工具の通販モノタロウ 空調設備の基礎講座 空調設備と環境問題

空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第5章 空調設備と省エネ

5-1 空調設備と環境問題

今の家と昔の家



「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪え難き事なり」



これは680年以上前に書かれた兼好法師の徒然草の一節です。口語訳すると「家は夏の暑いときのことを考えてつくるのがいい。冬はどんな所でもなんとかなるけど、暑いときのつくりの悪い家は耐えられない」といったところです。この一節は昔の人の家と家を取り巻く環境についての考え方をうまく表現しているように思います。

例えば古民家といわれるような日本の伝統的な昔の家屋を観察すると、夏を涼しく過ごすさまざまな工夫が見られます。断熱性や通気性に優れた茅葺き屋根、日差しを遮る十分な軒の出、吸湿性や断熱性に優れた竹子舞の土壁など、昔の人の賢さと建築技術の高さにつくづく感心してします。冬は囲炉裏や火鉢などで火を焚いて暖を取ります。室内で煙が出ても、茅葺き屋根から煙が排出されるように造られた家なので、冬は火を焚けばなんとか凌げた時代だったのでしょう。

今と昔ではエネルギー事情も変化し、生活スタイルも違うので、現代の建物を一概に否定はできませんが、高断熱、高気密が主流な現代の建築様式が日本の風土に合った建物として相応しいのか疑問に感じるところもあります。「省エネ」を考えたとき、徒然草の一節のような昔の生活スタイルから学ぶことも多いように思います。

空調設備と環境問題

近年、環境問題や人口増加などの問題もあって、省エネへの関心も高まり、空調設備にも省エネが求められる時代になりました。環境問題とは地球規模で平均温度が上昇する「地球温暖化」であったり、都市部が周辺地域に比べて高温になる「ヒートアイランド」であったりといった現象です。

環境問題は人口の急激な増加とも直結する問題です。200年ほど昔は10億人程度だった世界の人口が、現在は70億人を超えるまでに膨らみ、世界的に見ると今後も人口が増え続けると予測されています。人口増加による食料、水、エネルギー資源の不足は今後、人類が直面する深刻な問題になりそうです。先進国だけが省エネしても問題は解決しませんし、根本的な問題解決には何か別の手段が必要かもしれませんが、少なからず省エネは今すぐ誰もが心がけなければならない最優先課題のように思えます。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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