空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第1章 空調設備を学ぶ前に

1-4 結露の発生と防止対策

結露の発生

窓ガラスが水滴で曇ったり、冷たい飲み物を入れたグラスに水滴が付いたりなど、日常で「結露」の現象を見ることがあるかと思います。中学校の理科で習うような内容ですが、結露が発生するしくみをおさらいしてみましょう。

空気は気温によって含むことができる水蒸気の量(飽和水蒸気量)に限度があります。気温30℃では空気1m3中に約30.4gの水蒸気を含むことができますが、10℃では約9.4gといったように、気温が下がると飽和水蒸気量は少なくなります。

例えば、気温20℃で相対湿度60%とすると、1m3中に約10.5gの水蒸気を含んでいることになります。この状態から気温を下げていくと、約12℃のところで、これ以上は水蒸気を含めない状態になります。 この水蒸気が飽和状態になった空気の温度を「露点温度」といい、さらに温度を下げていくと余剰分が水滴となり、結露します。

気温の変化で空気中に含みきれなくなった水蒸気が水に姿を変える現象が結露です。冬で考えると、窓ガラスは外気で冷やされ、暖房で温められた水蒸気を含む空気が冷たい窓ガラスに触れて結露します。夏に冷たい飲み物を入れたグラスが結露するのも同様の理屈です。

結露しやすい場所

建物においては、家具の裏、押入の中、窓ガラス、サッシ部など、温度差が生じやすく、表面温度が上がらない場所が結露しやすい場所です。なお、結露は冬に発生するイメージが定着していますが、地下に面した壁や床、冷房使用時など、条件が揃えば夏でも結露します。

結露には「表面結露」と「内部結露」があります。窓ガラスなど、日常、私たちが目にする結露は表面結露です。一方、壁の内部に室内からの湿気が入り込んで結露させるなど、日常、目にすることのない結露が内部結露です。 内部結露は建物にとってやっかいで、湿気が柱や壁などを腐らせ、カビ、ダニ、シロアリなどが好む環境をつくるおそれがあります。

「ダンプハウス」とは湿気た家という意味ですが、現代に多い気密性の高い住まいは、適切に断熱、換気しなければ、湿気が停滞してダンプハウスになるおそれがあります。 たかが湿気と思うかもしれませんが、湿気によって躯体が蝕まれれば、建物の強度に影響を与えますし、衛生害虫が室内空気を汚染して、人体に深刻な健康被害を及ぼすこともあります。大切な住まいをダンプハウスにしないために、結露の発生しやすい場所を知り、その防止対策を実践しましょう。

結露の防止対策

結露の防止対策としては、1.湿度の抑制、2.空気の流れの制御、3.断熱の強化などが有効です。

1. 湿度の抑制

建物においては、人の呼吸、調理、風呂やシャワーの利用、観葉植物や洗濯物など、水蒸気の発生源はさまざまですが、空気中の水蒸気量を減らして湿度を抑制することは結露防止に有効です。

人の呼吸を抑制することはできませんが、少なくともキッチンや浴室など水蒸気が多く発生する場所は換気を怠らないようにし、室内を除湿して適正な湿度を保つようにします。

加湿器や除湿機を含め、何らかの空調機器で機械的に湿度を一定に保つのも選択肢の一つですが、まずは湿度に関心を持つことが肝心です。部屋に湿度計がないという人もいるかもしれませんが、リビングや寝室など、長く居る場所には湿度計を置いておきたいものです。

2. 空気の流れの制御

空気の流れが悪くなり、停滞すると結露しやすくなります。外気の影響を受けやすい外壁に面する壁や壁の入隅部に家具を設置しないようにし、設置する場合は風通しがよくなるように壁との間に隙間を開けるようにします。

押し入れは外壁に面する壁に配置しないようにするなど、設計上の配慮も必要です。簡単な対策としては、物を詰め込みすぎない、「すのこ」を利用するなど、物との間に空気の通り道を確保することが肝心です。

冬は窓ガラスからの冷気を遮るためにカーテンを閉めることがあるかと思いますが、結露という観点でいえば、カーテンを閉めるとガラスとの間の冷気を停滞させて結露を促進させてしまう場合があります。根本的には窓自体の断熱を強化するのが最善です。

3. 断熱の強化

温度差が結露の原因となるので、断熱を強化することは結露防止に有効です。冬の暖房時に室内側の壁の表面温度が低くならないように断熱強化します。特に窓は熱の出入りの多い所となるので、断熱性の高い複層ガラスにする、樹脂サッシにするなども有効です。比較的安価な後施工としては、二重窓となる内窓を取り付ける方法もあります。

押し入れは外壁に面する壁に配置しないようにするなど、設計上の配慮も必要です。簡単な対策としては、物を詰め込みすぎない、「すのこ」を利用するなど、物との間に空気の通り道を確保することが肝心です。

執筆:イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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