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工具の熱処理・表面処理基礎講座

本講座では、主要工具材料である工具鋼の種類と、それらに適用されている熱処理(主に焼入れ焼戻し)および表面処理(主にPVD・CVD)について詳細に解説します。
第4章 工具を対象とした表面処理の種類と適用

4-1 工具への表面処理の適用目的と効果

金属加工業界を取り巻いている課題は図1に示すように、加工技術に関するものと省資源・環境汚染対策があり、当然低コスト化も十分に加味しなければなりません。加工技術に関する課題としては、超精密加工、高速加工および対象材料の拡大があげられます。地球環境問題の点では塩素フリーの潤滑剤への転換、さらには省資源化対策も含めてセミドライ加工から完全ドライ加工への実現まで検討されています。例えば、DLCコーティングした金型によるドライ加工に関する研究も報告されており、近い将来には高強度材のドライ加工の実現まで可能と考えられます。

画像名

これらの対応策として工具には種々の表面処理が適用されるようになると考えられ、工具の形状や使用条件に適した表面処理の多様化が必須です。最近では、単独でなく複数の表面処理を組み合わせて利用する例もあり、これらは複合表面処理と呼ばれて、今後ますますその傾向は加速するものと思われます。例えば、表面熱処理とイオンプレーティングとの組み合わせでは、イオン窒化→TiNコーティング、Ni-Pめっき→DLCコーティングなどが顕著な例です。

すべての工具に要求される共通的な特性は耐摩耗性、摺動性および耐熱性ですが、工具の中でも金型はその種類が多く使用条件も多様ですから、表1に示すように個々の金型に要求される性質は様々です。耐摩耗性や摺動性など共通的なものもありますが、使用状況に応じた特異なものもあるなど、広範囲に及んでいます。表面処理適用の目的は、使用条件に適応できるべく金型表面を改善もしくは新たな特性を付加することであり、耐摩耗性、摺動性、離型性、耐熱性および耐食性の向上はとくに重要な項目です。

表1

  • 耐摩耗性
    耐摩耗性はすべての工具に要求される特性であり、表面処理採用の共通の目的です。とくに抜き型や絞り型など冷間成形用金型には絶対条件であり、基本的にはできるだけ高い硬さを得るべく表面硬化処理を適用すればよいことになります。

  • 摺動性
    摺動性は耐摩耗性以上に工具全般に重要な特性であり、とくに冷間鍛造型など冷間成形用金型への表面処理適用の最重要目的です。通常は加工時の摩擦係数を低減すべく潤滑油や固体潤滑剤が用いられていますが、表面処理は、さらなる摩擦係数の低減や潤滑剤の使用量を減らすことを目的として適用されています。

  • 離型性
    離型性とは、被加工材との反応や接着を生じ難くして、成形後の被加工品が容易に金型から離脱できることです。通常は離型剤を塗布していますが、離型剤使用不可の金型には加工材料との反応防止や摺動性付加に有効な表面処理が適用されています。

  • 耐熱性
    耐熱性とは、高温軟化し難いこと、高温酸化し難いこと、熱衝撃に対して強いこと、高温の溶融金属と反応し難いことを指しており、ダイカスト金型やガラス成形用金型にはとくに重要な項目です。高温軟化に関しては材料選定も併せて重要な要素であり、表面処理との組み合わせを十分に考慮する必要があります。

  • 耐食性
    耐食性はプラスチック成形用金型やゴム成形用金型にはとくに重要な特性です。腐食環境に強い表面層を得る必要があり、しかも表面欠陥を極力低減させること、基材としても耐食性の優れたものを選定すること、なども併せて考慮しなければなりません。

表面処理によって以上のような特性が付加されますから、表2に示すような適用効果が期待できます。すなわち、金型の長寿命化や短納期化など金型自身への効果だけでなく、寸法精度や加工面の改善など被加工物に対するものなど、多くの効果が期待されています。

表2

執筆: 仁平技術士事務所 所長 仁平宣弘

『工具の熱処理・表面処理基礎講座』の目次

第1章 工具に用いられる材料

第2章 炭素工具鋼、合金工具鋼の焼入れ・焼戻し

第3章 高速度工具鋼の焼入れ・焼戻し

第4章 工具を対象とした表面処理の種類と適用

第5章 PVD、CVDの種類と工具への適用

第6章 工具を対象としたPVD、CVDによる硬質膜の種類と適用

第7章 工具の損傷事例と対策

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