工具の通販モノタロウ 空調設備の基礎講座 吸収式冷凍機の冷凍サイクル

空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第3章 熱源と主要機器

3-4 吸収式冷凍機の冷凍サイクル

吸収式冷凍機とは

前述した圧縮式冷凍機は内部に容積式や遠心式の圧縮機を持つことが特徴でしたが、吸収式冷凍機は内部に圧縮機を持たずに化学的な冷凍サイクルで冷却するタイプの冷凍機です。圧縮式冷凍機と比べると圧縮機を持たない分、総じて騒音や振動が少なく音が静かです。また、動力負荷が少ない分、消費電力も少なくなるので省エネといえます。

空調で使われる吸収式冷凍機は、水・臭化リチウム吸収式冷凍機ともいわれ、冷媒には水が使われ、蒸発した水を吸収する吸収液には臭化リチウム(LiBr)が使われます。冷媒はフロン類ではなく自然冷媒の水なので環境に配慮されていますが、吸収液の臭化リチウムについては強い腐食性があるなどから、設備の入れ替えなどの際は専門業者に依頼して適切に抜き取って処分する必要があります。

吸収式冷凍機の冷凍サイクル

吸収式冷凍機の内部は主に蒸発器、吸収器、再生器、凝縮器で構成されています。冷凍サイクルは蒸発→吸収→再生→凝縮を繰り返すことで冷却を維持します。

吸収式冷凍機の冷凍サイクル

吸収式冷凍機の冷凍サイクル



以下に吸収式冷凍機内部の各機器がどのような働きをして冷却を維持するのかを説明します。

  • 蒸発器
    通常の気圧では100℃が沸点の水も、圧力が下がれば沸点も下がります。蒸発器の内部は真空に近い低圧になっているため、冷媒の水は4?5℃程度が沸点となって蒸発します。このとき冷水と熱交換することで、冷水の熱を奪って冷えた冷水は空調機へ送られます。蒸発した冷媒は吸収器へと送られます。
  • 吸収器
    蒸発器から送られてきた水蒸気の冷媒は、冷却水と熱交換して冷却水に熱を与えます。水蒸気は再生器から送られてきた臭化リチウムの吸収液(濃溶液)に吸収されて薄められた吸収液(稀溶液)になります。
  • 再生器
    再生器では吸収器で薄められた吸収液を加熱して、吸収液と冷媒を分離させます。水蒸気になった冷媒は凝縮器へ送られ、吸収液は加熱されたことで濃溶液となります。この濃溶液は再び吸収器へ送られて水蒸気を吸収して稀溶液になり、再生器に戻って濃溶液に戻る循環を繰り返します。
  • 凝縮器
    再生器から送られてきた冷媒の水蒸気は冷却水と熱交換することで冷やされて液化します。元の液体に戻った冷媒の水は再び蒸発器へ送られ、熱を帯びた冷却水は冷却塔で熱を放出した後、再び吸収器へ送られます。

以上の蒸発→吸収→再生→凝縮の繰り返しが吸収式冷凍機の冷凍サイクルです。なお、吸収式冷凍機には単効用や二重効用などがあります。単効用とは図1で示すような再生器を一つ持つ吸収式冷凍機のことです。対して二重効用とは高温と低温の二つの再生器を持ちます。二つの再生器を持つ理由は冷媒の蒸気の熱を再利用して吸収液の濃縮や冷媒の再生をより高効率化するためです。加熱に必要とされる熱量を減らすことができるので単効用に比べて冷却塔を小さくできるなどの利点もあります。なお、近年ではさらに高効率な三重効用の吸収式冷凍機もあります。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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