空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第7章 換気設備

7-3 自然換気

換気には「自然換気」と「機械換気」がありますが、ここでは自然換気について解説します。自然換気は給気と排気に機械的な動力を使わない換気で、風力や温度差といった自然の力を利用する換気のことです。

風力換気とは

風力換気は風の圧力差による空気の流れを利用した換気方法です。たとえば、ある空間に二つの開口部(窓)があるとします。この二つ開口部に圧力差がある場合は圧力の高い方から低い方へと空気が流れます。つまり、外からの風が建物の一方の壁面に当たると、風上側の空気が正圧(+)になります。一方、風下側は負圧(-)になります。この風の圧力差を利用した換気の方法を風力換気といいます。

風力を利用した換気にベンチュリー効果を利用した換気などもあります。たとえば図のように、通り抜ける風の流れを絞って風速を増加させることで、圧力の低い部分が生まれる現象のことをベンチュリー効果といいます。このベンチュリー効果による吸引作用を利用して室内の空気を排気することもできます。

風力換気とは

温度差換気とは

空気に温度差がある場合、空気は冷たい方から暖かい方へ流れます。この温度差による空気の流れを利用した換気方法のことを温度差換気といいます。なお、温度差換気のことを重力換気や浮力換気ともいいます。

温度差による空気の流れがどのようにつくられるのかをもう少し掘り下げて考えてみましょう。温度の高い空気は軽く、低い空気は重いのは常識です。これは空気の密度によるもので、暖かい空気は膨張して密度が低くなるので比重が軽くなって上昇し、反対に温度の低い空気は密度が高いので比重が重くなって下降します。冷たい方から暖かい方へ空気は流れるのは、温度の低い空気が高い空気の下に潜り込む動きをするからです。

温度差換気の換気量は、温度差があるほど、二つの開口部に高低差があるほど多くなります。ある部屋に二つの開口部があるとします。冬の暖房時と仮定すると、冷たい外気は建物下の開口部から入り、室内の暖房で暖められた空気は上方へと流れて上の開口部から排出されます。このとき室外と室内の温度差は大きいほど換気量は多くなりますし、二つの開口部の高低差があるほど換気量は多くなります。

温度差換気とは

薪ストーブなどで使われる煙突は、燃焼によるガスの排出を目的にするもので、換気というより排煙の設備ですが、温められた空気の上昇気流を利用するという意味では温度差換気の原理と同様です。実際に、高層ビルの吹き抜けなどの空間を利用して、温度差による煙突効果で効果的に換気を行うような例もあります。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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