工具の通販モノタロウ 空調設備の基礎講座 エネルギーを共有する地域冷暖房

空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第5章 空調設備と省エネ

5-13 エネルギーを共有する地域冷暖房

地域冷暖房とは

建物の給湯や冷暖房に必要なエネルギーを建物ごと個別に考えるよりも、複数の建物でエネルギーを共有した方が効率的という考え方があります。つまりエネルギーを地域全体で大規模に共有しようという取り組みが「地域冷暖房」です。

地域冷暖房は集約したエネルギーの供給プラントから蒸気、温水、冷水といった熱エネルギーを供給します。エネルギー源としては、再生可能エネルギーや未利用熱エネルギーを有効活用できます。また、コージェネレーションを組み合わせて熱と電気を供給することもできます。日本で初めて地域冷暖房を導入したのは大阪の「千里中央地区」です。また、日本で初めて地域冷暖房に地中熱を利用したのはスカイツリーでお馴染みの「東京スカイツリー地区」です。これらの地区の他、全国140箇所以上で地域冷暖房の導入例があります。

地域冷暖房

地域冷暖房を導入するメリットは?

地域冷暖房を導入するメリットは個別の建物では設備投資面などでなかなか利用に踏み切れない再生可能エネルギーや未利用熱エネルギー、雪氷熱といった地域特有のエネルギーを地域ぐるみで協力して導入できることです。他のメリットとしては熱源をひとつの建物に集約できることです。たとえばオフィスビルなどの建物個別で給湯や冷暖房を賄おうとすれば、空調方式などにもよりますが、その建物にはボイラや冷凍機といった熱源機器を置くスペース、冷却塔を置くスペースなどが必要になりますが、地域冷暖房を利用する各建物にはそれらのスペースがいらないので、その分の屋上や地下のスペースを駐車場にするなど、有効利用することができます。また、地域冷暖房は地域ぐるみで大規模に省エネに取り組むことができるので、大気汚染やヒートアイランドといった環境問題に地域ぐるみで向き合えるメリットもあります。

空調設備と省エネについて考える

第5章の「空調設備と省エネ」もまもなく終わりです。何気ないことですが最後に玄関ドアについて考えてみようと思います。

建物に入ろうとしたとき、だいたいは玄関ドアから建物に入ります。玄関ドアは意匠面で見ても機能面で見ても重要な部分ですが、空調設備の側面から違った見方をすると、少し厄介な部分ではあります。

人の出入りでドアは開きますが、このとき夏なら暖かい空気、冬なら冷たい空気も人と一緒に入ってきます。また、湿気なども大量に室内に入ってきます。せっかく建物を快適に空調してもドアが開く度に大きなエネルギーロスになります。

特に多くの人が出入りするビルなどでは要注意です。吹き抜けのある高層ビルなどでは、玄関ドアから流入する外気による温度差や気圧差によって、吹き抜けで上昇気流が起こり、建物内のドアが引っ張られたり、逆に押されたりといったドラフト現象が起こることもあります。たとえば二重扉の構造にして扉と扉の間を風除室にするなど、外気の流入を最小限に抑えるような工夫が必要になります。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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