空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第7章 換気設備

7-7 換気扇の種類

換気を行う機器にはさまざまなものがあります。ざっくりとひとくくりにいえばすべて「換気扇」ですが、使用場所や用途などに応じてさまざまな換気扇があります。たとえば軸流式の換気扇の代表的なものに一般換気扇、パイプ用ファン、有圧換気扇などがあり、遠心式の換気扇の代表的なものにダクト用換気扇、レンジフードファンなどがあります。なお、全般換気で使われる全熱交換器も換気扇の一種です。全熱交換器については後述します。

軸流式の換気扇

空調設備で使う送風機などと同様に、換気設備で使う換気扇にも軸流式や遠心式などの送風機(ファン)を使います。

軸流式の換気扇で最もわかりやすいものは、プロペラファンを使うタイプの換気扇で、「一般換気扇」や「標準換気扇」といわれる換気扇です。壁に取り付けるタイプが一般的です。屋外側のシャッターが風圧や電気的な連動で開閉されるしくみになっていて、使用していないときは、空調の負荷を増大させないため、あるいは害虫などを侵入させないためなどから外気を遮断するしくみになっています。

パイプ用ファンは一般住宅のトイレ、洗面など、狭い空間の換気によく使われる小型の換気扇です。人感センサーや湿度センサーと連動して運転するものなどさまざまなタイプがあります。

有圧換気扇は風量が大きくパワーがあります。そのため外の風などの影響で室内と室外に圧力差がある場合でも安定して換気できます。工場、店舗、倉庫、学校、公衆トイレなど、業務用の換気扇としてよく使われます。農業、畜舎などに特化したタイプの有圧換気扇もあります。

換気に使われるダクトの経路が長くなる場合の中継用、あるいはダクトの分岐点など使われる「中間ダクトファン」には、軸流式や遠心式と軸流式の中間的な構造の斜流式のファンが使われます。

軸流式の換気扇

遠心式の換気扇

遠心式の換気扇のわかりやすいものは、一般住宅のキッチンでよく見られる「レンジフードファン」です。多くは中にシロッコファンを内蔵しています。最近では調理の煙や熱などを感知して、自動で省エネ運転をするものなどもあります。

キッチンのレイアウトプランや天井の高さなどによって、深形、浅型、センターフード形、サイドフード形など、フードの形の選択肢があります。また、壁付け、横壁付け、天井付けといった取り付けタイプの選択肢も豊富です。一般的によく見られるのは壁付けタイプですが、アイランドキッチンのように壁から離れたキッチンでは、天井付けのセンターフード形などが使われます。

遠心式の換気扇

外壁に面していないトイレ、洗面所、一般住宅のリビング、オフィスなどでは、天井に取り付けて天井裏のダクトと接続する「ダクト用換気扇」が使われます。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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