工具の通販モノタロウ 空調設備の基礎講座 建物の断熱性と熱容量

空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第1章 空調設備を学ぶ前に

1-5 建物の断熱性と熱容量

主な断熱工法

建物では室外の熱が壁、窓、屋根、床などから室内に移動するのと同時に、室内の熱も室外に移動します。 この熱の移動を軽減するのが断熱の目的です。主な断熱工法の種類としては、木造や鉄骨造(S造)の「充填断熱工法」や「外張り断熱工法」、鉄筋コンクリート造(RC造)の「内断熱工法」や「外断熱工法」があります。

「住まいは外断熱がいい」など、断熱工法に優越をつけたがる人もいるかもしれませんが、それぞれの工法は一長一短があります。例えば、木造の充填断熱工法と外張り断熱工法を比べてみましょう。

充填断熱工法の場合、柱などの部材間の隙間を利用する断熱なので、壁の厚さを抑えることができますし、グラスウールを充填するのであれば比較的ローコストです。ただし、充填断熱工法は部材間に断熱材を充填する工法上、部材(木材や建築金物など)がヒートブリッジ(熱橋)になるリスクはあります。

外張り断熱工法の場合、躯体の外側を断熱材で包み込む工法です。壁の中にできる部材間の隙間に配線や配管を納めやすい、施工後の確認がしやすいなどの利点があります。 また、断熱材が部材で切れることがないので、内部結露やヒートブリッジのリスクは少ない工法といえます。ただし、工法上、壁の厚さが増す傾向にあり、一般に、施工コストは充填断熱工法より高くなります。

断熱は決められた工法に縛られる必要はありません。例えば、屋根と床を外張り断熱にして、壁は充填断熱にするといった複合断熱も可能です。断熱工法は、断熱材の種類、施工コスト、建築の工法、その土地の気象条件、建物の用途など、さまざまなことを考慮して選定します。 いずれの工法でも綿密な計画で確実に施工すれば、十分な断熱性を得られるはずです。

断熱材の種類

建物で使われる断熱材にはさまざまな種類がありますが、おおまかに分類すると「鉱物繊維系」と「発泡プラスチック系」があります。

鉱物繊維系の断熱材は、「グラスウール」や「ロックウール」など、ガラスや天然鉱物を繊維状にしたものです。主な長所は、比較的安価で普及率が高い、防音・吸音性がある、充填断熱工法に適する、特にロックウールは耐熱・耐火性に優れるなどです。 ただし、鉱物繊維系の断熱材は湿気を含むと断熱性が低下するので、防湿層で湿気を入れない、通気層で湿気を逃がすなど、施工上の注意を要します。

発泡プラスチック系の断熱材は、「ポリスチレンフォーム」や「硬質ウレタンフォーム」など、プラスチック系材料を発泡させたものです。価格としては鉱物繊維系よりやや高い傾向にありますが、湿気に強い、結露防止効果が高い、材料の厚さに対して断熱性能が高いといった特徴があります。 その他の利点としては、形状がボード状なので外張り断熱や外断熱に適する、硬質ウレタンフォームは現場吹き付け発泡ができるので、気密性の高い断熱施工ができるといった利点があります。

建物の熱容量

熱容量とは、物体の温度を1K(ケルビン)上げるのに必要な熱量のことですが、あまり難しく考えずに、建物における熱容量とは、熱を吸収して蓄える能力と考えてよいでしょう。

厚いコンクリートの壁は、暖まるのに時間がかかりますが、一旦、暖まるとなかなか冷めません。つまり、熱容量が大きいといえます。対して熱容量が小さい薄い鉄板の壁は、すぐに暖まりますが、冷めるのも速いです。

建物は断熱性と熱容量のバランスを考慮します。例えば熱容量が小さく断熱性も悪い建物は、冬に暖房をフル回転させてもなかなか部屋が暖まらない上に、暖房を停止するとすぐに室温が低下します。 夏に冷房をフル回転させても同様で、なかなか部屋が涼しくならない上に、冷房を停止するとすぐに室温が上昇します。断熱性と熱容量のバランスが悪いと、エネルギー効率の悪い不経済な建物になってしまいます。

執筆:イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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