執筆:川上塗料株式會社 社外取締役 坪田実

『塗料・塗装の何でも質問講座』の目次

第1章 塗料・塗膜の白化現象

第2章 塗料と塗装のことはじめ

第3章 いろいろな塗り方

第4章 塗料のルーツと変遷

第5章 塗料をより深く理解するために

第6章 こんな疑問あれこれ-塗装作業に役立つ知識

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