空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第7章 換気設備

7-5 ハイブリッド換気

ハイブリッドな換気システムの例

前述したように換気には自然換気と機械換気がありますが、近年では両者を併用するハイブリッドな換気システムもあります。ハイブリッドな換気システムでは、風の圧力差を利用した風力換気、あるいは空気の温度差を利用した重力換気といった自然換気を積極的に取り入れつつ、自然換気だけでは補えない面は機械換気で補うようにします。

たとえば風力換気を利用したハイブリッドな換気システムの一例としては、室内外の温度差や室外の風の状況などを感知するセンサーを取り付けて、自然換気と機械換気のバランスをコントロールするなどといったことが可能になります。

重力換気を利用したハイブリッドな換気システムの例としては、一般住宅やビルなどの吹き抜け、階段室などの空間を上昇する煙突効果を利用する例も考えられます。煙突効果による換気は風が無くても換気効果を得られるので、十分な高さが確保できる屋内のハイブリッドな換気システムを構築する上では有効な手段となります。

ハイブリッドな換気システム

より高い換気効果を期待するための工夫

ハイブリッドな換気システムで、より高い換気効果を期待するためには、吹き抜けをつくるなど、建築物そのもののつくりにも工夫が必要になるため、設計段階から綿密な計画が必要となります。

たとえば上の図の換気システムより、さらに高い換気効果を期待する設計の例としては、煙突効果にクールピットやクールチューブなどを組み合わせたハイブリッド換気も考えられますし、実際にそのような施工例もあります。

より高い換気効果を期待するための工夫

話が少し横道にそれますが、日本の古くからの家屋、古民家などを観察すると、夏を涼しく過ごすために換気という観点から施されたさまざまな建築的な工夫が見られます。たとえば断熱性や通気性に優れた茅葺き屋根、日差しを遮る十分な軒の出、吸湿性や断熱性に優れた竹子舞の土壁などです。また、排煙という観点では、薪や木炭を囲炉裏や火鉢などで燃やした煙を、通気性のいい茅葺き屋根から排出させる排煙システムが完成していました。ついでに煙によって染み付く匂いや成分によって建物全体の防虫効果や建材の保護に一役買うということですから、なるほど、よく考えられたシステムです。

当時の家と現代の高断熱高気密の家とでは建材や建物のつくり自体が違いますし、生活様式や気候も変化していますので、単純な比較は難しいですが、日本の風土にあった建物とはどのようなものか、あるいは省エネなどを踏まえて考えたとき、昔の家のつくりから見習うところは多いのかもしれません。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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