空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第4章 熱搬送設備

4-12 配管工事の注意点2

管の支持

配管の支持は天井のスラブに打ち込まれたインサート金物から吊り支持したり、鉄骨を利用して専用の金物で吊り支持したり、コンクリート壁面にアンカーを打ち込んで三角ブラケットなどで支持したりといったように、現場の状況や建物の構造などによって支持方法はさまざまです。屋上や厨房の床など、防水が施された床の上に配管する場合は、アンカーなどで防水面を傷めることができないため、専用の架台を置いて転がし配管する場合もあります。

例えば鋼管でよく使われる配管用炭素鋼鋼管(SGP管)の比較的小口径な1インチ(25A)サイズのメーター当たりの重量は2.4kg程度です。大規模な空調設備では継手や支持のための部材などを含めると配管系統全体の重量は相当なものになるのが想像できると思います。配管の支持は基本、その重量に耐えられ、地震や振動に耐えられるものにしなければなりません。一定間隔で振れ止めも必要です。

吊り支持の例

吊り支持の例



熱で伸縮する管の支持

冷温水管などは内部の温度が高くなれば管は膨張し、低くなれば収縮します。熱による伸縮量が大きいと予想される配管の場合、配管を完全に拘束してしまうと伸縮の逃げ場がなくなってしまい、内部の応力に耐えられなくなって管が破損する恐れがあります。このような配管の場合、ローラーで配管をスライドさせる「ローラー支持」という方法がとられます。伸縮したとき、管内部の応力の逃げ場になるのが「伸縮継手」です。ガイドは変位を管の軸方向に制限するもので、熱による伸縮が予想される配管系統の場合、一定の間隔で伸縮継手とガイドが設けられます。

ローラー支持の例

ローラー支持の例



配管のメンテナンス

空調設備の配管が詰まればシステムは正常には作動しません。冷温水管や冷媒管の内部に不純物が詰まって空調の効率が低下したり、あるいは不純物を吸い上げてポンプが機能しなくなったり、ボイラが燃焼しないといったことも考えられますし、ドレン管が詰まって水漏れを起こすといったトラブルも考えられます。

配管系統の要所にはストレーナーなど、内部を循環する流体のろ過装置がついているので、ストレーナーを清掃するなどの定期的なメンテナンスは当然しますが、それでも長年の使用によるサビの一種のスラッジや汚れなどの不純物が堆積することがあります。そのような頑固な不純物を除去するときは、専門の業者に依頼して配管を洗浄してもらうことになります。

一般論として、空調設備の寿命は15年程度といわれますが、配管系統はメンテナンスをしっかりして、なるべく健全な状態で長く使いたいのが本音です。ボイラ、ポンプ、空調機などの複雑な機器はいつか寿命が来て入れ替えが求められますが、機器の入れ替えに合わせて、その都度、配管を入れ替えるのは経済的ではありません。配管自体は複雑なものではないので、しっかりメンテナンスすれば複雑な機器より長く使えるはずです。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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