工具の通販モノタロウ 空調設備の基礎講座 自然排煙方式・機械排煙方式

空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第7章 換気設備

7-10 自然排煙方式・機械排煙方式

換気設備に機械換気と自然換気があるように排煙設備の排煙方式にも「自然排煙方式」と「機械排煙方式」があります。

自然排煙方式

自然排煙方式は機械的な動力を使わずに煙の浮力を利用して排煙する方式のことです。火災が発生したときに、外に面する窓やガラリなどの排煙口を開放させて排煙します。この方式のメリットは機械的な動力に依存しないので、停電時でも機能することです。あるいは、ダクトが不要で常時は換気として利用できるなどのメリットもあります。ただし、室外の風や室内外の温度差などの影響を受けるため、安定した排煙効果は期待できません。煙の流れを意図的にコントロールするのが難しいため、特に高層ビルなどでは自然排煙は採用されません。また、外に面する排煙口から建物に沿って上階へ火災が延焼するリスクもあります。

自然排煙の場合、一般に、防煙区画の最大床面積は500 m2以下とされていて、排煙口から防煙区画までの水平距離は30m以下とされます。防煙垂れ壁は、耐火性能のある梁、熱割れを防ぐ網入りガラスなどが利用されますが、防煙区画として有効な垂れ壁にするには天井から50cm以上突き出す必要があります。

排煙口の取り付け位置は、天井高さが3m未満は天井から80cm以内に取り付けます。天井高さが3m以上は床面から2.1m以上、かつ、天井高さの1/2以上が排煙に有効な部分になります。なお、排煙口を開けるための開放装置は、手動開放装置を設け、壁付けの場合は、床から80cm以上1.5m以下の高さに取り付けます。

自然排煙方式

機械排煙方式

機械排煙方式とは、文字通りですが、機械的な動力で排煙する方式のことです。排煙の方法として、押し出し排煙方式、加圧排煙方式、空調で使うダクトやファンなどを排煙設備として兼用する方式などがあります。排煙口、排煙ダクト、手動開放装置、排煙機などから構成されます。

自然排煙方式と比べると、煙の流れや排煙風量などをコントロールできる。あるいは、直接外気に面していない区画や地下室なども計画的に排煙できるといったメリットがありますが、ダクトやダクトスペースが必要になりますし、停電などに備えて予備電源が必要になるなど、システムが複雑になる分、コストも高くなりますし、保守管理も必要になります。

避難経路の計画

機械排煙方式だけでなく、自然排煙方式にも共通していえることですが、火災の際、避難方向に煙が追いかけてくるようでは避難が難しくなるので、避難する方向と煙が流れる方向が反対になるように避難経路を確保します。

排煙機の位置は、煙の流れがスムーズになるようにダクト系統の最上部に設置するのが普通です。高温の煙が排気されるので、常識的に排煙機の周りには可燃物を置かない。あるいは近隣の建物に近い位置に排煙機を置かないようにします。なお、一般的な機械排煙方式は排煙機で煙を吸引しますが、加圧防煙システムのように廊下、付室、階段室といった避難上、あるいは消防隊の活動上重要な室に給気して圧力差で煙を防ぐ方法もあります。消防法上では加圧防排煙設備といいます。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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