空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第6章 個別暖房と直接暖房

6-2 暖房器具の選び方

どの暖房器具が自分に合うのかを考える

一般住宅などでよく使われる個別暖房の暖房器具をざっと羅列してみます。エアコン、石油ストーブ、石油ファンヒーター、ハロゲンヒーター、カーボンヒーター、セラミックファンヒーター、ガスファンヒーター、オイルヒーター、薪ストーブ、ペレットストーブ、こたつ、暖炉、囲炉裏、蓄熱式暖房機、シーズヒーター、ホットカーペット、電気毛布など、数えきれないほどの種類があります。

さて、ここで自分にとってベストな暖房器具を選ぼうとしたとき、種類が多い上に、いろいろなタイプがあるので頭を悩ませてしまいます。部屋全体を暖めるタイプにするか、局所的に暖めるタイプにするか、自然対流にするか、強制対流にするか、放射式にするか、燃料は灯油にするか、ガスにするか、それとも電気にするか、はたまたランニングコストを考えるとどの製品がいいかなど、考えれば考えるほどどの暖房器具が自分に合うのかさっぱり分からなくなってしまいます。結局、考えるのが面倒になって、夏も冬もエアコン付けっぱなしという方もいるかもしれません。都心のマンションなどではそれはそれで選択肢の一つではあります。

たとえば、炎の揺らめきを楽しみながら暖をとるのがたまらなく好きだという人にとって一番満足できる暖房器具は「薪ストーブ」かもしれません。ただし、都心のマンションで薪ストーブを使うことは現実的に無理ですし、薪ストーブを使うにはそれなりの住環境や薪を調達する手間や保管する場所など、さまざまなことを考慮して薪ストーブの導入を検討することになると思います。

囲炉裏で料理を楽しみながら古民家で暮らしたい。という人には「囲炉裏」がベストな暖房器具かもしれませんし、こたつでみかんを食べながらテレビを見るのが幸せという人にとっては「こたつ」がベストな暖房器具です。

つまり何がいいたいかというと、ライフスタイルや価値観などは千差万別なので、暖房器具を選ぶときに万人に共通してお勧めできる正解のようなものはないということです。結局のところ突き放したいい方になってしまいますが、自身の経済事情、ライフスタイル、価値観などに合った暖房器具を選ぶしかないと思います。

ただし、暖房器具に省エネ、効率、環境などを考えたりするのであれば、ある程度の知識は必要です。必要な知識については本講座でこれまで解説してきたので、ここで詳細には触れませんが、たとえば、窓際のコールドドラフトを防止するために窓際に適切な暖房器具を置く、ペアガラスなどで窓の熱通過を考慮するなどによってペリメータゾーンの環境を整える。部屋全体を暖める器具と局所的に暖める器具を組み合わせる、対流、伝導、放射の暖房器具の特性を組み合わせるなど、特製の違う暖房器具を組み合わせることによって効率良く部屋の暖房を行う。建物自体の断熱性や気密性などを考慮する。寒冷地と温暖地では暖房器具に求める能力も違うので、最低限、住環境に見合った暖房器具を選択するなど、暖房器具を選ぶ上で知っておきたい知識はたくさんあります。

「冷えは万病のもと」ともいいますし、この機会にどの暖房器具が自分に合うのかを考えてみるのもいいかもしれません。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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