空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第4章 熱搬送設備

4-5 ダンパの種類

ダンパにはいくつかの種類があります。VD、MD、CD、FD…などの記号(呼称)で表記されることが多いです。空調設備に関わらない人には音楽を再生するプレーヤーか何かの記号かと思うかもしれませんね。

例えば建物の中の給水設備を考えてみると、給水の配管ルートには水の流れを止めたり、逆流を防ぐために弁類が使われます。分かりやすく見えるところでいえば、蛇口も弁の仲間のようなものです。給水設備では弁類が無ければ、水は流れっぱなしです。

空調設備のダンパは給水設備でいうところの弁類の働きをします。ダクト内の風量の調整や開閉などの目的でダンパは使われます。用途によって求められる機能は違いますが、以下に代表的なものを取り上げます。

風量調整ダンパ(VD・MD)

風量調整ダンパ(VD:Volume Damperボリュームダンパ)は手動のハンドルで羽根を動かして空気の流れる量を調整するシンプルな構造のダンパです。なお、同じ風量調整ダンパで、羽根を手動ではなく電動モータで制御、遠隔操作するタイプのものをモーターダンパ(MD:Motor Damper)といいます。

風量調整ダンパ

風量調整ダンパ(VD)



防災用に使われるダンパ(FD・SFDなど)

防災の用途でもダンパは使われます。建物で火災が発生した場合、ダクトを伝わって火災が広がるのを防ぐ必要があります。防火ダンパ(FD:Fire Damper ファイアーダンパ)はダンパ内部に溶解温度が設定された温度ヒューズが内蔵されていて、火災時にダクト内を通過する空気の温度が異常に上昇すると、温度ヒューズが溶解して羽根が閉じるようになっています。炎や煙の拡大を抑える目的で設置される建築基準法上の区画のことを防火区画といいますが、FDは防火区画を貫通する部分に使われます。防火ダンパに使われるヒューズの溶解温度は、一般には72℃程度のものが使われますが、給湯室や厨房などの排気温度が高いダクトには溶解温度が120℃程度のものが使用されます。

防火ダンパ(FD)

防火ダンパ(FD)



煙感知器との連動で作動するダンパを防煙ダンパ(SD:Smoke Damper)といいます。FDの機能に加えて煙感知器との連動で羽根が閉じる構造の防煙防火ダンパ(SFD:Smoke Fire Damper)もあります。SFDは熱と煙の両方を感知して作動するダンパです。空調や換気設備の観点からは外れますが、排煙ダクトの防炎区画を貫通する部分に使われる排煙用防火ダンパ(HFD)もあります。HFDの場合、温度ヒューズの溶解温度は煙で反応しないように高い温度設定になっていて、280℃程度のものが使用されます。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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