工具の通販モノタロウ 空調設備の基礎講座 タスク域を快適にするタスク・アンビエント空調

空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第5章 空調設備と省エネ

5-11 タスク域を快適にするタスク・アンビエント空調

タスク・アンビエント空調とは

オフィスビルのデスクワークのように居住者が長く一定の場所に滞在するようなケースでは、従来の空調方式のように空間全体を均一に快適する考え方ではなく、限られた空間を快適にすることを考えた方が省エネ面で効果的な場合もあります。

居住者が長く滞在する場所を「タスク域」といい、比較的滞在時間の短い場所を「アンビエント域」といいます。タスク域とアンビエント域を分けて空調を行い、タスク域を効率的に空調することで、全体として省エネを計ろうという空調方式が「タスク・アンビエント空調」です。なお、電気設備の照明に関する用語で、局部(タスク)照明と全般(アンビエント)照明を組み合わせた照明方式のことを「タスク・アンビエント照明」といいますが、同様の考え方の空調版がタスク・アンビエント空調です。

仕事の形態にもよりますが、オフィスビルのデスクワークなどでは、1日の労働時間の大半をデスク周辺のタスク域で過ごすこともあり得ます。このようなケースではタスク域を重点的に快適にすることは肝心といえます。反対にアンビエント域については短時間の利用となるか、あるいは天井付近などは手の届かない空間になるので、必要以上の快適性を求める必要はありません。とはいえ、あまりに極端な温度差は、たとえばヒートショックなどの恐れもありますので注意は必要です。冷房時の場合でいえば、アンビエント域は快適と感じる室温よりやや高め、具体的には28℃程度に設定して、タスク域はそれより1~2℃低い快適な温度域に設定します。

タスク・アンビエント空調

タスク・アンビエント空調

人が快適と感じる範囲には若干の個人差がありますが、タスク・アンビエント空調ではタスク域の空調を個人の好みに合わせて設定できるので、個人差による不快感を解消できます。ただし、気流が強すぎたり、気流が直接体に当たり続けたりすると人は不快と感じるので、微風速のやさしい気流に設定する、直接気流を体に受けないようにするなどの設定の工夫は必要です。

前述したように照明方式にもタスク・アンビエント照明という考え方がありますが、人感センサーと連携させてタスク域に人が居ない場合はアンビエント域の空調と照明はそのままに、タスク域の空調と照明を同時に停止するといったこともできるので、照明と空調を絡めたきめ細やかな設定も可能です。なお、タスク域の空調については床や天井からの吹出しや、机やパーティションに吹出口を設けるなど、さまざまな方法があります。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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