空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第4章 熱搬送設備

4-1 送風機の種類と特長

モーターを回転させて空気に運動エネルギーを与えて送り出す装置が送風機(ファン)です。送風機は空調機(エアハンドリングユニット)の中に組み込まれたり、ダクト内の中継で使われたり、冷却塔に使われたりなど、空調設備には欠かせない機器です。その使用目的は、より遠くへ空気を送り出すため、空気を撹拌や循環させるため、放熱や換気のためなど、さまざまです。

送風機は、遠心式送風機、軸流式送風機、斜流式送風機、横流式送風機に大きく分けられます。

遠心式送風機

ファンの軸方向から空気が入り、軸に対して直角に空気を送る送風機を遠心式送風機といいます。要は遠心力で風を送る機器です。代表的なものはシロッコファン、リミットロードファン、ターボファンなどです。

シロッコファンは回転方向に対して前向きの複数の羽根がついていて多翼送風機ともいわれます。分かりやすいところでは台所のレンジフードファン、居室や浴室などの天井埋め込み型の換気扇などでよく使われます。シロッコファンは空調や換気など、最も幅広く使われる送風機です。

遠心式送風機

遠心式送風機



リミットロードファンはシロッコファンとターボファンの中間的な送風機で、運転動力にリミット性が備わっていて、風量が規定以上になっても軸動力に過負荷が起こらないような設計がされています。

ターボファンは高速ダクトなどでも使われ、高効率な送風機です。回転方向に対して後ろ向きの強度の高い羽根がついていて、効率よく空気を送り出せるように設計されています。

軸流式送風機

軸方向から空気が入り、軸方向と平行に空気を送り出すタイプの送風機が軸流式送風機です。例えば、一般住宅などで見かけることが多い壁付けの一般換気扇(プロペラファン)などは、分かりやすい軸流式の送風機です。

軸流式の送風機はケーシング、モーター、羽根車などで構成されていて、空調設備のダクトの中継や冷却塔の放熱用などでも使われる送風機です。小規模なものからトンネル内の吸排気などの大規模なものにも使われます。

軸流式送風機

軸流式送風機



斜流式送風機・横流式送風機

軸方向から空気が入り、軸に対して斜めに空気を送り出す送風機が斜流式送風機です。遠心式と軸流式の中間的な構造になります。一般に騒音が少なくコンパクトで、ダクトの中継用ファンとして多く使われます。

軸を巻き込むようにして空気が流れる送風機が横流式送風機です。ラインフローファンやクロスフローファンなどともいわれます。横あるいは縦方向に幅広く空気を送り出すのに適していて、ファンコイルユニットや家庭用のルームエアコンなどでも使われるタイプの送風機です。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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