空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第1章 空調設備を学ぶ前に

1-6 日本特有の気候

日本は四季折々の自然や食べ物を楽しめる美しい国ですが、反面、気候の変動が激しく、季節風、台風、梅雨などの影響を受けます。 日本の多くは温帯に属しますが、地形が南北に長く、緯度の差が大きいことから、北海道の亜寒帯から南西諸島の亜熱帯まで、地域によって気候は異なります。また、山脈や山地の影響で日本海側と太平洋側で気候が大きく異なります。

室外の気候は室内の冷暖房といった空調負荷に影響を与える大きな要素です。空調設備を学ぶ前に、おおまかな日本の気候を把握しておきましょう。

北海道の気候

道南の一部を除いて北海道の多くは亜寒帯に属します。太平洋、日本海、オホーツク海、内陸の大雪山系や日高山脈などの影響で、地域によって気候が違いますが、 一般に、夏は涼しく、集中豪雨や雨が多くなる傾向がありますが、はっきりした梅雨がないとされます。また、太平洋側の海岸部では、霧の日が多くなります。冬は氷点下まで気温が下がり、全域が豪雪地帯です。 特に日本海側に雪が多く降り、太平洋側は晴れの日も多くなりますが、寒さが厳しいため、春まで根雪になります。

日本海側と太平洋側の気候

日本の多くの地域は日本海側、あるいは太平洋側気候に属しますが、これらの気候は季節風(モンスーン)の影響を受けるため、まず、季節風が吹くしくみを理解した上で、気候の特徴を把握しましょう。

季節風は季節によって同じ方向から継続的に吹く風のことです。夏は太平洋側からの南東の風、冬は大陸側からの北西の風が日本の代表的な季節風です。

例えば冬の寒い日、部屋の中のストーブに火をつけると、暖められた空気は上昇し、冷たい空気は暖かい空気に引き込まれるように対流を起こします。もっと大規模な自然現象になりますが、季節風が吹くしくみも対流によるものです。

夏は、太陽の日射熱を受けると、暖まりやすい大陸側の空気が上昇して、太平洋側から空気を引き込みます。この引き込まれる空気の流れが夏の典型的な季節風です。 夏の季節風は太平洋の水蒸気を多く含んでいるため、日本の太平洋側の地域は高温高湿となり、雨もよく降ります。一方、季節風が山脈を越えるとき、上昇する空気は多くの水蒸気を失うことになるため、日本海側の地域は比較的乾燥して高温になります。

冬の季節風は、夏と反対になります。海は陸に比べると暖まりにくく冷めにくい性質があるため、冷めにくい太平洋側の空気が上昇して、大陸側から空気を引き込みます。日本海の水蒸気を含んだ季節風によって日本海側の地域に雪が多く降り、太平洋側の地域は乾燥しがちになります。

内陸性の気候

中央高地ともいわれる、山梨県や長野県などに代表される気候ですが、海から離れているため、空気中の水蒸気量が少ないことから、通年、降水量は少ない傾向にあります。昼は太陽の熱で陸地が暖められて気温が上がり、夜は放射冷却で気温が下がります。 海から離れ、水辺が少ないので、気温の変動を緩衝しにくいことから、昼と夜、夏と冬の気温差が激しくなります。なお、内陸に限らず、山地、高地、盆地など、水辺と隔たりのある一定の地理的条件が揃うことで、日本の至る所に内陸性気候に似た気候は点在します。

瀬戸内の気候

通年、比較的降水量が少なく、気候が安定していているのが特徴です。夏の季節風は四国山地に遮られ、冬の季節風は中国山地に遮られます。季節風が山地を越えることで空気は多くの水蒸気を失い、降水量は少なくなりますが、内部の瀬戸内海が湿度や気温の変動を緩衝するため、安定した温暖な気候となります。

南西諸島の気候

熱帯と温帯の中間的な亜熱帯に属する地域といわれます。緯度が低いことから、冬でも平均気温は高くなります。夏は暑いイメージがありますが、海に囲まれ、風通しもよいため、35℃を超える猛暑日は少なく、暑すぎることはありません。年間の気温差が少なく、降水量は多く、台風の接近数が多い地域です。

執筆:イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

目次をもっと見る

『空調・電設資材/電気材料』に関連するカテゴリ