空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第6章 個別暖房と直接暖房

6-1 暖房の方法

暖房の方法

暖房の方法を大きく分けると個別暖房と中央暖房に分けることができます。中央暖房は直接暖房、間接暖房に分けられ、さらに直接暖房は蒸気暖房、温水暖房、放射暖房に分けられます。

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個別暖房とは

個別暖房には石油ストーブ、石油ファンヒーター、カーボンヒーター、ハロゲンヒーター、オイルヒーターなど、さまざまな暖房器具があります。設備というよりは単体の暖房器具のことで、部屋ごとに熱源を置いて暖房する方法が個別暖房です。

古くからの日本人の生活を考えてみても「火鉢」、「いろり」、「こたつ」など、個別暖房との関わりは深く、欠かせないものです。寒冷地の住宅の場合、後述するセントラルヒーティングを導入する例もありますが、一般的な小規模な住宅では今でも個別暖房がよく利用されます。

個別暖房の暖房器具にはいろいろなタイプがあります。部屋の足元など、ごく一部を局所的に暖めるようなタイプの暖房器具や部屋全体を均一に暖める目的で設置する暖房器具もあります。また、熱の伝わり方で暖房器具のタイプを分けることもできます。熱の伝わり方には「伝導」「対流」「放射(輻射)」三種類があるので、おおまかに分けると暖房器具もこの三つのタイプに分類できます。

伝導は個体内部を移動する熱の伝わり方です。たとえばホットカーペットなどは伝導の特性を生かした暖房器具です。対流は空気自体が熱を帯びて、温められた空気は上へ、冷たい空気は下へ循環する熱の伝わり方です。石油ストーブや石油ファンヒーターなどは対流による暖房器具です。放射(輻射)は空間を伝わる電磁波によって熱を伝えます。オイルヒーター、パネルヒーター、ハロゲンヒーターなどは放射による暖房器具です。なお、実際には伝導や放射による暖房器具でも緩やかな対流が起こるような場合もありますので、厳密に伝導、対流、放射に分類できない暖房器具もあります。

中央暖房とは

中央暖房(セントラルヒーティング)はボイラなどの集約された熱源から複数の機器に熱媒を供給する方式です。大規模な建物ではこの方法がよく使われます。

直接暖房とは

中央暖房に含まれる直接暖房とは、室内に置かれた放熱器で蒸気や温水の熱媒供給を受けて放熱して暖房する方法です。放熱方式としては対流暖房と放射暖房があります。

対流暖房には室内の空気を自然対流させる方法と、放熱器からのファンで機械的に温風を送り、強制対流させる方法があります。直接暖房の蒸気暖房や温水暖房がこれらの対流暖房を行う方法です。放射暖房は床暖房などが一番わかりやすい例で、空間を伝わる熱を利用した暖房方法です。

なお、間接暖房はあらかじめ加熱された空気をダクトなどで室内に送る方法です。今まで学んだ単一ダクト方式などはこの間接暖房ともいえますので、間接暖房については触れないことにします。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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