工具の通販モノタロウ 空調設備の基礎講座 太陽熱の利用(パッシブソーラー)

空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第5章 空調設備と省エネ

5-4 太陽熱の利用(パッシブソーラー)

パッシブソーラーとは

前述した水式や空気式ソーラーシステムのようにポンプやファンなど、なんらかの機械的な動力を使って太陽の熱を利用するソーラーシステムのことを「アクティブソーラー」ともいいます。これから解説する「パッシブソーラー」は機械の動力に依存しないで建物自体の構造や間取りなどの建築的な工夫で太陽の熱をうまく取り入れようというシステムのことです。英語でPassive(パッシブ)の意味は受動的ということで、受け身、消極的といったマイナスのイメージもありますが、パッシブソーラーのパッシブは積極的に太陽熱を取り入れようというプラス思考の解釈でいいと思います。

ダイレクトゲイン

太陽からの日射熱をタイルやレンガなどの蓄熱体に蓄えて放熱によって暖房します。例えば石などで面積も大きく、熱容量も大きい物質は温まるのに時間はかかりますが、一旦、温まるとなかなか冷めません。ダイレクトゲインでは昼間に熱容量の大きい蓄熱体に熱を蓄えて熱伝達時間の遅れを利用して夜間の暖房に利用します。

トロンブウォール

窓ガラスの内側にコンクリートなどの蓄熱体(トロンブウォール)を設置して、蓄熱体から遅れて出る放射熱を利用して夜間の暖房に利用します。基本的な考え方はダイレクトゲインと同じですが、窓ガラスと蓄熱体の間で起こる上昇気流を利用することで室内に対流を起こして効果的に暖房効果を得るような工夫もできます。ただし、暖房効果を得ることに限って考えると一定の効果が期待できますが、壁につくる蓄熱体が日差しや景色も遮るので、蓄熱体の設置場所には気を使うところです。

付設温室

付設の温室(サンルーム)に熱を集めて、その熱を室内にも取り込む方法です。温室で園芸を楽しむなどと合わせて考えると利用価値は十分にある暖房対策です。ただし、夏は付設温室の室温が高くなりすぎることも予想できるので、遮熱、換気、通風といった熱を逃す対策は不可欠です。

エアサイクル

エアサイクルとは外壁を二重構造にして空気層を設け、自然対流を起こして暖気や冷気を循環させるシステムです。夏は蓄冷(地冷熱)を循環させて遮熱すると同時に、建物上部の開口部から熱を逃がします。対して冬は蓄熱を空気層に循環させて熱を外に逃がさないようにして室内に取り込みます。エアサイクルでは、空気をうまく循環させるための原動力を地中熱とする方法や、前述した付設温室を原動力とさせるなどの組み合わせも可能です。

なお、外壁を二重のガラスで覆ってガラスとガラスの間の温室空間の対流とガラスからの放射熱を利用した冷暖房の方法にダブルスキンがあります。考え方としてはエアサイクルのシステムをコンパクトに窓際に集めたイメージです。夏は高温になった空気を上部の開口部から排気し、冬は開口部を閉じて空間内の熱を室内に取り込みます。大規模な建物などでもペリメータゾーンの温熱環境改善にダブルスキンを採用する例も見られます。

太陽熱の利用(パッシブソーラー)

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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